年収800万の会社員が“iDeCoだけでFIRE”を目指すのは無理?実際にシミュレーションしてみる
十分な収入があるように見えても、生活費や教育費、住宅ローンなどを差し引くと、自由に使える資金は限られます。本記事では、iDeCoを活用したFIRE戦略について解説しつつ、年収800万円の家庭がFIREを実現できるのか、具体的なシミュレーションをとおして検証します。
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目次
iDeCoとは? FIREとの相性がいい理由
iDeCo(イデコ)とは、自分で掛け金を出して老後資金を積み立てる私的年金制度で、節税効果が大きいのが特徴です。掛け金は全額所得控除の対象となり、運用益は非課税で、受取時にも一定の税制優遇があります。
また、FIRE(Financial Independence, Retire Early)とは、資産運用による不労所得で生活費を賄い、早期に仕事を辞めて自由な時間を楽しむライフスタイルのことです。iDeCoを活用すれば、税引き前の収入を最大限活用して将来に備えることができるため、FIREとの相性も抜群です。
高収入層にとっては節税メリットが大きく、投資効率を大幅に向上できます。一方で、60歳まで引き出しができないという制約があるため、FIRE後すぐに取り崩すことはできません。したがって、iDeCoは「FIRE後の老後資金」として位置づけ、手元資金とのバランスを考えた設計が必要です。
年収800万円世帯の支出と貯蓄可能額
年収800万円というと高所得層に分類されがちですが、実際の家計事情にはそれほど余裕があるとはいえません。手取りベースでは、年収は600~650万円程度です。ここから住宅ローン、教育費、生活費、保険料、税金などを差し引くと、年間で自由に貯蓄・投資に回せる金額は年間で100~150万円程度にとどまるケースもあります。
夫婦が共働きかどうか、子どもの有無、持ち家か賃貸かで差は生じるものの、FIREには多くの資産が必要なため、資産形成には限界があります。FIREを目指すためには、生活コストの最適化や積極的な投資、長期的な計画が不可欠です。
iDeCoとつみたて投資枠(旧つみたてNISA)の併用戦略
FIREを本気で目指すなら、iDeCo単独では不十分です。なぜなら、60歳までは資金の引き出しが不可能なため、FIREの資金が必要になることが理由です。
そこで、つみたて投資枠との併用が効果的です。つみたて投資枠は、年間120万円までの投資に対して運用益が非課税となる制度で、より柔軟な資金運用が可能です。
iDeCoは老後資金、つみたて投資枠ではFIRE後すぐの生活費をそれぞれ活用することで、税制メリットを最大限享受しつつライフステージごとに必要な資金を確保できます。また、iDeCoの掛金は控除対象となるため、節税によって生まれた余剰資金をつみたて投資枠に回すといった運用も現実的です。
実際にシミュレーションしてみよう
仮に40歳・年収800万円の人が55歳でFIREを目指すとします。
この人が年間150万円(iDeCo月2.3万円+つみたて投資枠・その他投資)を投資に回し、年平均5%で運用できたと仮定すると、15年間で約3400万円が形成できます。ただし、生活費が年間300万円かかる場合、FIRE後30年の生活に必要な資産は約9000万円となり、大きく不足しています。
つまり、年収800万円であっても投資額や期間が限られていると、FIREの実現は困難です。支出を見直して投資額を増やしたり副収入を確保したりすることをはじめ、不動産投資を加えることでFIREの可能性を高めることは十分可能です。現実的なラインでの「セミFIRE」も視野に入れるといいでしょう。
年収800万円でもFIREは戦略次第で可能性あり
年収800万円という数字は一見高く感じますが、FIREを目指すためにはそれだけでは不十分です。iDeCoやつみたて投資枠といった制度を最大限に活用し、支出の最適化や投資による資産形成を着実に進める必要があります。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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