高齢の母の銀行口座が「認知症」を理由に凍結されました。「後見人」を立てればすぐに解除してもらえるでしょうか?
配信日: 2024.12.23
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
認知症により口座が凍結された場合の対応方法
親が入院したり、施設にいたりしたとしても親に認知判断能力があり、親の同意があれば、金融機関と相談して親の口座の代理カードや親による委任状を作成することで、親の口座からお金を引き出すことができます。
しかしながら、親の認知判断能力がなくなってしまった場合には、親の口座が凍結されることがあります。その場合、基本的に親の口座から本人がお金を引き出すことができなくなるため、下記の対応を検討する必要があります。
(1)成年後見制度を使う
認知症、知的障害、精神障害などの理由で、財産管理や身上保護などの法律行為をひとりで行うことが困難な場合に、このような方々を法的に保護して、支援する制度を成年後見制度といいます。その制度を使えば、本人の口座からお金の出し入れやいろいろな契約や手続きをすることが可能になります。詳しくは、次の章で見ていきます。
(2)日常生活自立支援事業を利用する
日常生活自立支援事業とは、「認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うもの」とされています(出典:厚生労働省「日常生活自立支援事業」)。
したがって、もし認知症になったとしても、日常生活自立支援事業を利用することで、預金の払い戻しや預金の解約などの日常的金銭管理のサポートを受けることが可能です。
日常生活自立支援事業を利用する際には、都道府県・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施)に申請(相談)をすることで利用が可能です。また、実施主体が定める利用料を利用者が負担する必要があります。ただし、契約締結前の初期相談等にかかる経費や生活保護受給世帯の利用料は無料となっています。
「後見人」を立てる
前の章で説明しましたが、成年後見制度を利用すれば、成年後見人に選ばれた方を通して、認知症になった方の口座からお金を引き出すことができます。
ただし、成年後見人は、親族だけでなく、福祉や法律の専門家や専門的な研修を受けた地域の人などの中から、家庭裁判所が本人にとって最も適任だと思われる方を選任しますので、必ずしも子どもの希望どおりにはいきません。
また、お金を引き出すにも、成年後見人と相談する必要がありますので、勝手に引き出すことはできません。たとえ、成年後見人と折り合いが悪かったとしても、一部の事象を除いて成年後見制度は途中でやめられないので、留意をする必要があります。
加えて、申し立てにかかる費用以外にも、後見人に報酬を支払うことになりますので、こういった費用面も含めて検討をする必要があります。
成年後見制度を利用する際は、お住まいの市町村の相談窓口、地域包括センター、社会福祉協議会、成年後見センターなどに相談をするとよいでしょう。
まとめ
親が認知症になって、口座が凍結されたら、成年後見制度や日常生活自立支援事業を利用すれば、お金を引き出すことが可能になります。
ただし、成年後見人を立てた場合に、お金の引き出しは、成年後見人と相談する必要があり、金額などは相談の結果によります。また、制度の申し立てや成年後見人への報酬などの費用がかかります。利用にあたっては、お住まいの市町村の相談窓口などに相談しましょう。
出典
全国銀行協会 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)
厚生労働省 日常生活自立支援事業
厚生労働省 成年後見制度とは
厚生労働省 自分ひとりではよくわからない!?そんな時でも安心してくらせるために。成年後見制度
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー