40代自営業です。2000万円問題さえクリアできれば老後は安心できますか?
特に公的年金が少ないとされる自営業者にとっては、資産形成や計画的な支出が老後の生活を左右します。
この記事では、「2000万円あれば、老後も安心できるのか」という疑問に答えていきます。
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
2000万円問題とは?自営業者への影響
まずは2000万円問題の概要について確認していきましょう。事の発端は2019年に遡ります。この年に金融庁が発表した報告書では、「夫婦2人の老後生活費が公的年金だけでは毎月5万円ほど不足し、その際に約2000万円の老後資金が必要となる」と指摘されました。
これが今日まで随所で語られる「2000万円問題」の発端であり、根拠です。
とはいえ、生活費や余暇費用、医療費の増加など、老後の必要資金は人によって異なります。2000万円という数字はあくまで目安であり、自分自身のライフスタイルに応じた資金計画が重要であることを最初に申し上げておきます。
そして、この2000万円問題に特に強い関心を寄せているのは、自営業者でしょう。厚生年金に加入していない自営業者は将来受け取れる年金が国民年金のみです。そのため、厚生年金に加入している会社員や公務員と比べて、公的年金の受給額は基本的に少なくなります。
具体的に確認してみましょう。国民年金のみとなる場合、日本年金機構によれば老後の年金収入が年間でも夫婦二人の場合163万円ほど、厚生年金の夫婦(平均的な専業主婦と会社員の夫の額)でも277万円と大きな差がつきます。
2000万円あっても、老後を不安に感じてしまう理由は?
政府の試算では「老後に2000万円必要とされる」とされていますが、仮に2000万円あっても安心できるどころか、不安になる方もいる理由はなんでしょうか。
それは先に述べたとおり、自営業者が受け取る国民年金は、会社員が受け取る厚生年金より少ないからでしょう。「厚生年金を受け取っていても不安になるのだから、国民年金ではなおさら不足するのではないのか」と不安になるのでしょう。
また、インフレの影響も考えられます。2000万円を現在の物価基準で考えても、40年後は物価が大幅に上昇している可能性があります。インフレによってお金の価値は目減りするため、現時点で必要だとされる金額では、将来の生活費を賄えない場合があります。
加えて、平均寿命の伸びも考えられます。平均寿命が延びる中で、30年を超えて35年と、長く続く可能性もある老後をカバーするためには、資金が2000万円だけでは難しいかもしれないからです。
このように、2000万円の老後資金があっても不安に感じる方がいる理由としては、受け取る年金の種類とインフレの影響、そして寿命の伸びが考えられるのです。
自営業者が老後の安心を得るための対策
先の考察を踏まえ、もらえる年金の少ない自営業者が老後安心するには、どうすべきなのでしょうか。
1つは資産運用です。年金が期待できない分、iDeCoやNISAを通じて、手持ちの資産を運用によって増やしていくのです。また、老後資金も運用を続けながら必要に応じて取り崩すことで、老後資産の額が2000万円でも、より長持ちさせることができます。
また、固定費や日々の無駄な買い物などを減らし、支出を小さくすることも重要でしょう。それらに加え、可能であれば就労を可能な限り続けて、収入を年金以外で確保することも、不安の解消と安心を得ることにつなげられます。
それでもなお不安であれば、医療保険や国の公的サービス(介護保険など)の確認と積極的な利用で、不安を解消することができるでしょう。
まとめ
老後の生活資金の目安として、たしかに2000万円という国の試算は参考になりますが、それだけで安心できるとは限りません。特に自営業者は、公的年金収入が少ないため、より計画的な資産形成と支出管理が求められます。
特に近年では不安としてより大きいであろうインフレと、長寿化のリスクに対応するためには、つみたてNISAやiDeCoを活用した資産運用、固定費削減、リスク管理などを組み合わせることが重要です。
老後の準備は40代からでも遅くはありません。年金の少ない自営業者であればなおさら、将来に備えて今すぐ具体的な計画を立て、将来の安心を確保する一歩を踏み出しましょう。
出典
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
執筆者:柘植輝
行政書士