再雇用で「年収600万→300万円」になると言われた会社員。再雇用を断って「アルバイト+年金」で暮らすのも悪くない? 老後にかかる生活費とあわせて検証

配信日: 2025.04.19 更新日: 2025.10.21
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再雇用で「年収600万→300万円」になると言われた会社員。再雇用を断って「アルバイト+年金」で暮らすのも悪くない? 老後にかかる生活費とあわせて検証
厚生労働省は65歳までの安定した雇用を確保するために、「65歳までの定年の引き上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置を実施することを企業に求めています。そのため60歳の定年後も「定年後再雇用」などの制度を使って働こうとしている人も多いはずです。
 
しかし、定年後の再雇用では基本給が大きく減るケースも多いため、「再雇用ではなくアルバイトで柔軟に働いたほうがいいかも」「年金の繰上げ受給をすればアルバイトでも生活できるかも」と考える人もいるでしょう。
 
本記事では、仮に時間単価が半分になったケースでシミュレーションし、生活をまかなえるかどうかを考えていきます。
浜崎遥翔

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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定年再雇用後は時間単価が50%未満になることも

中央労働委員会の「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、定年制を採用している企業の95.5%が継続雇用制度を導入しており、その全てで再雇用制度が採用されています。
 
なお、再雇用時の雇用形態は「嘱託社員」が54.1%、「契約社員」が29.1%である一方「正社員」は4.7%となっており、多くが嘱託や契約社員として働くことになるのです。
 
また、再雇用後の基本給の時間単価を定年退職時と比較すると、「50%以上80%未満」が63.8%と最も多く、「50%未満」も18.8%に上ります。現役時代に比べて待遇が大幅に下がってしまうことがあるのです。
 
仮に時給単価が50%になった場合を考えましょう。年収600万円、年間休日116日(出勤日数249日)、1日8時間労働の場合、現役時代の時間単価は約3012円です。再雇用で基本給が50%になると、時間単価は約1506円になります。これではアルバイトの時給水準に近く、再雇用よりもアルバイトを選んだほうが良いと感じるかもしれません。
 

年金受給開始65歳までにいくら必要?

年金の支給が始まるのは65歳からとなっており、60歳の定年退職後65歳までをどう乗り切るかが1つの課題となっています。
 
総務省の家計調査(2024年)によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均支出は月28万6877円(年間約344万円)です。この数字はあくまでも「65歳以上」「無職」という世帯の数字ですが、高齢世帯夫婦の生活費を表すものとして1つの目安にできる数字と考え、これを採用します。
 
定年後再雇用で50%減の年収300万円程度になったとすると、65歳までの不足額は年間44万円、5年間で220万円です。これを貯蓄や退職金でまかなわなければいけません。
 
再雇用をやめてアルバイトに切り替え、働く時間を減らした場合はどうでしょうか。例えば時給1500円で週3日、1日8時間働くとします。年間収入は187万2000円となり、不足額は157万円、5年間では785万円が必要です。とはいえ、時給1500円・週3日という希望どおりに都合よく仕事が見つかるとも限りません。
 
仮になかなか仕事が見つからず時給1150円のアルバイトにした場合、同じ時間の働き方では年間収入は約143万円にとどまり、不足額は年間201万円、5年間で1005万円に膨らみます。
 

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年金を繰り上げ受給すれば生活できる?

年金の支給開始は本来65歳からですが、繰上げ受給をすることで60歳からの受給が可能です。ただし、1ヶ月繰り上げるごとに0.4%減り、最大で24%減額となります。
 
厚生労働省によると、平均年収で40年間働いた会社員と専業主婦の夫婦の年金額は23万2784 円とのことです(2025年4月からの金額)。仮に夫婦2人とも60歳で繰上げ受給を開始した場合、月に17万6915円、5年間で約1061万円となります。
 
繰上げ受給しながら65歳まで週3日のアルバイトをして生活していくことはできます。ただし、繰り上げ受給による年金の減額は一生涯続くため、65歳以降仕事を辞めれば月に17万6915円での生活となります。65歳以降もアルバイトを続けることになるかもしれず、注意が必要です。
 
しかし、あくまでも年間344万円は65歳夫婦無職世帯の平均値に過ぎません。生活費をもう少し抑えられるかもしれない一方で、住居費の平均額が約1万6000円となっているため、賃貸暮らしの場合はもう少し高くなる可能性もあります。
 
自分たちの毎月の出費や貯蓄額を考えながら、再雇用を継続するか、アルバイトに切り替えるかや年金を繰り上げ受給するかなどを適切に判断することが重要です。
 

定年後再雇用を断ってアルバイトをする場合の注意点

定年退職後に再雇用を断り、ゆったりと生活を送るのも1つの方法ですが、アルバイトを選ぶ場合、安定した収入を確保するのが難しくなることに注意が必要だといえます。
 
なぜなら、Indeed Japan株式会社の「シニア世代(60歳以上対象)の求職活動実態調査」によると、高齢求職者の「半数以上が年齢を理由に公平に選考されていないと感じている」というデータも出ているからです。企業に「体力や健康に不安がある」「長期間勤務できない」「扱いづらい」と思われたと感じている人が多いとのことです。
 
このため、希望するアルバイトが見つからないリスクも考慮すべきでしょう。同調査によると「60歳以降に経済的理由で職探しをしている人の約3割は採用に至っていない」「採用に至った人のうち、84.8%が条件を緩和して仕事を見つけている」というデータも示されており、60歳以降の就職活動が簡単ではないことがうかがえます。
 
再雇用を断る前に、まず再雇用で働きつつ、実際生活費としてどれくらい必要かを実感してから判断するのが賢明です。アルバイトに切り替える場合でも、まずは働き口を見つけてから辞めるほうが安心でしょう。
 

自分に合った選択を見極めることが大切

定年後の再雇用は収入が大きく減ることがあるため、アルバイトを選んで自分のペースで仕事をしたいと考える人もいるはずです。確かに年金を繰上げ受給すれば、アルバイト収入でも平均以上の生活ができます。
 
しかし、アルバイトは自由度が高い反面、収入の不安定さや仕事探しの難しさが伴いますし、年金の繰り上げ受給で減った金額は一生涯続くことに注意が必要です。
 
まずは再雇用で働きつつ、自分の生活に必要な収入額や働き方を実感し、その後アルバイトに切り替えるのが安心でしょう。自分の状況や目標に合わせた働き方を選ぶことが大切です。
 

出典

厚生労働省 高年齢者の雇用
中央労働委員会 令和5年退職金、年金及び定年制事情調査
総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要
IndeedJapan株式会社 シニア世代の求職活動実態調査
 
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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