「退職金の手取りはできるだけ減らしたくない」と元上司に相談したら、「書類を出せばいいよ」と言われました。どういうことでしょうか?
今回は、退職所得の受給に関する申告書の内容や、提出の有無で税額がいくら変わるか、退職金を活用した老後の資金作りなどについて紹介します。
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目次
退職所得の受給に関する申告書とは
退職所得の受給に関する申告書(以降:申告書)とは、従業員が雇用主へ提出する書類です。退職金が支給されるまでに申告書を提出すると、正しい退職所得の金額と税率で所得税の計算が行われます。
もし、申告しなければ退職金の額面に対して一律で20.42%の税率で源泉徴収されるため、申告したときよりも多くの税金が引かれる可能性があるでしょう。
申告書にはA~Eの5つの欄があり、それぞれ以下の内容を記載します。
・A欄(全員が記入):退職金の支給年月日、退職区分、勤続年数
・B欄(同年にほかにも退職金を支給された人が記入):ほかの退職金を支給された場所での勤続年数、A欄の勤続年数との合計期間
・C欄(前年以前かつ4年以内に退職金を支給された人が記入):以前に支給された退職金の勤続年数、A欄とB欄の勤続年数のうち被っている勤続期間
・D欄(A欄とB欄の勤続期間で前に支給された退職金と一部もしくはすべてを通算している人):それぞれの勤続年数や通算期間
・E欄(B欄やC欄に該当する人が記入):それぞれの退職金の支給年月日、金額など
申告の有無で退職金の手取りはいくら変わる?
申告書の有無で所得税額がいくら変わるのかを計算しましょう。条件は以下の通りです。
・勤続34年
・退職金額2500万円
・一括受取
・控除は退職所得控除のみ
退職金は分離課税と呼ばれ、ほかの所得とは分けて税額を計算します。退職所得は「(源泉徴収前の退職金額-退職所得控除)×2分の1」です。退職所得控除は勤続年数に応じて計算式が変わります。今回のケースだと「800万円+70万円×(34年-20年)」となり、1780万円です。
退職所得は「(2500万円-1780万円)×2分の1」なので、360万円になります。国税庁によると、退職所得が360万円のときの所得税率は20%、控除額が42万7500円なので、退職金にかかる所得税額は29万2500円です。
対して、もし、申告書を提出しなければ退職所得にかかる所得税は「2500万円×20.42%」で510万5000円になります。申告書を提出したときと比較すると、481万2500円の差です。
申告書を提出したときよりもかなり多くの金額が税金として引かれるので、手取り額をできるだけ減らしたくないときは提出を忘れないようにしましょう。
なお、もし申告書の提出を忘れてしまった場合は、確定申告を行うことで還付を受けられる可能性があります。原則、翌年の2月16日から3月15日までの間が確定申告の期間内となっているため、忘れずに申告しましょう。
老後の資金のために退職金の一部を運用する選択肢も
もし、老後の生活を豊かにするために少しでも手取り額を多くしたいと考えているときは、申告書の提出に加え、退職金を受け取ったあとの運用方法も考えてみましょう。積立投資をすると、収入源が少なくなる老後でも少しずつ資産を増やせます。
仮に65歳で退職し、90歳で亡くなるとすると老後の生活は35年間の計算です。10~20年以上は資産を積み立てられます。高齢になるにつれ増える病気やけがのリスクに備える意味でも、退職金の一部を資産運用に回すことは老後の生活に役立つ可能性があるでしょう。
申告書を提出すると退職金に対して適切な税率で所得税が計算される
退職所得の受給に関する申告書は、従業員による雇用主への提出が求められる書類です。退職金を支給されるまでに提出をすると、退職金から求めた退職所得に対して、金額に合った所得税率で所得税が計算されます。
しかし、提出をしないと、退職金に対して20.42%で所得税が計算されるため、提出の有無で税額の差は大きくなるでしょう。今回のケースだと、申告書の提出の有無で481万2500円の差がありました。
ただし、あとで申告書の提出を忘れてしまった場合でも、確定申告を自分ですれば本来の税額で計算されるため、多く支払った分の税金を還付してもらえる可能性があります。申告書の提出忘れに気づいたときは、確定申告を忘れないようにしましょう。
また、老後の生活資金をできるだけ多くしたいのであれば、退職金の一部を資産運用に回すのも一つの方法といえるでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー