父が「老後は故郷でのんびりしたい。退職金を使って移り住む」と言います。移住にかかる費用と高齢夫婦の生活費はいくらくらいですか?
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。
老後生活を具体的に思い描く
コロナ以降、在宅勤務が広がったことで地方移住に関心を持つ人が増えましたが、現役世代にとっては、「仕事をどうするか?」という問題があります。リタイア後の場合は、比較的スムーズに運ぶと楽観視してしまいがちですが、慎重に考えるべきチェックポイントがあります。
まずは、自分の思い描く「老後の生活」を確認しましょう。“のんびり暮らしたい”の内容を、具体化することが大切です。「仕事から解放されて趣味や生きがいなどに没頭したい!」という場合、その生活の優先事項を確認します。
筆者には、「趣味を楽しみたい」と二拠点生活を送っている知人がいます。自宅を手放して移住してしまうと、後戻りできなくなってしまいます。ここは慎重に計画することが肝要です。まずはお試し期間を設けて、移住先で数週間暮らしてみて様子を見ることをお勧めします。
例えば「通勤のことを考えなくてよいのだから、少々交通の便が悪くても大丈夫」と考えたならば、実際に住んでみて試してみなくては、本当に大丈夫かどうかは分かりません。できれば春夏秋冬を通じて暮らしやすさを実感してから、移住計画に本腰を入れて取り掛かってみてはいかがでしょうか。
地域によって違う暮らしに掛かる費用
経済的な理由、例えば東京は物価が高いので「地方に移住するほうが安く暮らせるのでは?」という場合もあります。地方移住のメリットとして生活費の圧縮を考える向きがありますが、実際はどうなのでしょう。
(図表1)
図表1は地域を抜粋したものですが、各地域でそれぞれの特徴があることが分かります。一般的にいわれていることですが、交通費は地方のほうが高くかかります。また食費なども、東京に比べて安いと思っていたのに、それほどではなかったと感じる人もいるでしょう。水道料金などは地域によって差がありますので、調べておくと安心です。
他の地域については、総務省のサイト(※)をご参照ください。
家族の同意は必須事項
さて、今回の相談者の「故郷に帰る」というケースの、お金の話です。
実家があることが前提なら、多少のリフォーム費用で住居は確保できるかもしれません。どの程度の費用を掛けるかはケース・バイ・ケースですので、今回は割愛します。自宅と実家が遠距離ならば、引っ越し費用だけでなく、もろもろの打ち合わせのための往復費用もかさむので注意が必要です。
老後の生活において心配な点は、交通の便や医療・介護の充実度ですが、事前に最新の口コミ情報を収集しておくと安心です。「故郷に帰る」ということで安心感がありますが、都心部の生活に慣れていることに加え、現役時代と生活スタイルが変わることで戸惑うこともあります。
参考までに、65歳以上の夫婦で1ヶ月あたりの支出内訳は図表2のとおりです。
(図表2)
これまでの仕事中心の生活から解放された、新しい生活の始まりです。筆者は自分にとって居心地のよい場所を住家とすることに賛成です。しかし、拠点を移すということは簡単ではありません。
特に、これまでの人間関係などはおろそかにはできません。ご家族の同意を得ているか否かは、最も重要な事項です。最近はSNSなど気軽につながる手段もありますが、親しくしている仲間と離れる寂しさがあります。家族全員が楽しく暮らせるように計画してください。
出典
(※)総務省統計局 統計表・グラフ表示 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 表番号010
総務省統計局 e-Stat 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 2024年 第3-12表
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

