年金暮らしの親から「仕送りしてほしい」と頼まれましたが、私も家計に余裕がありません。親への仕送りをしている人はどのくらいいるのでしょうか?
では、実際に親に仕送りしている人はどのくらいいるのでしょうか。また、どの程度の金額を送っているのでしょうか。本記事では、最新の調査データをもとに、親への仕送り事情と、その対応策について解説します。
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目次
親に仕送りしている人は意外と少数派
親への仕送りは一般的なことと思われがちですが、実際にはそれほど多くはありません。厚生労働省が行った「令和元年 国民生活基礎調査」によると、親に仕送りをしている世帯は5431万世帯中104万7000世帯です。つまり、多くの人は親に仕送りをしていないのが現状です。
仕送りをしている世帯主の年齢層で最も多いのは50代で、60代、40代と続き、39歳以下の若年層ではさらに割合が低くなります。この世代は、子育てや住宅ローンなどで出費の多く、親への仕送りは大きな負担になるでしょう。
仕送りの金額、最も多いのは「2〜4万円」
では、実際に仕送りをしている人は、どれくらいの金額を送っているのでしょうか。同調査によれば、親への仕送り額で最も多かったのは「2〜4万円」です。次いで「4〜6万円」「10万円以上」と続き、平均額は5万6000円です。
仕送りの頻度はさまざまで、毎月決まった額を送っている人もいれば、医療費や冠婚葬祭など特別な出費のときだけ援助するという人もいるでしょう。このように、仕送りの有無や金額には大きな個人差があり、「必ずしも仕送りをしていないと冷たい」というわけではありません。
仕送りの前に確認すべき3つのポイント
親から仕送りを頼まれたとき、まずは感情ではなく現実を冷静に見つめ直すことが大切です。以下の3つの視点から考えてみましょう。
自分の家計に無理はないか?
最初に見直すべきは、自分自身の家計状況です。家賃やローン、子どもの教育費、老後資金の準備など、すでに多くの出費がある中で仕送りをするのは簡単ではありません。収入と支出を詳細に把握し、家計簿をつけることで、自分がどれだけ余裕を持って仕送りできるかを確認しましょう。
生活費や貯蓄を圧迫するような仕送りは、長期的に見て自分や家族を追い込んでしまう可能性があります。仕送りは「余裕があるときに無理のない範囲で行うもの」と捉え、親と相談して金額や頻度を調整することが重要です。
親の経済状況は本当に困窮しているか?
親から「生活が苦しい」と聞かされても、まずは客観的に家計の状況を確認することが重要です。年金の受給額、預貯金、持ち家の有無、医療費や介護費用なども含めて総合的に判断しましょう。本当に支援が必要かどうかは、これらの要素によって変わってきます。
場合によっては、感情的に支援するのではなく、制度的なサポートを検討する方が現実的かもしれません。例えば、生活保護、高齢者向け福祉サービス、介護保険制度などがあります。これらの制度について自治体や専門機関に相談し、親が利用可能な支援を確認することも大切です。
贈与税の対象になる可能性はあるか?
親への仕送りは、基本的に生活費の範囲内であれば非課税とされています。ただし、生活費として認められる範囲を超えてまとまったお金を贈与した場合や、毎年多額の金額を送っている場合は、贈与税の対象になる可能性もあります。
贈与税には年間110万円の非課税枠がありますが、生活費として贈与されたお金を預金したり、株式や不動産などの購入資金に充てたりする場合には贈与税がかかることがあります。
また、110万円を超えた場合は税務署から問い合わせが来ることもあります。仕送り目的や使途について親と事前に話し合い、不明点があれば税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
仕送り以外の支援方法も検討してみよう
「仕送りしたいけど、毎月の生活で手いっぱい……」という方は、金銭的支援以外の方法で親をサポートすることも可能です。例えば、以下のような方法があります。
1. 扶養控除を活用する
親を扶養家族として申告すれば、所得税や住民税の負担を軽くできることがあります。扶養控除は、親を扶養家族として申告することで所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。
ただし、親が年間所得48万円以下(公的年金収入のみの場合は年収158万円以下)であることなど、一定の条件を満たす必要があります。扶養控除を適用することで、最大58万円(住民税では最大33万円)の控除が受けられるため、親への支援を検討する際に有効な手段です。
2. 社会保障制度を確認する
年金だけでは生活が厳しい場合、国や自治体などによるさまざまな制度を利用できるケースもあります。親が年金収入だけでは生活が困難な場合には、自治体や福祉窓口で相談し、適切な支援を受けることが重要です。
3. こまめな連絡や訪問
経済的援助が難しい場合でも、親とのこまめな連絡や訪問は重要です。特に高齢者は、孤独感が健康状態に影響することもあるため、定期的なコミュニケーションや見守りを行うことで精神的な支えになります。
また、一部自治体では高齢者見守りサービスやIoT技術を活用した健康管理システムも導入されているため、それらの活用も検討するとよいでしょう。
親への支援は、必ずしも金銭的なものだけではありません。これらの選択肢を検討し、自分自身の家計状況と親のニーズに合った形でサポートしていきましょう。
仕送りは“義務”ではなく“選択肢”
親への仕送りは愛情や感謝の表れですが、法律上の義務ではありません。ただし、親が生活困窮状態にある場合には、家族間の扶養義務に基づき支援が求められるケースもあります(民法第877条)。
一方で、自分自身の生活を犠牲にしてまで続けることは、双方の生活を不安定にする可能性があるため、慎重な判断が必要です。
親への支援を検討する際には、親の状況をしっかり把握し、自分自身の家計と照らし合わせて無理のない範囲で支援方法を選ぶことが大切です。仕送り以外にも公的な社会保障制度や扶養控除などを活用する方法があります。
「お金を送れない=親不孝」と捉える必要はなく、精神的なサポートや制度的な支援も重要な選択肢です。将来後悔しないために、こまめな連絡や訪問など精神的なサポートも含めて、多角的に関わることで親との良好な関係を維持していきましょう。
出典
厚生労働省 令和4年国民生活基礎調査 世帯 表番号56, 61
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.1180 扶養控除
能美市 スマートインクルーシブシティ構想
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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