一人暮らしの高齢の母。年金が少なく大変そうなので扶養に入れようと思うのですが、母と「同居」しないとダメですか?

配信日: 2025.07.11 更新日: 2025.10.21
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一人暮らしの高齢の母。年金が少なく大変そうなので扶養に入れようと思うのですが、母と「同居」しないとダメですか?
高齢の親が金銭的に苦労しているのを見ると、子どもとしては「何かできないか」と思うでしょう。では、親を扶養に入れるためには親と同居しないといけないのでしょうか? また、親を扶養に入れる際の注意点やメリット・デメリットを解説します。
仁木康尋

日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

人事部門で給与・社会保険、採用、労務、制度設計を担当、現在は人材会社のコンサルトとして様々な方のキャリア支援を行う。キャリア構築とファイナンシャル・プランの関係性を大切にしている。

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親を扶養に入れるための要件

扶養に関する取り扱いは、税法上のものと社会保険上のものがあります。
 

【税法上における扶養家族の要件】

所得税・住民税ともに以下の3点です。
 
(1)生計を一にしていること
扶養する人と親が、生計を一にしていることが必要です。親と同居していない場合でも、いつも生活費などを仕送りしているケースにおいては、生計を一にしていると認められます。
 
ここで「生計を一にする」とはどのような状態をさすのか? その定義に触れるために、国税局のホームページの解説を以下に引用します。
 
「生計を一にする」とは、同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居をともにすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
 
なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます(所基通2-47)。
(出典:国税庁「No.1180 扶養控除」)
 
(2)親の年間合計所得金額が48万円以下であること
給与収入のみの場合は年収103万円以下、年金収入のみの場合は、65歳未満の方は年収108万円以下、65歳以上の方なら年収158万円以下の場合です。
 
(3)親が個人事業主の事業専従者ではないこと
親が青色申告者の事業専従者として給与を受けていない、もしくは、白色申告者の事業専従者ではないことが必要です。
 

【社会保険における扶養家族の要件】

全国健康保険協会(協会けんぽ)の例で確認をしていきます。
 
(1)主として被保険者に生計を維持されていること
扶養する人に親が生計を維持されていることが必要で、必ず同居している必要はありません。
 
(2)親の収入が一定額以下であること 
《親と同居している場合》
親の年収130万円未満(※1)であり、親の年収が被保険者の2分の1未満であること
 
《親と別居している場合》
親が年収130万円未満(※1)であり、親の収入が被保険者からの仕送り額より少ないこと
(※1)親が60歳以上の場合、もしくは障害厚生年金を受けられる程度であるとされる障害者の場合は年収180万円未満
 
(3)親の年齢が75歳未満であること
75歳以上になると後期高齢者医療制度に加入するため、扶養の対象とはならなくなります。
 

まとめ

税法上も社会保険上も親を扶養に入れるために、同居する必要はないことが確認できました。
 
最後に、税金面でのメリットについて確認をしておきます。所得税では、48万円(同居の場合は58万円)の所得控除を受けることができます。所得税率が20%の方の場合には9万6000円(同居の場合は11万6000円)の税金の負担を軽減できます。
 
住民税の場合、親が70歳未満の場合は33万円の所得控除を受けることができ、親が70歳以上の場合は38万円(同居している場合45万円)の所得控除を受けることができます。住民税(所得割の部分)の税率は10%ですので、所得控除33万円の場合は3万3000円の税金の負担を軽減できます。
 
一方注意していただきたいのは、社会保険上親が支払う介護保険料と、高額療養費の自己負担限度額が高くなる可能性があることです。
 
介護保険料では、被扶養者になることで子の収入も保険料に反映されるため所得段階が上がり、介護保険料が高くなってしまうことが考えられます。
 
高額療養費の自己負担限度額は健康保険加入者の所得が影響します。そのため、子の所得しだいでは自己負担限度額を引き上げてしまうことになりかねません。
 
以上のように、メリットだけでなく、親の医療費負担の増加も考えて判断をすることが大切です。
 

出典

国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
全国健康保険協会(協会けんぽ) 被扶養者とは?
全国健康保険協会(協会けんぽ) 高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)
全国健康保険協会(協会けんぽ) 被扶養者に関する給付
東京都主税局 個人住民税
練馬区 65歳以上の方の介護保険料の決め方
中野区 介護保険料の決め方と納め方
 
執筆者 : 仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント

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