退職金「600万円」で住宅ローンの残金支払いを予定しています。退職金は額面通りに受け取れるのでしょうか?
しかし、退職金は額面通りに受け取れるわけではありません。勤続年数や退職金額に応じて税金が引かれるため、退職金込みで返済計画を立てるときは計算を間違えないようにしましょう。
今回は、退職金から引かれる税金の算出の仕方や、ローンを退職金で完済するときの注意点などについて紹介します。
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退職金から引かれる税金
退職金にも税金がかかるため、額面と手取り額は異なります。退職金をまとめて支給されるときの手取りは、額面を基に「退職所得控除」をまず求めてから退職所得を計算しましょう。退職所得を求めたあと、所得税と住民税を求めます。
なお、同額の退職金でも勤続年数によって税額が変わるため、計算時には注意が必要です。
退職金にかかる税金の求め方
退職所得控除の額は以下の計算式で求めます。
・勤続年数が20年以下:40万円×勤続年数(最小80万円)
・勤続年数が20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
また、退職所得の求め方は「(退職金の額面-退職所得控除額)×2分の1」(1000円未満切り捨て)です。もし、勤続年数が15年以上の人の退職金が600万円であれば、退職所得控除額が退職金額を上回るため、税金はかかりません。
退職金はほかの所得と分けて計算するので、退職所得に所得税率や住民税率をかけると税額が求められます。なお、通常の所得税と住民税は所得から基礎控除を引いて計算しますが、退職所得はそのまま各税率に当てはめます。
国税庁によると、令和6年分における退職所得に対する所得税率は表1の通りです。
表1
| 退職所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 4000万円~ | 45% | 479万6000円 |
| 1800万~3999万9000円 | 40% | 279万6000円 |
| 900万~1799万9000円 | 33% | 153万6000円 |
| 695万~899万9000円 | 23% | 63万6000円 |
| 330万~694万9000円 | 20% | 42万7500円 |
| 195万~329万9000円 | 10% | 9万7500円 |
| 1000~194万9000円 | 5% | 0円 |
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版) 退職金と税 を基に筆者作成
住民税率は、一般的な自治体で所得割が10%、その後均等割として5000円を加算します。
600万円の退職金にかかる税金
今回は、以下の条件で退職金から引かれる税額を求めましょう。
・退職金の額面が600万円
・勤続年数10年
・一括受取
・適用される控除は退職所得控除のみ
・住民税率は基準値
まず、条件の場合の退職所得控除は「40万円×10年」で400万円になります。退職所得が「(600万円-400万円)×2分の1」となり、100万円です。
退職所得を表1に照らし合わせると5%となるので「100万円×5%」で所得税は5万円です。住民税は「100万円×10%+5000円」なので10万5000円になります。
手取りは「600万-(5万円+10万5000円)」で584万5000円です。ローンの残金支払いをする場合は、この金額を参考にするとよいでしょう。
住宅ローンを退職金で支払うときの注意点
住宅ローンの残金を退職金で繰り上げ返済をすると、支払う利息の総額が減少するメリットがあります。毎月の返済もその時点で終わるので、老後の生活をローンが圧迫することもなくなるでしょう。
しかし、退職金をすべて住宅ローンの返済に充てると、老後へ向けたまとまった資金がなくなる可能性もあるため、注意が必要です。ローンを繰り上げ返済で完済するのか、老後の資金として退職金を残すのか、よく考えて決めましょう。
退職金からも所得税や住民税が引かれる
退職金は基本的に額面通り受け取れるわけではなく、所得税や住民税が引かれた金額を受け取ります。勤続年数によって同じ退職金でも手取り金額は変わるので、計算時に間違えないようにしましょう。
住宅ローンを完済するために退職金を使用したいときは、手取り額での計算を行います。ただし、人によっては退職金をすべてローン完済に充てることで、老後の生活に影響が出る可能性もあるため注意しましょう。
無理のない範囲で計画を立てることで、住宅ローンの不安を減らし、老後の安心にもつなげられるでしょう。
出典
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版)退職金と税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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