退職金は「一時金」と「年金形式」のどちらを選択するとよい?最終的に多く受け取れる方法は?
受け取り方によって税金額が変わってくるため、より多くの退職金を受け取るためにはどちらを選ぶべきか、悩む人もいるでしょう。
本記事では、退職金の「一時金」と「年金形式」の違いや、それぞれのメリット・デメリットについてご紹介します。
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退職金を「一時金」で受け取る場合
「一時金」とは、退職金を一括で受け取る方法のことです。退職金を一時金で受け取る場合は「退職所得」という扱いになるため、所得税や住民税の課税対象になります。退職所得の金額は以下の式で計算できます。
退職所得=(退職金額-退職所得控除額)×1/2
国税庁によると、退職所得からは、勤続年数に応じて以下の計算式で算出できる金額が控除されます。
●勤続年数が20年以下:40万円×勤続年数
●勤続年数が20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
例えば、勤続35年の場合は退職所得控除額が1850万円になるため、退職金が1850万円以下であれば税金はかかりません。
退職金を「年金形式」で受け取る場合
一方、「年金形式」とは一定の年数をかけて分割で退職金を受け取る方法です。この場合、退職所得ではなく「雑所得」という扱いになるため、退職所得控除が適用されません。その代わり「公的年金等控除」の対象となり、厚生年金や国民年金などの公的年金と合わせた収入金額から控除額を差し引いた額に課税されます。
例えば、65歳未満で年金以外の所得が年間1000万円以下の場合の雑所得は表1の通りです。
表1
| 年金収入 | 雑所得の計算式 |
|---|---|
| 60万円以下 | 0円 |
| 60万円超130万円未満 | 収入金額の合計-60万円 |
| 130万円以上410万円未満 | 収入金額の合計×0.75-27万5000円 |
| 410万円以上770万円未満 | 収入金額の合計×0.85-68万5000円 |
| 770万円以上1000万円未満 | 収入金額の合計×0.95-145万5000円 |
| 1000万円以上 | 収入金額の合計-195万5000円 |
※国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」を基に筆者作成
このように、公的年金等控除額は年金収入や年齢によって変わります。
最終的に多く受け取れるのはどちら?
退職所得控除が適用されるため、税制面でのメリットが大きいのは「一時金」として受け取る方であると考えられます。
しかし「年金形式」の場合は、これから受け取る分の退職金を会社が一律の利率で運用してくれているため、受け取れる額が大きくなる可能性があります。そのため、より多くの額の退職金を受け取りたいのであれば、年金形式を選択した方がよいかもしれません。
ただし、年金形式で受け取ると控除額が小さいため所得税や住民税の負担が大きくなったり、社会保険料の負担が増えたりする可能性があるなどのデメリットもあるため、よく考えて決めるとよいでしょう。
また、会社によっては一時金と年金形式を合わせて利用できる場合もあります。この方法だと退職所得控除と公的年金等控除の両方が適用されるため、より控除額が大きくなる可能性があります。
住宅ローンの返済に充てるために一部を一時金として受け取り、残りを年金形式で受け取ることも可能な場合があるため、検討してみるとよいでしょう。
一時金と年金形式、自分に合う方法を慎重に選ぼう
退職金の受け取り方法には「一時金」と「年金形式」があり、それぞれ税金の計算方法が異なります。
年金形式は、運用によって額面上の受取総額が増える可能性がありますが、税金や社会保険料の負担も増えるため、手取り額では一時金が有利になるケースも少なくありません。
どちらがご自身にとって有利かは、退職金の額や他の年金収入、ライフプランによって変わります。それぞれのメリット・デメリットをよく比較し、場合によっては併用も視野に入れて、最適な方法を選択しましょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1600 公的年金等の課税関係
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー