更新日: 2024.06.17 定年・退職

定年後「月収20万円」で再雇用の誘いを受けました。収入が現在の「半分」になってしまうのですが、「再就職」より良いでしょうか? 新しい仕事を探すのも億劫です…

定年後「月収20万円」で再雇用の誘いを受けました。収入が現在の「半分」になってしまうのですが、「再就職」より良いでしょうか? 新しい仕事を探すのも億劫です…
「定年後の生活費が心配だけど、再雇用の条件が厳しい」「新しい仕事を探すのは大変だし、収入が減るのも不安」。こんな悩みを抱えている人も少なくないように、定年を迎えた後の生活設計は誰にとっても大きな課題といえます。再雇用の条件が厳しい場合、収入が大幅に減少することが予想されますが、新しい仕事を探すのも億劫という人もいるでしょう。
 
この記事では、再雇用のメリット・デメリットや、給与が大きく減った際に受け取れる高年齢雇用継続給付金について詳しく解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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定年後再雇用のメリット

経済的な安定や社会への貢献などを求め、定年退職後も就業する人は増加の一途をたどっています。定年後、引き続き同じ会社で働く「再雇用」というキャリアを選択する人も少なくありませんが、そこにはメリット・デメリットが存在するようです。まずは定年後再雇用のメリットから見ていきましょう。
 

1. 年金支給までの無収入を避けられる

厚生労働省の「就労条件総合調査結果の概況」によると、定年制を設ける企業のうち「60歳」で定年を迎える企業の全体平均は7割を超えます。一方で年金の支給開始は原則65歳からです。再雇用制度を利用すれば、この5年間の無収入期間を埋めることができ、生活費への不安も軽減することができます。
 

2. 慣れた職場で働き続けられる

新しい職場に適応するのは大変ですが、再雇用であれば慣れた環境で働き続けることができます。仕事のストレスを軽減し、安心感を得ることができるでしょう。
 

3. 就職活動を避けられる

定年後に新しい仕事を探すのは、現役時代に比べて容易ではありません。再雇用制度を利用することで就職活動を避けるというメリットがあります。
 

4. 精神的な安定

仕事を続けることで社会との接点を保ち、孤立感を防ぐことができます。
 

定年後再雇用のデメリット

続いて、定年後再雇用のデメリットは以下の3点です。
 

1.賃金の低下

再雇用される際、賃金が低下することがあります。60歳時点の賃金は70%程度まで低下するケースが多く、現役時代と同水準のライフスタイルを続ければ、生活費を賄うのが難しくなる可能性があります。
 

2.年金の減額

厚生年金に加入しながら年金を受け取る場合、年金の一部または全部が減額される在職老齢年金制度があります。減額される金額は、年金額や給与などの額によって異なります。
 

3.雇用条件や仕事内容の変更

再雇用されても、定年前と同じ立場や業務で働けるとは限りません。部下が上司になったり、適性に合わない業務に配属されたりする可能性があります。
 

【再雇用制度とは?】高年齢雇用継続基本給付金を解説

再雇用制度は、企業が60歳以上の従業員を継続して雇用するための仕組みで、高年齢者雇用安定法によって定められています。再雇用は、定年後も就業を希望する多くの人にとって現実的な選択肢といえるでしょう。この制度の一環として、再雇用後の賃金が低下した場合に支給される「高年齢雇用継続給付金」があります。
 
高年齢雇用継続給付金は、60歳以上65歳未満の従業員に対して支給される給付金で、賃金が60歳時点の75%未満になった場合に支給されます。これには再雇用が対象の「高年齢雇用継続基本給付金」と、再就職の場合に支給される「高年齢再就職給付金」の2種類があります。ここでは高年齢雇用継続基本給付金について紹介し、高年齢再就職給付金については後述します。

高年齢雇用継続基本給付金の受給条件

1.60歳以上65歳未満であること
2.雇用保険の一般被保険者であること
3.雇用保険の被保険者期間が5年以上であること
4.60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満であること
5.育児休業給付や介護休業給付の支給対象となっていないこと

この給付金は、定年後に継続して同じ企業で働き続ける従業員に対して支給され、賃金の低下を補填するためのものです。なお、高年齢雇用継続基本給付金は在職老齢年金との併給調整も行われ、年金の一部または全部が支給停止になる可能性があります。
 

【いくらもらえる?】高年齢雇用継続給付金の受給額を紹介

高年齢雇用継続給付金の受給額は、60歳到達時の賃金と現在の賃金によって異なります。受給額を計算する際には、支給対象月の賃金額と60歳到達前の6ヶ月間の平均賃金額を比較します。
 
支給対象月の賃金額が60歳到達前の6ヶ月間の平均賃金額と比較して、75%以上だと支給されず、61.0%以下の場合、支給対象月の賃金額(現在の賃金額)の15%が支給されます。また、61%超75%未満の場合は図表1のように支給されます。
 
図表1

支給対象月の賃金額 /
到達前の6ヶ月間の平均賃金額
支給率 支給額の例(支給対象月の賃金額 が20万円の場合)
75%以上 0.00% 0円
74.5% 0.44% 880円
74.0% 0.88% 1760円
73.5% 1.33% 2660円
73.0% 1.79% 3580円
72.5% 2.25% 4500円
72.0% 2.72% 5440円
71.5% 3.20% 6400円
71.0% 3.68% 7360円
70.5% 4.17% 8340円
70.0% 4.67% 9340円
69.5% 5.17% 1万340円
69.0% 5.68% 1万1360円
68.5% 6.20% 1万2400円
68.0% 6.73% 1万3460円
67.5% 7.26% 1万4520円
67.0% 7.80% 1万5600円
66.5% 8.35% 1万6700円
66.0% 8.91% 1万7820円
65.5% 9.48% 1万8960円
65.0% 10.05% 2万100円
64.5% 10.64% 2万1280円
64.0% 11.23% 2万2460円
63.5% 11.84% 2万3680円
63.0% 12.45% 2万4900円
62.5% 13.07% 2万6140円
62.0% 13.70% 2万7400円
61.5% 14.35% 2万8700円
61.0%以下 15.00% 3万円

厚生労働省 高年齢雇用継続給付支給率・支給額早見表をもとに作成
 
高年齢雇用継続給付金の支給は、毎年8月1日に改定されるため、最新の情報を確認することが重要です。
 
高年齢雇用継続給付金を受給することで、賃金の低下を補うことができます。しかし、年金の減額などデメリットもありますので、総合的に判断することが大切です。
 

【よく似た制度だけど違います!】高年齢再就職給付金を紹介

前述したように、高年齢雇用継続給付金には再雇用が対象の高年齢雇用継続基本給付金のほか、「高年齢再就職給付金」があります。高年齢再就職給付金は、60歳以上で失業し、再就職した際に賃金が退職前の75%未満に低下した場合に支給されます。受給条件と支給期間は次の通りです。

高年齢再就職給付金の受給条件

1.60歳以上65歳未満であること
2.再就職前に基本手当(失業保険)を受給していたこと
3.再就職後の賃金が退職前の75%未満に低下していること
4.再就職先で1年以上継続して雇用されることが確実であること
5.再就職手当を受給していないこと

この給付金は、一度失業し、再就職した場合に支給されます。

支給期間

●基本手当の支給残日数が100日以上200日未満:1年間
●基本手当の支給残日数が200日以上:2年間

この給付金は、高齢者の再就職を支援し、安定した雇用を促進するためのものです。
 

【2025年4月から縮小?】高年齢雇用継続給付金の変更点を解説

2025年4月から、高年齢雇用継続給付金の給付率が縮小される予定です。給付率が15%から10%に引き下げられます。また、30年度以降には給付金が廃止される予定です。
 
高齢者雇用安定法の改正により、企業は70歳までの就業確保措置を講じる努力義務が課されました。これにより、高齢者の働く場と賃金の確保が進むと考えられています。しかし、給付金の縮小・廃止により、労働者の生活には影響が出る可能性があります。
 

まとめ

定年後の再雇用には多くのメリットがありますが、賃金の低下や年金の減額といったデメリットも存在します。高年齢雇用継続給付金なども考慮した上で、働き方を慎重に検討することが重要です。老後生活が安心で充実したものになるよう、しっかりと準備を進めましょう。
 

出典

厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
厚生労働省 雇用継続給付について
厚生労働省 高年齢雇用継続給付支給率・支給額早見表
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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