更新日: 2024.09.22 介護
80歳の母がひとり暮らしで「要介護」なので、話し相手を「ヘルパー」にお願いしたかったのですが、介護保険では難しいようです。保険外のサービスを契約したほうが良いでしょうか?
介護保険法により提供できるサービスの範囲や利用限度額が決められています。介護保険で対応できないサービスを利用したい場合の解決法を解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
介護保険の訪問介護
介護保険の訪問介護サービスでは、ケアプランに基づいて、訪問介護職員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、食事や着替えなどの身体介護や、調理、洗濯などの生活援助を利用できます。
また、通院などのための乗車または降車の介助(通院等乗降介助)も利用できます。ただし、同居家族が家事をできる状態であれば、洗濯や食事の準備などの生活援助は利用することができません。
訪問介護サービスの目的は、要介護状態になった方の残存能力に応じて、自立した日常生活を営むことができるように必要なサービスを提供することです。したがって、本人ができることの援助は受けることができません。
訪問介護サービスの対象外のサービス
訪問介護サービスは、ケアプランに基づいて提供しますので、ケアプランに記載のないサービスの利用は自費になります。また、ヘルパーは介護の専門職ですので、医療にあたる行為はできません。医療行為を行えるのは、原則として医師や看護師などの医療従事者です。
さらに、「直接利用者本人の援助に該当しないサービス」「日常生活の範囲を超えるサービス」「生きがいに関するサービス」なども対象になりません。
具体的には、家族のための調理や洗濯などの家事、留守番や話し相手、来客へのお茶出し、庭の草木の手入れや大掃除、車の洗車、ペットの世話、コリや痛みを緩和するマッサージ、カラオケなどの趣味への同行、理美容院への同行、墓参りや法事などへの同行、習い事・ドライブ・冠婚葬祭へ行くための乗降介助、院内での介助などは訪問介護サービスの対象外です。
訪問介護の対象外のサービスを利用したい場合
介護保険の範囲内でできないことは、介護保険外サービスとして利用できます。市区町村、介護保険事業者、シルバー人材センター、社会福祉協議会、NPO法人、ボランティア団体、民間企業などが提供しています。いくつか見てみましょう。
■市区町村独自の高齢者向け福祉サービスを利用する
一定の要介護状態にある高齢者に対し、介護保険で賄えないサービスの量や種類を充実させる独自の高齢者向け福祉サービスを提供する市区町村があります。
サービスの種類や対象者、費用は市区町村により異なります。寝具乾燥サービス、移送サービス、配食サービス、訪問理髪サービス、食事サービス、家事援助サービス、ゴミ出しサービスなどを民間よりも安価で提供してくれます。
■混合介護を利用する
介護保険制度では、高齢者が抱える多様なニーズに柔軟に対応できるよう、一定の条件の下で、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供することを認めています(混合介護・選択的介護)。
たとえば、「訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に、草むしり、ペットの世話のサービスを提供すること」「訪問介護として外出支援をした後、引き続き、利用者が趣味や娯楽のために立ち寄る場所に同行すること」「訪問介護の通院等乗降介助として受診等の手続きを提供した後に、引き続き、介護報酬の算定対象とならない院内介助を提供すること」といった組み合わせが可能です。
たとえば、東京都豊島区の選択的介護実施事業者(訪問介護事業者)のうち、ニチイケアセンター豊島は、【生活支援】(話し相手、家族不在時の見守りなど)を1782円/30分、【外出支援】(通院介助・外出付き添いなど)を1782円/30分で提供しています。
■シルバー人材センターを利用する
シルバー人材センターとは、高齢者が働くことを通じて生きがいを得るとともに、地域社会の活性化に貢献する組織です。働きたい地元の高齢者に、それにふさわしい仕事をシルバー人材センターでつなぐ活動をしています。原則、各市町村にあり、家事全般の支援をしています。サービス内容はセンターにより異なります。
たとえば、公益社団法人柏市シルバーセンターの料金表を見ると、パソコン訪問支援は1時間以内1300円、家事援助サービス1300円~/1時間などとなっています。
■民間のシニア向け家事代行サービスを利用する
企業が家事代行サービスを提供しています。近年はシニアに限定したサービスも登場しています。
たとえば、ダスキンのシニアケアサービスは、原則として65歳以上の方を対象にしたサービスです。掃除、買い物、食事作りなど家事全般、長時間の見守り、散歩や病院への付き添い、食事や歩行の介助、話し相手などサービスの内容は幅広いです。
24時間365日対応、1回2時間以上から利用できます。東京・神奈川の場合、基本料金は1回2時間 9900円(税別 9000円)より、となっています。
まとめ
介護保険では利用できるサービスの種類や限度額が決まっています。介護保険の範囲内でできないことは、介護保険外サービスの利用を検討しましょう。費用負担は増えますが、家族の負担を減らしたり、本人が趣味・嗜好を楽しんだり、生活を充実させることが可能となります。
出典
厚生労働省 介護保険制度の概要
東京都福祉局 介護保険制度パンフレット
練馬区 すぐわかる介護保険
東京都福祉局 選択的介護モデル事業
公益社団法人柏市シルバー人材センター
株式会社ダスキン ダスキンの、シニアケアサービス
厚生労働省・経済産業省・農林水産省 地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。