「老後資金は2000万円必要」と言いますが、定年退職時にそれだけの貯金がある人はどのくらいいるのでしょうか?
配信日: 2025.03.08


執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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定年退職時の貯蓄額の実態
総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2023年(令和5年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」によると、世帯主が定年を迎えた65歳以上の貯蓄残高の平均は2462万円です。このうち、貯蓄額が2500万円以上の世帯は全体の34.1%を占めています。
一方、300万円未満の世帯も15.1%を占めており、貯蓄保有額全体の中央値は1604万円です。中央値とは、データを小さい順に並べた際に真ん中にくる値で、極端な数値に影響を受けにくい指標です。つまり、貯蓄額が1600万円前後の世帯が多いことになります。
しかし、ここで注意すべき点は、これらの数字はあくまで「貯蓄額」であり、老後資金全体を示しているわけではありません。
老後資金に含まれるもの
老後資金には、貯蓄だけでなく以下のような要素が含まれます。まず、国民年金や厚生年金など公的年金は、老後の主要な収入源です。受給額は加入期間や収入によって異なります。
次に、企業によっては退職金制度があるため、定年退職時にまとまった金額を受け取ることが可能です。一例として、東京都産業労働局が公表している「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」による退職金の平均支給額は、高校卒が994万円、高専・短大卒が983万2000 円、大学卒が1091万8000円でした。
老後資金の準備として、民間の保険会社が提供する個人年金保険への加入や、株式投資、投資信託など、さまざまな金融商品への投資を選択している人もいます。
つまり、「貯蓄額」が2000万円に満たない場合でも、公的年金や退職金などを加味することで、老後資金として十分な額を確保できている可能性があります。
2000万円という数字の意味
2000万円問題が社会的に大きな注目を集めた背景には、少子高齢化の進展による年金受給額の減少や、医療費の高騰などがありました。
2000万円という具体的な数字になったのは、2019年6月に行われた金融審議会の市場ワーキング・グループによって、平均的な生活を送る上で不足する金額が、30年間で約2000万円になるとの報告書が出されたからです。
また、総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合は毎月3万7916円、単身無職世帯の場合は3万768円が不足していることも分かっています。
しかし、実際に必要な金額は、個々のライフスタイルや生活費、年金受給額などによって大きく異なります。
例えば、持ち家で住宅ローンがない人もいれば、持ち家がなく家賃を払い続ける必要がある人もいます。同様に医療費や介護費など長期的な支出が続く場合も想定されるため、結果的に2000万円以上が必要になる可能性があることにも注意してください。
老後資金を備えるポイント
老後資金を考える上で重要なのは、「自身の年金見込額の把握」と「早期準備」です。
年金額は、ねんきん定期便などで確認することができます。現在の生活費を参考に、老後の生活費を予測し、不足する金額を算出してみましょう。家計の見直しも効果的です。
また、早いうちから準備を始めることで、少額の積み立てでも大きな資産を築くことができます。iDeCo(個人型確定拠出年金)や新NISAなどの制度を活用することで、税制優遇を受けながら資産を増やすことができます。
貯蓄額など老後に不安を感じた時点で、どのような資産形成ができるのかを調べてみましょう。
自分にとって必要な金額を知ろう
定年の65歳以上の貯蓄額の実態と、老後資金について解説しました。「2000万円必要」という言葉に惑わされることなく、自身の状況をしっかりと把握し、必要な金額を知ることが大切です。
早いうちから計画的に準備を始め、安心して老後を迎えられる準備をしましょう。
出典
総務省統計局 家計調査報告(貯蓄・負債編)2023年(令和5年)平均結果の概要(二人以上の世帯)
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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