うちの会社には「退職金前払い制」の制度があります。退職金前払い制のメリット・デメリットはなんでしょうか?

配信日: 2025.05.05 更新日: 2025.10.21
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うちの会社には「退職金前払い制」の制度があります。退職金前払い制のメリット・デメリットはなんでしょうか?
退職金は、退職時に一括もしくは退職後に年金として受け取るものですが、退職金を在職中に受け取れる制度を導入している企業もあります。今回は「退職金前払い制」について、メリットやデメリットを見ていきます。
吉野裕一

夢実現プランナー

2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている

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退職金前払い制度とは

退職金は、これまでの就労に対する功労金の意味合いもあり、退職時や退職後に一括または年金で受け取るというイメージがあると思われます。
 
一方「退職金前払い制度」とは、企業によって規定もさまざまですが、退職金として積み立てる資金をあらかじめ給与に上乗せして、従業員に支給する制度です。新入社員も含む全社員に支給される、一定の勤続年数を経た従業員が選択できる、というように、制度に対しては自由度が高くなります。
 
「退職金前払い制度」は、1998年に松下電器産業(現パナソニック)が導入したのが始まりで、その後、同様の制度を導入する企業も増えているようです。
 
現在では「ライフプラン年金」として、退職金前払い制度を導入して、従業員が利用するか拠出する金額を選ぶことができる「選択制確定拠出年金」に拠出できるようにしている企業も増えています。
 
厚生労働省の「令和5年 労働組合活動等に関する実態調査」によると、令和5年に退職金前払い制度を実施している企業は10.1%となっています。
 

メリット

企業が社員を募集する際に好待遇をアピールでき、優秀な人材が入社する可能性があります。
 
また従来の退職金制度では、退職金として積み立てる資金は「退職給付引当金」として積み立てを行います。これは従業員に支給する資金なので「負債」として経理処理しますが、前払い制度で支給すれば「経費」として、その都度損金算入することができます。
 
従業員にとってのメリットには、収入が多くなる点や、転職がしやすくなる点があります。従来どおりの制度の場合、長年勤めた企業を退職する際に、多額の退職金を受け取る魅力もあります。
 
一方で、働き方の多様化もあり「ひとつの会社に長期間勤めるよりも、転勤を繰り返してキャリアアップしたい」と考える人などには、前払い制度の方が魅力的でしょう。
 
さらに前述したように、選択制確定拠出年金を導入している企業では、前払いしたお金を、給与として支払われる前に拠出することができます。
 

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デメリット

企業は従業員の社会保険料などを負担していますが、退職金を前払いすることで、従業員の給与が増え、社会保険料の負担が増える可能性もあります。また退職金を前払いしていることで、従業員が企業に長くとどまる動機が薄れ、転職しやすい環境になるともいえます。
 
従業員側から見ても、給与が増えることで、それに伴い社会保険料や所得税も増える可能性があります。従来の退職金であれば、一時金や年金で受け取る場合に税制優遇を受けることができますが、前払いでは、この優遇はありません。
 
ただし前述したように、選択制確定拠出年金を導入している企業では、給与として払う前に拠出することになりますので、企業・従業員共に社会保険料や所得税の負担が増えることはありません。
 

まとめ

退職金前払い制度は文字通り、在職中に退職金を前払いする制度です。規定などは、企業が自由に決められるので、さまざまになります。
 
選択制確定拠出年金を導入している企業では、前払いした退職金を選択制確定拠出年金へ拠出することで、社会保険料や税負担が増えることを防ぐこともできます。導入していない企業でも、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用することで、個人で税制優遇を受けることができます。
 
また、企業型確定拠出年金を導入している場合は、マッチング拠出を活用することも考えられます。とはいえ「人生100年時代」といわれるなか、退職金前払い制度で増えた収入を使ってしまうのではなく、老後資金も計画的に準備していくことが大切です。
 

出典

厚生労働省 令和5年 労働組合活動等に関する実態調査 結果の概況 6 賃金・退職給付制度の改定に関する状況
 
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー

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