75歳 貯金ゼロで“認知症”と診断された父。介護施設を利用したいけど、年金「月10万円」では厳しい? 金銭的に支援しないと入居は無理でしょうか?
本記事では、介護施設にかかる費用の相場や金銭的に余裕がない場合の選択肢、また介護に関して利用できる制度を解説します。
FP2級
金銭的支援なしで施設入居は無理?
年金月10万円で貯金がない場合でも、比較的安価な施設であれば金銭的支援なしでも入居できる可能性はあります。
老人ホームには「民間施設」と「公的施設」があります。民間施設の場合は、施設の種類によって月12万~26万円ほどの居住費用や、食費などの月額利用料が全額自己負担となるため、年金のみで入居する場合は選択肢が限られるでしょう。
しかし、公的施設であれば負担限度額認定を受けられることがあり、認定を受けると居住費と食費において基準費用や所得に応じた負担限度額が定められます。
負担限度額認定を適用した場合の所得(図表1)に応じた上限額は、介護福祉老人施設(特別養護老人ホーム)へ入居した場合で図表2の通りです。
図表1
※非課税年金を含む
厚生労働省 サービスにかかる利用料
図表2
厚生労働省 サービスにかかる利用料 より筆者作成
施設入居にかかる介護サービス費は、介護保険を利用すれば1割(所得が高い場合は2~3割)負担となり、収入が年金のみで貯蓄なしの場合は限度額認定が適用されることで食費と居住費を合わせても月4万円以内で済みます。
日常生活費や実費となる諸費用などを考慮しても、月10万円の年金があれば金銭的支援がなくても施設への入居は可能でしょう。
ただし、公的施設は空きがないことも多く、入居したいタイミングで金銭面や本人に合った施設へ必ずしも入居できるとは限りません。
また、費用以外にも施設によって入居可能な介護度合いが異なるため、施設ごとに対象となる介護度や空き状況などもよく確認し、地域包括支援センターなども活用しながら入居する人に合った施設を選びましょう。
要介護状態の人が利用できる制度
要介護状態の人が利用できる制度には、主に「自己負担額を軽減できる制度」と「限度額に応じた超過分が還元される制度」があります。
介護に関する主な支援制度は次の3種類です。
●介護保険サービス
●高額介護サービス費
●高額医療・高額介護合算療養費制度
介護保険サービスは、介護サービスなどを受ける際の自己負担が軽減される制度です。
制度の利用には、申請や認定を受ける必要があります。介護度によって受けられるサービスや自己負担額が異なるため、事前に制度の対象や必要書類などをよく確認し、対象となる場合は早めに申請して認定を受けておきましょう。
高額介護サービス費は、ひと月に支払った介護保険サービス費の自己負担額が上限額を超えた場合に超過分が還付される制度です。
施設で受けられる生活介助や、リハビリなどといった介護サービスにかかる費用が還付の対象で、居住費や食費などの生活費は対象外のため注意してください。
高額医療・高額介護合算療養費制度は、同一世帯において医療保険と公的介護保険で自己負担が生じた場合に、合算後の負担額が年収に応じて定められた上限額を超えると超過分が還付される制度です。
高額介護サービス費と同様に施設の居住費や食費などは合算対象外で、8月1日~翌年7月31日の1年間に支払った介護保険サービス費と医療費の自己負担額を合算して上限額を超えた場合に、お住まいの自治体の窓口で申請をすると還付が受けられます。
要介護状態となった際は、利用できる制度をうまく活用することで介護の選択肢を広げられるでしょう。
まとめ
介護施設を利用する場合、公的施設のような比較的費用が抑えられる施設を選んだり、制度をうまく活用したりすることで、年金のみで施設に入居することは可能です。
公的施設であれば限度額認定を受けられることがあり、認定を受けることで施設に入居する際の費用負担が抑えられます。
また、要介護状態の人が受けられる支援もいくつかあり、対象となる場合は手続きを行うことで、費用の自己負担を軽減できたり自己負担額の還付を受けられたりするため、うまく活用してみましょう。
介護に関する選択肢はさまざまであるため、まずは地域包括支援センターなどで相談をしてみることがおすすめです。
出典
PwCコンサルティング合同会社 厚生労働省令和6年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金) 高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究事業報告書
厚生労働省 高額医療・高額介護合算療養費制度について
厚生労働省 介護保険の解説 サービスにかかる利用料
執筆者:梅井沙也香
FP2級

