60歳男性です。40年近く勤めた会社を3月末で定年退職しました。「退職金800万円」は少ないと思うのですが、これくらいが一般的なのでしょうか?
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
大企業の退職金額平均は「2139万6000円」
厚生労働省中央労働委員会の公表した「令和5年賃金事情等総合調査 令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」内、「表10 勤続年数、学歴別定年退職者の平均退職金額(男性)」によれば、大学卒の男性で満勤勤続の場合、定年退職時の退職金額平均は「2139万6000円」となっています。
ただし、本データは資本金5億円以上かつ労働者1000人以上の企業を対象とした調査結果であり、一般的に「大企業」と呼ばれるような規模の企業が多く含まれていることが予想されますので、中小企業に的を絞った場合は別のデータを参照する必要があるでしょう。
東京都内中小企業のモデル退職金額は「1149万5000円」
次に、東京都産業労働局の公表した「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」から「モデル退職金」を見てみましょう。モデル退職金とは「学校を卒業してすぐに入社した者が普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準」であると同報告書内で定義されています。
上記の調査結果によると、定年時の支給金額は大学卒で「1149万5000円」、高専・短大卒で「992万円」、高校卒で「974万1000円」です。
企業によって退職金の算出方法は異なるため一概にはいえませんが、今回の事例における「退職金800万円」という支給額は、この結果から見ると都内中小企業における平均よりもやや少ない可能性があります。
老後に必要な蓄えは最低でも「1000万円以上」
「老後○○万円問題」という言葉が、金額の上下はあれど取り沙汰されるようになって久しいですが、この老後資金の原資の一部として退職金をあてにしている方もいらっしゃるかと思います。
ここで総務省統計局の公表した「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」より、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)における家計収支を見てみましょう。
1ヶ月の消費支出25万6521円に対し、可処分所得は22万2462円で、毎月3万4058円の赤字となっています。仮に60歳で退職してから25年間、85歳まで社会保障給付のみで生活すると仮定した場合、「1021万7400円」程度不足する可能性があります。
定年後も再雇用制度で働き続ける可能性があること、物価水準や個人の生活水準に応じて支出金額が変わることを考慮する必要はありますが、退職金に加えて少し貯蓄に余裕をもたせるか、副収入源があると老後の生活も多少、安心感を持って迎えられるでしょう。
まとめ
「退職金800万円」は東京都産業労働局が調査した都内中小企業の平均と比べるとやや少なく、また老後の生活資金としてもやや心もとなく感じる金額である可能性があります。将来設計で予測していた金額よりも少ないと思われた場合は、ライフスタイルを軌道修正する必要があるかもしれません。
出典
厚生労働省中央労働委員会 賃金事情等総合調査 令和5年退職金、年金及び定年制事情調査 調査結果の概要 3 退職金額 表 10 勤続年数、学歴別定年退職者の平均退職金額(男性)(7ページ)
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版) 8 モデル退職金(34ページ)
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2024年-(18ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー