これまで貯金をつくる余裕がありませんでしたが、50歳代になり将来が心配に……今から老後資金をつくり始めても手遅れでしょうか?
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用
まず、iDeCoの拠出額は自分で決定します。そして、自分で金融商品の運用を行い、その運用実績によって将来の資産の受取金額が決まるという私的年金制度となります。基本的に、20歳以上65歳未満の公的年金の被保険者の方が加入できます(自営業者や専業主婦(夫)は60歳未満)。
iDeCoのメリットは、掛金拠出時、運用時、資産の受取時に税制優遇がある点です。掛金の全額を所得から控除(小規模企業共済等掛金控除)できますので、所得税・住民税の軽減になります。
積立期間中、運用で得た利益は非課税です。積み立てた資産を受け取る際、受取金は全額課税対象ですが、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が適用されます。また、原則60歳になるまで引き出しができませんので老後資金づくりとしてはメリットといえます。
掛金拠出時の節税効果
前述のとおり、掛金全額を所得から控除できます(「小規模企業共済等掛金控除」という)。掛金は毎月5000円以上で1000円単位、職業等ごとに限度額があり、その範囲内において自由に設定できます。
<拠出金額の月額上限>
●自営業者など 6.8万円
●専業主婦(夫) 2.3万円
●会社員(企業年金等未加入) 2.3万円
●会社員等(企業型DC、企業型DC・DB等、企業型DB等に加入している場合) 2.0万円
iDeCoを始めるには金融機関で専用の口座をつくる必要があります。取り扱う運用商品やサービス内容、毎月の管理手数料、投資信託の信託報酬など運用商品に係る手数料、給付時の手数料などは金融機関により異なります。
口座は1人につき1つです。iDeCoに加入する場合は、これらを確認の上、手数料の安い金融機関を1社選ぶとよいでしょう。
節税効果を具体的に見てみましょう。たとえば、所得税率が20%の場合、掛金月額2.3万円(年額27.6万円)を支払うと、住民税(10%)とあわせて年間8.28万円の節税効果があります。10年加入すれば82.8万円、15年加入すれば124.2万円になります。
運用成果の資産
過去の実績を見ると、iDeCoの運用利回りは株式投信では3〜5%程度は期待できます。仮に50歳から10年間、毎月2.3万円を拠出した場合、平均的な運用利回り3%で運用できたとすると、元本276万円が321万円(運用収益45万円)に増加します。年利5%で運用できれば357万円(運用収益81万円)です。
また、15年間の運用では元本414万円が年利3%なら522万円(運用収益108万円)、5%なら615万円(運用収益201万円)になります。
商品の選び方
投資対象は、元本確保型商品(保険や定期預金など)とリスク商品(投資信託)があります。一般的には、投資信託のようにリスクが高い運用商品ほどリターンも大きく、保険・定期預金のようにリスクが低い運用商品ほど得られるリターンも低い傾向にあります。
資産が目減りしないように運用したい場合は、保険・定期預金のみで運用、ある程度のリスクをとっても資産を増やしたいのであれば、株式に投資する投資信託の割合を増やし、もう少しリスクを抑えたいのであれば債券に投資する投資信託の割合を増やすといいでしょう。
50歳代会社員でも65歳まで働くのが当たり前の時代なので最大15年間の加入が可能ですので十分にメリットを享受できます。また、投資信託による運用はリスクがありますが、10年以上運用期間があれば過去のデータを見る限り大きなリスクは取らず資産を増やすことが可能でしょう。
出典
国民年金基金連合会 iDeCoってなに?
金融庁 NISA つみたてシミュレーター
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。