「夫と離婚しても年金があるから大丈夫」と言うパート勤務の友人。でも本当に、“熟年離婚後”の1人の老後に備えは必要ないのでしょうか?

配信日: 2025.06.26 更新日: 2025.10.21
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「夫と離婚しても年金があるから大丈夫」と言うパート勤務の友人。でも本当に、“熟年離婚後”の1人の老後に備えは必要ないのでしょうか?
近年、50代以上のいわゆる「熟年離婚」が増加傾向にあります。年金分割制度などの登場によって「離婚しても老後は安泰」といったイメージもありますが、実際の生活や経済面ではさまざまな課題があるのが現実です。統計データや制度の仕組みをもとに、熟年離婚のリアルを見ていきましょう。
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熟年離婚が増加する背景

厚生労働省の人口動態統計(2023年)によれば、年間の離婚件数は18万3808組でした。さらに、結婚期間が20年以上の離婚件数は約3万9812件です。
 
内訳を見ると、同居期間20~25年未満が1万6464組、25~30年未満が1万1001組、30~35年未満が5521組、35年以上が6826組となっており、いずれの区分も前年より増加傾向にあります。
 

年金分割の仕組み

年金分割制度とは、離婚した際に、婚姻期間中の厚生年金や共済年金の記録を夫婦間で分け合える仕組みのことです。たとえ長年専業主婦だった場合でも、条件を満たせば離婚後に一定額の年金を受け取れるようになります。
 
ただし、分割対象となるのは、「婚姻期間中の厚生年金記録」であり、それに基づいて再計算された年金の一部を受け取るという形になります。
 
特に、平成20年4月以降に専業主婦(主夫)であった期間については、相手の合意がなくても年金記録の半分を分割請求できる『3号分割制度』というものがあります。
 
一例を見てみましょう。

● 夫の年金: 厚生年金に40年間加入し、月12万円を受給。
● 妻の年金: 自身の国民年金(基礎年金)として月6万円を受給。
● 婚姻期間: 20年間

まず、分割によって妻の年金にいくら加算されるかを計算します。夫の厚生年金(月12万円)のうち、婚姻期間(20年)に相当する部分は、加入期間全体の半分です。したがって、分割対象となるのは月6万円相当となり、その半分である月3万円が妻に分割されます。
 
この結果、妻が離婚後に受け取る年金の合計額は、
自分の国民年金6万円 + 年金分割による加算分3万円 = 月額9万円
となります。
 
年金分割によってある程度の収入が確保できる場合もありますが、現役時代と同じ生活水準を維持するには、家計の見直しや支援制度の活用なども視野に入れる必要があるでしょう。
 

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離婚後の生活費と現実的なリスク

総務省の2024年の家計調査報告によると、65歳以上の単身無職世帯における平均消費支出は月約15万円となっています。年金分割後に受け取れる金額がこの水準に届かない場合、生活は厳しくなる可能性があるでしょう。
 
特に長年専業主婦やパート勤務だった女性は、離婚後に公的年金のみで生活を支えることが難しくなるケースが目立ちます。住居の確保、再就職の難しさ、健康状態や将来的な介護リスクなども、生活を不安定にする要因のようです。
 

後悔しないために。熟年離婚で備えておくべきポイント

今回の「どう備えればいいの?」という問いに対して、離婚を考える際に最低限押さえておきたいポイントを紹介します。
 
まずは、年金分割後の収入やパート収入に対し、生活費や保険料などの支出を見積もり、リアルな収支をシミュレーションすることが大切です。
 
次に、預貯金や不動産、生命保険の解約返戻金、退職金など、財産分与の対象となる資産を整理しておきましょう。住まいについても、現在の家に住み続けるか、賃貸へ転居するかなど、費用面も含めて早めの検討が必要です。
 
加えて、今後の働き方や収入源の見直しも重要で、フルタイム勤務や資格取得、リスキリングなどで安定した収入を確保できるよう備えておくと安心です。さらに、住んでいる自治体の住宅手当や医療費助成、保険料の減免など、公的な支援制度の内容も確認し、必要があれば事前に相談しておくとよいでしょう。
 

熟年離婚は本当に“大丈夫”なのか?年金分割や生活費から考える現実

熟年離婚には年金分割や財産分与といった制度的な支えがありますが、経済面・生活面の準備が不十分なままでは負担が大きくなる可能性もあります。離婚の是非は一概にはいえず、状況に応じた丁寧な準備と判断が大切だといえるでしょう。
 

出典

厚生労働省 令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
総務省 家 計 調 査 報 告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要
日本年金機構 離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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