73歳で「生涯現役」と働き続ける祖父。年金を「月7万円」ほど受け取っているそうですが、“持ち家”でも働き続ける必要があるのでしょうか?
一方、年金だけでは日々の生活費が足りず、生活費の補填(ほてん)を目的として働き続ける人たちもいるでしょう。高齢の人の中には、すでに住宅ローンを完済した持ち家を所有している人もいますが、持ち家だったとしても年金だけでの生活は難しいのでしょうか。
本記事では70歳以上の高齢者が働いている割合と、高齢者の生活費の支出について解説していきます。
ファイナンシャルプランナー2級
目次
70歳以降も働く人はどのくらいいるの?
総務省の調査によると、2023年時点での65歳以上の高齢者の就業率は25.2%で、前年と同率になっています。
年齢階級別にみると、65~69歳は52.0%、70~74歳は34.0%、75歳以上は11.4%と、いずれも過去最高となっています。つまり65歳以上のおよそ4人に1人は何らかの形で仕事をしているということになるのです。
高齢者の生活費は?
総務省統計局の家計調査の2024年の平均結果によると、65歳以上の単身無職世帯において平均収入は13万4116円であるのに対し、月々の平均消費支出額が14万9286円です。支出の主な内訳は次の通りです。
食費 4万2085円
住居費 1万2693円
光熱・水道費 1万4490円
家具・家事用品 6596円
被服及び履物 3385円
保健医療 8640円
交通・通信 1万4935円
教養娯楽 1万5492円
その他消費支出 3万956円
(うち諸雑費) 1万3409円
(うち交際費) 1万6460円
(うち仕送り) 1059円
単身世帯の高齢者世帯では、収入よりも支出のほうが上回っており、家計に対しての食費とその他の消費支出の割合が高くなっていることが分かります。
持ち家で年金7万円の生活は厳しい?
毎月の年金が7万円の場合、65歳以上の単身無職世帯での平均支出14万9286円と比較するとおよそ7万9000円不足することになります。
なお、今回の場合は持ち家のため、住居費をゼロとした場合、平均消費支出額の住居費1万2693円が不要となります。これらを加味すると、生活を維持するために、年金の他に毎月約6万6000円が収入として必要となるといえるでしょう。
高齢者の働き方は?
高齢者はどのような業種でどのように働いている人が多いのでしょうか。前記の総務省の調査によると、高齢者が就業している主な職種は、多い順に「卸売業、小売業」が132万人、「医療、福祉」が107万人、「サービス業(他に分類されないもの)」が104万人、「農業、林業」が99万人などとなっています。
また、高齢就業者のうち役員を除く雇用者を雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員が76.8%を占めており、そのうちのパート・アルバイトの割合は52.7%です。
年金を受給している高齢者の場合、一定の収入が確保されているため、生活費としての補填という目的や体力面といったさまざまな観点から、非正規雇用を選択する人が多いのかもしれません。
離れて暮らす家族の生活費が大変な時にできることは
健康な高齢者であっても、現役時代のように長時間の労働は難しく、思ったように収入を得られないこともあるでしょう。そのような場合は、子どもが親に対して仕送りをする必要もあるかもしれません。
厚生労働省の2022(令和4)年国民生活基礎調査によると、子どもから親へ仕送りをしている世帯の割合は2.1%となっています。また、仕送りをしている額は平均約5万6000円です。
70歳以上でも働き続ける人は大勢いる。無理なく健康に
近年では、70歳を超えても働き続ける高齢者は多くいます。月々の支給年金の額によっては年金だけで生活を維持することは難しいこともあり、たとえ持ち家であっても悠々自適というわけにはいかないこともあるでしょう。
また、高齢になると健康状態に不安が出てくることもあり、思ったように働けなくなる可能性もあります。このような場合、子どもをはじめとした家族が仕送り等をするといったように、状況に応じて支え合う必要もあるかもしれません。ただし、高齢者も家族も無理のない範囲でおこなうようにしましょう。
出典
総務省 統計トピックスNo.142 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要
厚生労働省 令和4年国民生活基礎調査 世帯 年次
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級