80歳の父が「老人ホーム」へ! 実家を売った「800万円」と年金「月11万円」で暮らしていける? 平均余命もふまえシミュレーション
本記事では、貯蓄や年金だけでの老人ホーム暮らしや老人ホームの料金形態、また自己資金で生活可能な老人ホームの価格帯を試算するなど、自己資金での老人ホーム生活について解説します。
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老人ホームは自己資金だけで暮らせる?
予算を抑えて老人ホームを選べば、貯蓄800万円と月11万円の年金のみでも老人ホームで暮らすことは可能といえるでしょう。老人ホームでは主に、家賃・管理費・食費などの利用料金と、医療費・介護費・その他費用などの利用料金とは別に、通常の生活費がかかります。
公益社団法人全国有料老人ホーム協会によると、家賃・管理費・食費などの月額利用は施設によって金額に差があり、特定施設(介護付有料老人ホーム+サービス付き高齢者向け住宅<特定施設>)では平均26万円超、住宅型有料老人ホームなら平均12万円ほどかかるとしています。
また、介護保険サービスを利用することで、要介護度に応じた限度額内であれば介護サービス料が1割負担となります。
特別養護老人ホームなど公的施設を利用する場合は、利用者の負担が過重にならないように居住費や食費にも基準費用や所得に応じた負担限度額が定められており、限度額を超えた負担額は介護保険から支給されるためより出費を抑えられるでしょう。
なお、居住費と食費は所得(図表1)や部屋タイプ、施設の種類によって異なります。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入居した場合の限度額は図表2の通りです。
図表1
※非課税年金を含む
厚生労働省 サービスにかかる利用料
図表2
厚生労働省 サービスにかかる利用料より筆者作成
設備や受けられるサービスなど、料金以外にも施設によって異なることは多いため、さまざまな施設を比較・検討した上で自分や家族に合った老人ホームを見つけましょう。
自己資金で暮らす老人ホームの料金シミュレーション
貯蓄と年金のみで老人ホームで暮らすなら、自己資金のみでの生活が可能な老人ホームの価格帯を事前にシミュレーションしてみましょう。
以下では、貯蓄800万円と月11万円の年金のみで80歳男性が老人ホーム暮らしをする場合で試算してみます。
まず、80歳男性の平均余命は8.98年(令和5年時点)なので9年として計算すると、自己資金は800万円+11万円×12ヶ月×9年=1988万円です。老人ホームにかかる費用は、介護サービス費+居住費+食費+日常生活費(その他費用)の合計17万円(月額)と仮定します。
17万円×12ヶ月×9年=1836万円となるため、月17万円以下の出費であれば貯蓄800万円と月11万円の年金で平均余命まで老人ホームで暮らすことが可能です。
ただし、特別な介護ケアを受けたり人員を多く配置した施設に入居したりと、手厚いサービスを受けられる施設に入居した場合、基本料金のほかに介護サービス加算が発生する可能性もあるため注意してください。
また、今回の試算では9年間で計算しているため、9年以上老人ホームを利用する可能性があることも考慮すると、施設を選ぶ際は余裕を持って予算を設定しておくと良いでしょう。
まとめ
公的施設や利用料金が比較的安価な老人ホームを選ぶことで、貯蓄800万円と月11万円の年金のみでも老人ホームで暮らすことは可能です。
老人ホームでかかる費用には主に家賃・管理費・食費などの利用料金と、医療費・介護費・その他費用などの自己負担費用があり、利用料金は施設によって金額が異なります。
特に公的施設では介護保険サービスを利用することで、利用料金に基準額が定められるため自己負担額を軽減できます。
老人ホームは、施設によって設備やサービスはもちろんのこと、かかる費用や使える制度なども異なるため、予算に合った施設を比較・検討して自分や家族に合った老人ホームを見つけましょう。
出典
公益社団法人全国有料老人ホーム協会 「高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究事業」報告書
厚生労働省 サービスにかかる利用料
執筆者:梅井沙也香
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