更新日: 2024.09.09 その他老後
昔のパート仲間が、老後は毎月「夫婦で旅行」に行っているそうです。パート時代は同じような暮らしだったと思うのですが、なぜ老後の暮らしに“差”が出たのでしょうか…?
老齢基礎年金の受給額は20歳から60歳までの納付月数により計算され、満額受け取れる場合の受給額は2024年度は81万6000円(月額6万8000円)です。そのため、かつて同じように扶養内でパートをしていた人が毎月旅行に行っていると聞くと、なぜそんなに差があるのか気になってしまうかもしれません。
老齢基礎年金は、厚生年金と異なり収入に応じて受給額が増えることはありません。しかし、第3号被保険者でも年金の受給額を増やす方法がいくつかあります。本記事では、どのような方法があるのか紹介します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
パート勤務で第3号被保険者の主婦(夫)ができる基本的な対策
ここでは、年金の受給額が満額だった場合にさらに受給額を増やす方法と、未納期間がありそのままでは満額受給できない場合に年金額を満額に近づけるための方法をお伝えします。
年金受給開始年齢を繰り下げる
老齢基礎年金は65歳から受給できますが、受給開始を遅らせることで受給額を増やすことができます。増額率は1ヶ月あたり0.7%、繰下げ期間は最大10年(75歳まで)で、75歳から受け取る場合は84.0%の増額が適用されます。この方法は、満額受給ができる場合、できない場合、どちらでも活用できます。
iDeCoに加入する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金である基礎年金や厚生年金とは違い、個人が自ら加入する私的年金です。第3号被保険者は月額2万3000円(年間27万6000円)まで拠出でき、運用益は非課税となります。掛金は65歳になるまで積み立てられます。さらに、受け取るときも控除の対象となるため、老後資金の準備に役立ちます。
ただし、運用にはリスクがあること、原則60歳までは引き出しができないことに注意が必要です。
過去10年以内に未納期間がある場合は保険料を追納する
第3号被保険者は自身で国民年金の保険料を支払う必要はありませんが、第3号被保険者になる前に学生納付特例や年金保険料の免除・納付猶予を受けたことがある場合は、その期間の保険料を追納できる場合があります。
前記のように、国民年金は保険料の納付月数で計算されるため、追納することで受給額を満額に近づけることができます。ただし追納可能な期間は過去10年以内となるため、できるだけ早めに追納しましょう。
追納期間が過ぎている場合は、60歳以降の任意加入を検討する
保険料の追納期間が過ぎてしまった場合には、任意加入の制度を検討してみましょう。任意加入は、20歳から60歳までの納付月数が480ヶ月(40年)に満たない人が、60歳以降に自主的に国民年金に加入して保険料を払うことができる制度です。これにより年金の受給額を増やし、満額に近づけることができます。
夫婦の年金受給額は配偶者の収入に左右される
ここまで扶養内でパート勤務をする主婦の年金受給額について見てきましたが、夫婦2人で受け取る年金額は夫の収入によって変わります。仮に、夫が大企業の部長であった場合と、中小企業の部長だった場合の年金受給額について比較してみましょう。
まず、会社員の年金受給額は基礎年金と厚生年金です。基礎年金の受給額は前記のとおり納付月数で計算されるため、ここではどちらも満額の6万8000円(月額)を受け取れるとします。
一方、厚生年金は収入により受給額が変わります。厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、大企業の部長職では賞与を含んだ平均年収は約1300万円。中企業の場合は約1030万円、小企業では約822万円となっています。
年収での厚生年金の受給額について、三井住友銀行の年金試算シミュレーションで試算したところ、平均年収が1300万円の場合で約14万5000円となりました。上記から、大企業の部長職の夫と扶養内で働く主婦が夫婦で受け取れる年金額は、下記のようになります。
夫・厚生年金14万5000円+夫・基礎年金6万8000円+妻・基礎年金6万8000円=28万1000円
一方で、総務省統計局の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の消費支出は約25万円です。ただし、この金額は住居費が2万円程度(持ち家も含むため)となっているため、賃貸物件に住んでいるなど住まいの状況によってはさらに費用がかかるでしょう。
また、官公庁の旅行・観光消費動向調査 によると、2024年4-6月期(速報)の日本人国内旅行における旅行費用は日帰りで1人約1万9000円、宿泊の場合は1人約6万8000円となっています。
年金から所得税や住民税、社会保険料などが引かれることも考慮すると、夫婦の年金が28万円以上あったとしても、年金だけでやりくりするにはゆとりがあるとは言いにくいでしょう。
老後資金には年金のほか、これまでの貯蓄や退職金を加えるのが一般的
年金受給額が多い人は、現役時代の収入が多いため、退職金や預貯金などの資産も多い可能性が高いでしょう。老後、夫婦2人で毎月旅行ができる世帯は、退職金や預貯金などの資産からまかなっているのかもしれませんね。
まとめ
夫婦2人の年金額が多い家庭であっても、年金だけで毎月旅行に行くのはなかなか難しいようです。ただ、定年を迎える前や、年金の受給開始前であれば、将来受け取る年金額を満額に近づけたり、増やしたりすることは可能です。
現役世代の人は、ここで紹介した方法や、年金以外の貯蓄を増やすなどして、少しでもゆとりある老後を送れるように準備できるといいですね。
出典
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査
官公庁 旅行・観光消費動向調査 2024年4-6月期(速報)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー