48歳会社員、70代の母親と同居しています。母親は住民税非課税ですが介護保険料が高い……世帯分離をすると安くなるって本当?
また、高額介護サービス費や介護保険施設の費用の負担も増えます。親が子どもと同居している場合、親の介護保険料や高額サービス費等、負担額は世帯で判断されます。同居していても世帯を分離してしまえば、親のこれら負担を減らすことができる可能性があります。
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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介護保険料
介護保険料は、市区町村の介護サービスにかかる費用の総額(利用者負担を除く)の23%分を、 その市区町村に住む65歳以上の人数で割ることにより、基準額を決定します。その基準額をもとに、所得段階別の年間保険料額(基準額×乗率)が決まります。保険料は、介護保険事業計画の見直しに応じて3年ごとに設定されます。
例えば足立区の場合、親が住民税非課税(世帯に住民税課税者がいる場合)で、本人の課税年金収入額とその他の合計所得金額の合計が80万9000円(令和7年4月より)以下であれば、介護保険料は年額7万560円ですが、親がひとり暮らしであれば2万3160円と大幅に下がります。
このように、親が住民税非課税でも世帯に住民税課税者がいると、親の介護保険料は跳ね上がります。
高額介護サービス
介護保険サービスを利用した場合の利用者負担は、介護サービスにかかった費用の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)です。1割といっても、世帯に要介護度の重い利用者が2人いると高額になり、所得の低い世帯には負担です。
そこで、世帯単位で月々の利用者負担額(福祉用具購入費、居住費や食費等一部を除く)の合計金額が、所得により区分された上限額を超えてしまった場合、その超えた分が申請により介護保険から支給される仕組みになっています(高額介護サービス費)。
例えば、住民税課税世帯で課税所得380万円(年収約770万円)未満の場合、1ヶ月の負担限度額は4万4400円ですが、親がひとり暮らしをしていて住民税非課税で、公的年金等収入金額とその他の合計所得金額の合計が80万9000円(令和7年8月より)以下であれば、1ヶ月の負担限度額は1万5000円で済みます。
このように、親が住民税非課税でも世帯に住民税課税者がいると、親の負担限度額は跳ね上がります。
介護保険施設の費用
介護保険施設(特養・老健・介護医療院)を利用した場合、費用の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)負担のほかに、10割負担の居住費、食費、日常生活費がかかります。
介護保険施設に入所していて、所得・資産等が一定以下の方は、負担限度額を超えてしまった居住費と食費の負担額が介護保険より支給されるという軽減措置があります(特定入所者介護サービス費)。
例えば、ひとり暮らしの親が住民税非課税で、本人の公的年金年収入額とその他の合計所得金額が80万9000円(令和7年8月より)以下の場合で、預貯金額が650万円以下であれば、特養の食費の負担限度額は1日390円、居住費の負担限度額は部屋のタイプにより1日430~880円で済みます。
一方、子どもと同居している場合、補足給付による軽減措置は受けられず、負担限度額は基準費用額が適用された場合、1日1445円、居住費の負担限度額は部屋のタイプにより1日915~2066円となります。
なお、特定入所者介護サービス費(補足給付)の利用には、負担限度額認定を受けなければなりませんので、お住まいの市区町村に申請してください。
世帯分離
世帯分離とは同居している状態で、「親と子」のように住民票の世帯を別々に分けることを指します。世帯分離をするためには、住民票のある市町村役場の窓口で手続きが必要です。
その際、住民異動届(世帯変更届)のほか、委任状(代理人が手続きする場合)、本人確認のため免許証・パスポート・マイナンバーカード、健康保険証、年金手帳(証書)、印鑑などが必要です。世帯分離の手続きは自治体により異なりますので、お住まいの市区町村でご確認ください。
本来、世帯分離は、生計が別々といった状況があるときに認められるもので、介護関連の費用軽減を目的では認められない可能性があります。世帯分離をすると、国民健康保険料が高くなる場合があるなどデメリットもありますので、世帯分離が適しているかケアマネジャーに相談してみましょう。
出典
厚生労働省 介護保険料等における基準額の調整について
足立区 令和7年度の介護保険料
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。