「年金23万円」では足りない現実…。トランプ関税で“物価1.5倍”時代が来る?
今回は、今どのくらい物価が上がっているのか、将来年金で生活ができるのかなど、多くの人が感じているお金の不安について解説していきます。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者
“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。
富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”
今もらえる年金はいくら?年金だけで生活できる?
まず、現在の年金生活者の方々が、毎月いくら年金を受け取っているのか確認していきます。
日本年金機構によると、2025年4月分(6月13日(金曜)支払い分)からの年金額は、2024年度から原則1.9%の引き上げとなりました。例えば、昭和31年4月2日以後生まれの方の場合、もらえる年金額は以下のとおりとなっています。
<国民年金(老齢基礎年金(満額))>
6万9308円
<厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)>
23万2784円
※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める、年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
現在の平均支出
次に、現在、高齢者世帯が毎月どのくらいお金を使っているのか確認していきます。
2024年の「家計調査」によると、2人以上世帯のうち、世帯主の年齢階級別に見てみると、65歳以上の家庭の場合、毎月の平均消費支出は以下のとおりとなっています。
65~69歳:31万626円
70~74歳:27万572円
75~79歳:25万6770円
80~84歳:23万3014円
85~89歳:22万8448円
仕事を引退する60代後半の場合、毎月の支出は30万円以上ですが、その後は年齢を重ねるにつれて支出が減っていくことが分かります。
現在の物価上昇率
さらに、現在どのくらい物価が上昇しているのか確認していきます。総務省が公開している「2020年基準 消費者物価指数」によると、2020年の物価総合指数を100とした場合、2025年5月の物価は111.8となり、前年の同月比では3.5%の上昇となっています。
特に食料品は124.4と上昇率が高く、次いで家具家事用品が122.1、光熱・水道が121.2となっています。ここ5年で、食料品は20%以上も値上げされていることが分かります。
年金だけでは足りない老後の生活
今まで紹介してきたデータを見ると、現在の高齢者世帯も、年金だけでは毎月生活ができていないことが分かります。
例えば、60代後半世帯の場合、毎月の支出「約31万円」-毎月の厚生年金の年金「約23万円」=約8万円となっており、毎月約8万円の赤字です。この不足分は、今までの貯蓄や、再就職による収入で補っている方が多いでしょう。トランプショックの物価高が反映される前でも、すでに年金だけでは生活できなくなっていることが分かります。
そして、今後さらに物価高が続いた場合、毎月必要となる支出も増加します。例えば、物価がこのまま毎年2%ずつ上昇すると、20年後には価格が約1.5倍になる計算です。単純に計算して、20年後には1.5倍の生活費がかかることになります。
少子高齢化の日本では、今後の年金支給額が大幅にアップするとは考えにくいため、年金以外に自分で用意しなければならない老後資金は増えると考えられます。
「老後2000万円問題」が以前話題となりましたが、老後に必要なお金は、2000万円では不足するケースも出てくるかもしれません。物価上昇率を毎年2%と仮定すると、単純に計算して、20年後には2000万円ではなく1.5倍の3000万円の貯蓄が必要になる可能性があると考えられます。
まとめ
今回は、現在の年金支給額や平均支出額、物価上昇率を紹介しました。そして、トランプショックによる物価上昇により、私たちの老後資金はどのような影響を受けるのかを解説しました。今後自分たちの老後資金を準備するうえで、ぜひ参考にしてみましょう。
出典
日本年金機構 令和7年4月分からの年金額等について
総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 2024年 第3-2表
総務省 2020年基準消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)5月分
執筆者 : 下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者