更新日: 2024.06.24 定年・退職
定年後も「月収15万円」ほどで働く予定ですが、パートでは厳しいですか? 65歳以上の「収入」や「働き方」について解説
本記事では、主に60代後半以降の働き方や賃金について、さまざまな統計を紹介します。参考にしてみてください。
執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)
特定社会保険労務士・FP1級技能士
何歳まで働きたい?
「何歳まで働きたいか」「なぜその年齢まで働きたいか」について、統計を見ていきましょう。
何歳まで働きたい?
内閣府が2023年に18歳以上の5000人(うち有効回答者2833人)に対して行った「生活設計と年金に関する世論調査」によると、「何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいか(したか)」という質問に対して最も多かった答えは「61~65歳」が28.5%、次いで「66~70歳」が21.5%、「51~60歳」が14.8%、「71~75歳」が11.4%という結果でした。
年齢別にみると「66~70歳」まで働きたいと答えた人は、50代では19.1%だったのに対し、60代になると34.1%に増えています。
50代のうちは66歳以降のことは遠い未来に感じても、60代になり「まだまだ働ける」と分かると、就労を望む人が増えるのかもしれません。
働きたい理由は
同じ調査で「61歳以降も仕事をしたい(仕事をした)」と答えた人に、その理由をたずねたところ、次のような結果になりました。
●生活の糧を得るため 75.2%
●いきがい、社会参加のため 36.9%
●健康にいいから 28.7%
●時間に余裕があるから 14.6%
●定年退職の年齢だから 10.6%
●職場に頼まれたから 8.8%
「生活の糧を得るため」が75.2%と圧倒的に多く「いきがい、社会参加のため」の倍以上の割合となっています。
企業の受け入れ体制は?
働く側が「66歳以降も働きたい」と思っても、企業側は高年齢になった従業員を受け入れられるのでしょうか?
65歳までは義務、70歳までは努力義務
高年齢者雇用確保措置により、企業は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれかの方法で、原則として希望者全員を65歳まで雇用しなければなりません。そして2023年の時点で99.9%の企業に、こうした雇用体制があります。
また2021年からは「70歳までの就業機会を確保する」との努力義務もできました。企業は、定年年齢の引上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止、業務委託契約制度の導入、ボランティアや創業支援制度の導入など、希望者が70歳まで働けるような措置を講じるよう努めなければなりません。
しかし、この措置は義務ではなく努力義務です。そして66歳以上まで働ける制度がある企業は、2023年時点で43.3%にとどまっています。
【60代後半】実際はどう働いている?
実際、65歳以上の人は、どのように働き、いくらくらい収入を得ているのでしょうか。
増えている65歳以上の就労
図表1は、総務省の「労働力調査」を基にした内閣府の令和5年版高齢社会白書の年齢階級別就業率の推移のグラフです。
図表1
内閣府 令和5年版高齢社会白書
65~69歳で働いている人の割合は、2022年では50.8%で、10年前の2012年(37.1%)より13.7%も増えています。さらに70~74歳の就業率も、2022年は33.5%で、2012年より10.5%の増加が見られます。
65歳以降の働き方は?
現在、多くの人が65歳以降も働いていることが分かりましたが、どのような雇用形態で働いているのでしょうか。図表2は、2022年時点の年齢別の正規雇用・非正規雇用の人数と割合です。
図表2
内閣府 令和5年版高齢社会白書
図表2のとおり、65~69歳では男性の約68%、女性の約84%が、非正規雇用(パート、アルバイト、契約社員、派遣社員、嘱託等)で働いています。70~74歳で見ると、男性の約75%、女性の約84%が非正規雇用です。
65歳以降の収入は?
最後に、65~69歳の収入の状況を見てみましょう。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、65~69歳の正社員の月収は31万2700円、正社員以外の月収は23万1700円(ともに男女計)です。
正社員以外の月収が23万1700円であれば、本記事タイトルの「65歳以降も15万円くらいの賃金を得たい」という希望は、非正規社員として働いても、達成できる可能性は高いと思われます。
まとめ
60代後半になっても働きたいと思う人は多く、61~65歳の28.5%、66~70歳の21.5%を占めています。また、60代後半の働き方はパート・アルバイト・契約社員・嘱託等の非正規雇用が多く、その場合の平均月収は23万円程です。
今後、65歳を過ぎても働ける企業は増加すると予想されますが、全ての企業で可能というわけではありません。高年齢期においても長く働き続けたい場合は、65歳以降も就業できる企業を早めにみつけておいた方がよいかもしれません。
出典
内閣府 「生活設計と年金に関する世論調査」の概要
厚生労働省 令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します
内閣府 令和5年版高齢社会白書(全体版)第1章 高齢化の状況(第2節 1)
厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査の概況
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士