実家に帰省した際、60代の両親の貯金額が「300万円」だと聞いて驚きました。このままのペースで老後の生活は本当に大丈夫なのでしょうか?
配信日: 2025.01.22
本記事では、老後に必要な費用の目安を示しつつ、貯金が少なくても安心できる老後を実現するための具体的な方法をご紹介します。さらに、家族としてどのように支援できるかについても考えていきます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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老後に必要な貯金額の目安はどれくらい?
2019年に金融庁の金融審議会が「市場ワーキング・グループ報告書」がきっかけとなった、「老後2000万円問題」が話題になりました。
これは夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職世帯で、収入と支出の差で毎月の不足額が5万円発生する場合は、老後生活が20~30年で1300~2000万円の取り崩しが必要になるとしたものです。
ただし、この数字はあくまでもモデルケースであり、夫婦か独身か、住んでいる地域、持ち家か賃貸かなど、個々の状況によって大きく異なります。
例えば、総務省の「家計調査年報(家計収支編) 2023年(令和5年)」によると、65歳以上の高齢夫婦の平均支出月額は約25万円です。これに対して、年金などの社会保障給付月額をはじめとする可処分所得の平均は夫婦合わせて約21万3000円で、毎月約3万7000円の赤字になる計算です。
この赤字を貯金で補うと考えると、65~90歳までの25年間で約1110万円が必要になります。これに加えて医療費や介護費用、予期せぬ支出などを考慮すると、さらに貯金が必要になる可能性があります。
ご両親の貯金300万円は、この目安に対してかなり少なく感じるでしょう。したがって、生活費の見直しや社会保障制度の活用、可能であれば追加の収入源の検討など、など総合的な対策が必要といえます。
貯金が少なくてもできる老後の生活設計
貯金が少ない場合でも、制度や生活の工夫を活用することで、より安心した老後を送ることは可能です。まずは現状を冷静に把握し、小さな改善から始めてみましょう。主な例として、以下のような工夫や制度を紹介します。
1. 公的支援制度を活用する
介護が必要な場合は介護保険サービスを活用すれば、負担を大幅に減らすことができます。また、高額療養費制度を利用すれば、医療費の自己負担額が一定額に抑えられます。
2. 生活費を見直す
家計簿をつけて無駄な支出を把握し、生活費を減らす工夫をします。特に、食費や光熱費などの固定費は見直しの効果が高い部分です。例えば、携帯電話のプランを見直したり、食材を無駄にしないよう計画的に買い物をしたりすることで、支出を抑えることができます。
3. 働けるうちは収入を増やす
高齢化が進む現代では、60~70代でも健康状態が許すかぎり働き続けたいという人は多く、シニア採用に積極的な企業も増えています。
これまで勤めてきた会社で再雇用されるか、ハローワークや求人サイトなどで探して再就職すれば、年金以外の収入源を確保できます。現役時代より収入は下がる可能性が高いですが、体調面やライフワークを考慮して週2~3日、短時間という働き方もよいでしょう。
これらを組み合わせることで、限られた貯金でも老後を安心して過ごせる可能性が高まります。個々の状況に応じて、検討しましょう。
また、生活費を抑えるには、健康管理も重要な要素の一つです。適度な運動や健康的な食生活を心掛けることで、医療費や介護費の支出を抑えることができます。定期的にご両親に連絡をして、健康状態を確認するとよいでしょう。
家族ができるサポートや一緒に考えるべきこと
ご両親の老後生活について不安がある場合、家族が話し合いの場を持つことが大切です。現状を共有し、一緒に生活設計を考えることで、不安を軽減し、現実的なサポート方法を見つけることができます。
両親の貯金が少ないと聞いて不安になった場合、家族としてできる支援や話し合いは次のような内容を含むとよいでしょう。
1. 現状を正確に把握する
ご両親の収支や生活費の内訳を確認し、家計の見直しを一緒に進めます。家族が関与することで、客観的な視点で改善案を考えられます。
特に高齢者は保険やインターネット、携帯電話の料金システムにうとく、過度な支払いをしている可能性があるため、固定費のカットを中心に無駄な支出がなくなるよう協力しましょう。
2. 子どもが支援できる範囲を検討する
例えば、特定の支出(携帯料金や一部の医療費)を肩代わりする、時々食材を送るといった方法があります。ただし、自分たちの生活を圧迫しない範囲で支援することが大切です。また、親を子の扶養に入れることで、親の健康保険料の負担を軽減できる可能性もあります。
3. 将来を見据えた話し合いをする
老後の住まいや介護について、事前に話し合っておくことが重要です。例えば、持ち家の売却や賃貸の住み替え、施設入居の選択肢について具体的に話すと、将来の安心感が得られます。また、生活福祉資金貸付制度などの公的支援制度の利用も検討するとよいでしょう。
貯金が少なくても安心できる老後を実現するために
貯金が少ない場合でも、制度や工夫を活用すれば、安心して老後を過ごすことは十分に可能です。ご両親が公的支援を活用し、生活費を見直すことで、自立した生活を送れるよう支援しましょう。また、家族全員で将来を考えることで、不安を減らしつつ現実的な対策を立てられます。
老後生活の不安は、早めの話し合いと行動で大きく軽減できます。家族が協力してプランを立てることで、ご両親が安心して過ごせる老後を実現していきましょう。
出典
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)家計の概要
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 生活にお困りで一時的に資金が必要な方へ「生活福祉資金貸付制度」があります。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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