職場の「定年」が70歳に引き上げられました。退職金を「満額」受け取るためには70歳まで働かなくてはならないのでしょうか?

配信日: 2025.06.21 更新日: 2025.10.21
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職場の「定年」が70歳に引き上げられました。退職金を「満額」受け取るためには70歳まで働かなくてはならないのでしょうか?
定年に関わる制度の見直しがたびたび実施され、2025年4月からは65歳までの希望者について雇用機会の確保が義務付けられました。また、2021年4月に行われた高齢者雇用安定法の改正では、70歳まで就業機会を確保することが努力義務とされています。
 
制度の改正が、退職金にどのような影響を与えるか気になる方も多いと思われます。退職金に関する情報を知り、60歳以降のライフプランを考えてみましょう。
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退職金の仕組み

退職金とは、従業員が退職する際に会社から支払われる金銭のことで、「退職手当」や「退職慰労金」とも呼ばれます。
 
勤続年数が35年以上の人が定年退職した場合に受け取る退職金の平均額は、高卒が約1900万円、大学・大学院卒が約2040万円です(管理・事務・技術職、勤続年数35年以上)。学歴や勤続年数、退職の理由などによってこの金額には差が生じます。図表1は、学歴・退職理由別の平均額です。
 
図表1 管理・事務・技術職の1人平均退職給付平均額(勤続年数35年以上)

定年退職 会社都合 自己都合 早期優遇
大学・大学院卒 2037万円 2088万円 2115万円 1515万円
高校卒 1909万円 1498万円 2026万円 2873万円

出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態 第37表」より筆者作成
 
早期優遇以外の理由では、大学・大学院卒のほうが総額は高いことが分かります。また、退職理由によっても退職金額が大幅に異なり、最も金額の差が大きいのは自己都合と早期優遇です。大学・大学院卒の人が自己都合退職した場合と早期優遇退職した場合の差は約500万円ですが、高卒の人の場合は1000万円近くも差が出ます。
 

退職金の制度

退職金には種類がいくつかあり、受け取り方で分類すると「退職一時金」と「退職年金」の2つに分けられます。図表2は、受取方法別で見た総額の比較です。
 
図表2 管理・事務・技術職の1人平均退職給付額(一時金・年金、勤続年数35年以上)

退職一時金のみ 退職年金のみ 併用
大学卒・大学院卒 1822万円 1909万円 2283万円
高卒 1670万円 1710万円 2254万円

出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態の支給実態 第38表」より筆者作成
 
どちらか一方の制度で支払われる場合は、学歴により約200万円の違いが見られます。受け取り方法を選択できる場合は、併用を希望すると約400万円多く受け取れる計算です。
 
ここで、それぞれの制度についても簡単に紹介しておきます。
 

退職一時金制度

「退職一時金」とは、従業員が退職する際に会社から一括で受け取る制度です。支給は就業規則や規定に記載された内容に基づき、計算方法も会社によって異なります。勤務年数で決まる定額制や基本給と勤続年数をもとに計算する基本給連動型、勤続年数や役職等をポイントに換算して計算するポイント制が主な計算方法です。
 

退職年金制度

「退職年金」は外部で積み立てし、年金のように一定額を定期的に受け取る制度です。会社が事前に定めた額を受け取る場合と、従業員自身が運用して得た金額を受け取る2つの種類に分類されます。
 
このほかにも、自社で退職金を用意することが困難な中小企業向けの退職金共済制度もあり、積み立てを行った外部機関から直接退職金が支払われます。
 

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退職金を受け取るタイミング

従来の退職金を受け取るタイミングは、60歳の時点でした。しかし定年延長により、これまでと変わらず60歳で受け取る場合と延長した時期に受け取る場合の2パターンが生まれました。
 

(1)60歳で受け取る場合

企業によりますが、定年を延長しても従来通り60歳を迎えた時点で退職金を受け取ることが可能です。予定通りの時期に退職金を受け取れることはメリットですが、扱いには注意しましょう。本来は退職所得としての扱いですが、雇用されている間に受け取るものは給与所得として扱われます。
 
しかし、定年延長の場合は特例として認められれば給与ではなく退職所得となります。どちらになるかで収める税額が変わるため、自身の場合は特例に該当するかは確かめておくことが必要です。
 

(2)定年退職する年に受け取る場合

60歳では受け取らず、定年退職後に退職金を受け取る選択も可能です。この場合は受け取る金額が上昇する可能性が高いですが、会社のルール次第であるため断言はできません。
 
60歳以降も勤務年数に比例して金額が上昇する場合は支給額が増加しますが、会社のルールによっては増えない場合があります。また、65歳で受け取った場合、退職所得控除額は勤続年数に応じて大きくなりますが、退職金や税額は個別の状況によって異なります。
 

退職金を満額もらうために70歳まで働く必要はない

70歳まで働くことが、退職金を満額もらうための絶対条件ではありません。退職金は会社の規定や規則に基づいた支給され、会社側が労働者の承諾なしに金額を変更することは基本的に不可とされています。
 
また、受け取るタイミングを選べる場合もあり、60歳や65歳の時点で満額もらうことも可能です。退職金は、各会社で規定が異なる複雑な制度です。自分が勤めている会社では、どのような制度を採用しているか確認しておきましょう。
 

出典

厚生労働省 高齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
厚生労働省 高齢者雇用安定法改正の概要
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態 第37表
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態 第38表
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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