45歳の独身会社員。賃貸に「家賃10万円」払っていますが、一生賃貸なら“老後資金”はどれくらい必要ですか?「年収480万円・貯金500万円」のケースで試算
本記事では、45歳で家賃10万円の賃貸に住む、年収480万円の独身の人が、一生賃貸暮らしを続ける場合、どれくらい老後資金があればいいのか試算します。貯蓄が不足する際の対策なども紹介します。
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目次
年収480万円、65歳で仕事を辞めた際の年金受給額は?
まず、年収480万円の人が65歳で仕事を辞めると、老後生活の糧となる年金受給額がどうなるか計算してみましょう。20歳から国民年金に加入し、大学卒業後の22歳から会社で勤めていると仮定して計算してみます。
まず、国民年金の加入期間は、20歳から60歳までの40年間となるため、老齢基礎年金は満額の年83万1696円(令和7年度)を受給可能です。次に老齢厚生年金は、働いた時期によって計算式が違いますが、2003年4月以降の「平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数」を用いてシンプルに計算してみます。
年収480万円だと平均標準報酬額は40万円、22歳から65歳まで働くと加入月数は43年×12ヶ月=516ヶ月になります。そのため、老齢厚生年金は「40万円×5.481÷1000×516ヶ月」の計算から約113万円を受給可能です。
つまり、65歳から受給を開始した場合の年金額は、老齢基礎年金83万1696円と老齢厚生年金約113万円の合計約196万1696円、月に直すと約16万円になります。
65歳以降、家賃10万円の賃貸に単身で暮らした場合、不足する生活費は?
次に、65歳以降に必要な生活費はどうでしょう。総務省の2024年家計調査報告によると、図表1のとおり、65歳以上の単身無職世帯の平均月消費支出は14万9286円です。非消費支出1万2647円を加えて、約16万円です。
図表1
総務省統計局 家計調査報告 2024年(令和6年)平均結果の概要
月々の年金受給額も約16万円だったため、平均的な暮らしぶりであれば、月々の生活費は年金で賄えるかもしれません。しかし、賃貸で暮らしている場合は少し話が変わります。実は、家計調査報告の調査対象者の多くが持ち家なのです。
そのため、上記の平均月消費支出のうち、住居費はわずか8.5%の約1万3000円しかありません。つまり、賃貸暮らしの場合は家賃との差額10万円-1万3000円=8万7000円をプラスした生活費を考えなければなりません。もし、65歳から90歳まで存命したと仮定すると、8万7000円×12ヶ月×25年=2610万円にもおよぶ生活費が不足することになります。
65歳までに老後資金はいくら貯めればいいか
今回の例では、老後に平均的な暮らしを送り、少し長生きするだけでも、生活費を補てんする貯蓄は2600万円以上必要です。もちろん、生活費だけで老後を過ごせるわけではなく、自身の介護費用や万一の場合の備えなども必要でしょう。
そう考えると、3000~3500万円の老後資金が必要になるかもしれません。仮に退職金が1500~2000万円あったとしても、1500万円程度の貯蓄が必要です。つまり、現在の貯蓄が500万円なら、さらに1000万円貯蓄を増やすため、45歳から65歳までの20年間240ヶ月の間、月4万円以上の貯蓄を続けなければなりません。
貯蓄不足を補う現実的な方法は?
月4万円以上の貯蓄は、一定の収入があれば不可能ではありません。しかし、45歳時点の貯蓄が500万円であることを考えると、20年でその倍にあたる1000万円も貯蓄を増やすのは容易ではないでしょう。
NISAなどを活用した投資で、資産を増やす方法もありますが、余裕がない状況では抵抗を感じる人もいるでしょう。そこで、貯蓄不足を補う現実的な方法が、家賃の安い物件への引っ越しです。
例えば、仕事を辞めた65歳時点で、家賃10万円から家賃7万円の物件に引っ越すと、90歳までの25年間で、月3万円×25年×12ヶ月=900万円も支出が減少します。貯蓄を増やす必要性はかなり少なくなり、実際にどれくらい家賃を落とすかは、その時々に判断することも可能です。
このように、住み替えが比較的自由な賃貸の特性を生かすのは、合理的な方法の1つでしょう。さらに、もう少し長く働くなど複数の対策を組み合わせれば、経済的な不安は少なくなります。
まとめ
年収480万円の会社員で独身の人が、老後を家賃10万円の賃貸で過ごす場合、長生きリスクを慎重に考えると、今回の例では退職金以外に1500万円ぐらい貯蓄が必要になります。ただし、家賃の安い賃貸に住み替えるなど、現実的な方法で必要な貯蓄額を抑えることは十分に可能です。
実際に自分が何歳まで生きられるかは分かりませんが、賃貸の生活スタイルを生かしながら、少し長く働くことも含め、複数の対策を検討してみてはいかがでしょうか。
出典
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
日本年金機構 は行 報酬比例部分
総務省統計局 家計調査報告 2024年(令和6年)平均結果の概要
執筆者 : 松尾知真
FP2級
