更新日: 2024.06.28 その他老後

母親は「月8万円」程度しか年金をもらえないようです。仕送りはできませんが、自分の扶養に入れてあげることで助けになりますか?

母親は「月8万円」程度しか年金をもらえないようです。仕送りはできませんが、自分の扶養に入れてあげることで助けになりますか?
遠く離れた故郷で暮らす親の心配をしている人は、多くいます。親の健康状態だけではなく、少ない年金で暮らしている経済事情を不安に思うこともあるでしょう。今回は、「余裕がなくて親へ仕送りなどはできないが、何とか生活を楽にできないか」という相談を記事にしてみました。
吉野裕一

執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)

夢実現プランナー

2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている

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遠く離れた母親を何とかしたい

今回取り上げる相談者のAさんは、大学卒業してから故郷を離れて就職し、結婚をしていました。現在は、自分の子どもも大学生となり、教育ローンを借りながら、生活を送っています。
 
また、3年前に父親を亡くし、故郷では68歳の母親が1人で年金生活を送っています。母親の年金受給額は月に8万円程度で、相談者もたまに連絡をしたり帰省したりしたときに「生活が苦しい」と愚痴を聞くことが増えてきていました。
 
Aさん自身も「仕送りができれば」と思っていましたが、今の生活を維持するのがやっとでした。というのも、Aさんは住宅ローンに加え、離れて暮らす子どもへの仕送りもしなければならず、負担が大きくなっていたのです。
 
Aさんの家族構成は、妻と大学生と高校生2人からなる5人家族です。まだ住宅ローンが12年残っているのに加え、長子が家から離れた大学に入学したことで、自宅以外の家賃や生活費の負担も強いられ、Aさんは精神的にも弱っている感じでした。それで、「何か策はないか」と筆者に連絡してきたのです。
 

会社員の主婦だった人は年金が少ないケースも

ここで、厚生労働省が公表している「令和4年度 厚生年金・国民年金事業の概況」を見てみましょう。令和4年度の国民年金受給者のうち、遺族年金を受給している場合の平均年金月額は、8万4352円と、相談者の母親が受け取っている額に近くなっています。
 
また、現在の国民年金の受給者は、全員が加入していたというわけではありません。一定の年齢以上の女性で、専業主婦をしていた方の場合は、希望すれば入れる「任意加入」の期間があったケースもあります。
 
昭和36年まで、会社員の妻など一定の被扶養配偶者は、任意で国民年金に加入できたからです。その後、昭和61年に現在の「第3号被保険者」という制度ができ、男女問わず、国民年金に加入することが決まりました。
 
Aさんの母親は、この任意加入できるときに、任意加入していなかったことで、自分の老齢基礎年金と遺族厚生年金で、合わせて8万円程度となっていました。
 
また、Aさんの母親には、現在年金以外の収入はありません。彼女自身はまだ68歳であり、仮に居住地が都会であれば働き先も見つかったかもしれません。しかしAさんによれば、「のどかな田園が広がる田舎で、運転免許証を持っていない母親が働きに出るのは大変」ということでした。
 

扶養に入れるためには仕送りも必要

今回の相談で、Aさんは「母親を扶養に入れたい」と望んでいました。しかし別居の親を扶養に入れるためには、「生計を一にする」という要件があります。この要件を満たすには、仕送りをして生活を支えていることが必要になります。ただ単に扶養に入れるというわけにはいきません。
 
しかし扶養に入れることで、母親は健康保険料の負担がなくなり、年金からの手取りも多少増えることになります。さらにAさんも所得税や住民税の扶養控除が増え、手取りが増えることになります。
 
今回はそれらのメリットを踏まえ、Aさんへは定期的に母親に仕送りをするよう伝えました。
 

余談;自分たちの生活も見直す

今回の相談では、もうひとつ考えておきたいことがありました。それは生活費を見直し、仕送りの費用を捻出することです。Aさんは生活費を切り詰めようと思っていても、何に手を付けていいか分からずに、悩んだまま昔のままの生活を送っていたからです。
 
まず、現在の生活に少しは余裕が出てくるのではないかと考え、住宅ローンの見直しを提案しました。借り入れた時期によっては、現在の住宅ローン金利のほうが安くなっている可能性もあったからです。仮に手数料を含めた月々の返済が少なくなれば、母親への仕送りに回すことができます。
 
また、Aさんは家族で大手キャリアの携帯電話を契約しており、家族割りなどの割引が多いこと、乗り換えの手間も面倒だったこともあり、プランを見直さないまま継続していました。その点についても、見直しの余地があるのではないかと考え、アドバイスを行いました。
 
例えば、子どもたちは動画などを見るので通信料が多くなる傾向にありましたが、Aさんご夫婦は毎月通信量が余っていました。プランの見直しのシミュレーションを行うことや、キャリアを思い切って変更して格安スマホにすることで、毎月の携帯電話料金を大きく削減できる可能性があると伝えました。
 

まとめ

Aさんは単に、「扶養に入れてしまえば、年金しか収入のない親の負担も減るのではないか」と思われていましたが、扶養には「生計を一にする」という要件があり、仕送りなどをする必要があります。まずは必要に応じて自分たちの生活も見直しながら、親へ仕送りして扶養に入れることがよいでしょう。
 
人生100年時代と言われるようになってきていますが、現役時代の生活水準を、老後に入ってから急に落とすことは難しい場合が多いです。ライフプランを立てたうえで、家計の健全性を築いていくことも大切です。
 

出典

厚生労働省 令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
 
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー

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