更新日: 2024.10.21 セカンドライフ

老後は毎月3万円の赤字に? 貯金500万円あれば働かなくても暮らせる?

老後は毎月3万円の赤字に? 貯金500万円あれば働かなくても暮らせる?
厚生労働省の資料によると、全世代で平均年収が最も高いのは50代です。しかし60代になると、役職定年や定年退職をする年齢ということもあり、年収が減る人が多いです。役職を下り、収入が減り、気持ちが落ち込む・愕然とする、働く意欲がなくなる、という人も少なくありません。
 
Aさんもその1人。役職定年後、すっかり働く意欲がなくなり、贅沢しなければ退職金と年金で暮らしていくことは可能か、考えたいとのこと。Aさんは中堅企業勤めで役職定年前の年収は800万円、妻は専業主婦、貯金は500万円ほど、退職金は1000万円もらえるだろうとのことです。
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

無職世帯の夫婦の可処分所得21万3042円VS消費支出25万959円

生命保険文化センターによると、2人とも65歳以上の無職世帯の1ヶ月の可処分所得は21万3042円(主に公的年金)、これに対して、消費支出は25 万959円、差し引き1ヶ月約3万1000円が不足するという統計が報告されています。
 
この不足分を貯蓄で補うことになりますから、Aさんの場合は500ヶ月、40年余りとなって、計算上は暮らしていけることになります。
 

計算上はあくまでシミュレーション、不測の事態も考慮にいれるとやや不安

この計算はあくまで、過去の事例から割り出した平均的なケースを基にしています。将来を約束するものではありません。
 
将来どのような状況になるのかはわかりませんが、例えば足腰が不自由になって、保険では賄えないサービスを利用しなければならなくなる、自宅を大胆にバリアフリー型にリフォームしなければならなくなる、物価上昇が今よりもっと加速するなど、不確定要素は枚挙にいとまがありません。
 
それらをすべて想定するのは行きすぎであったとしても、不測の事態を考慮にいれるとやや心もとない印象があります。
 

数字的な目標を上げても、働くモチベーションがなければ意味はなし

では、「あともう少し働いたほうがいいから、勤務を続けてほしい」という結論に達したとしても、働くモチベーションがないままで就労するのは、精神的にも肉体的にも大きな負担を背負うだけになります。
 
そもそも「仕事をする」というのは、収入を得るという目的もありますが、それ以上に「自分の存在価値を確認する」「社会での役割を意識する」ことを通じた自己実現の営みであるということを認識することが重要でしょう。
 
それを考えると、役職定年を「Aさんの企業での役割が評価されない」と解釈していると考えられるため、Aさん自身が「働くことの意義」を見つめなおす時間が大切でしょう。この時、Aさん自身これまでの履歴だけで振り返ってしまうと、過去の上り調子だった実績との比較に陥ってしまう恐れがあり、今後の前向きなライフプランを描くのは難しくなるかもしれません。
 

同世代の人との意見交換の場に参加する

同世代、同じ役職定年を経験した立場の人と率直に意見交換してはどうでしょう。ジェンダー差別について語るつもりはありませんが、男性はおおむね学校卒業後定年まで社会人として生活を送っているためか、「社会的ステータス」というよろいを取り払うことが難しい人が多いように見受けられます。
 
現状を認めることは難しいでしょうが、「企業人としてのAさん」ではない「Aさん」と向き合い、現在のありのままのAさんの自己開示によって、Aさんらしい今後の生活スタイルが見えてくるかもしれません。
 

最も自分らしい自分に合う社会参加のあり方

その結果、最もAさんらしい社会参加のあり方が「就労の継続」であり、心身に負担がない程度で働くことをAさん自身が選択することになれば、それが家計にとってもAさんにとってもベストな答えとなるでしょう。
 
家計運営、家計との向き合いは定年などなく、生きている限り続きます。主体的、自発的に長く続けられるライフプランを見つけることが大切です。
 

出典

厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 Ⅱ 各世帯の所得の状況
公益財団法人 生命保険文化センター リスクに備えるための生活設計 老後の生活費はどれくらい?
 
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集