夫が定年後も「再雇用」で働くと言っています。「勤務延長制度」も選択肢になると思うのですが、どちらの制度が「一般的」なのでしょうか?
そこで今回は、定年後の「再雇用制度」と「勤務延長制度」の違いについて解説します。企業の導入状況についても解説しますので、高年齢者就業確保措置の継続雇用制度を活用したい人は参考にしてください。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
定年後の「再雇用」と「勤務延長制度」の導入状況
厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査の概況」によると、一律定年制を定めている企業で勤務延長制度や再雇用制度を導入している企業の割合は、表1の通りです。
表1
| 勤務延長制度または再雇用制度を導入していない企業 | 5.8パーセント | |
| 勤務延長制度または再雇用制度を導入している企業 | 94.2パーセント | |
| 制度別 | 勤務延長制度のみ | 10.5パーセント |
| 再雇用制度のみ | 63.9パーセント | |
| 両制度併用 | 19.8パーセント | |
※厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」を基に筆者作成
表1より、勤務延長制度または再雇用制度を導入している企業は94.2パーセントと高いものの、勤務延長制度と再雇用制度の両方を併用している企業割合は19.8パーセントとなっています。
制度別にみると、勤務延長制度を導入している企業は10.5パーセントに対し、再雇用制度を導入している企業が63.9パーセントにのぼることから、再雇用制度の方が一般的であることが分かります。
定年後の「再雇用制度」と「勤務延長制度」の違い
高年齢者就業確保措置の継続雇用制度は、労働条件賃金などを柔軟に選択して働ける「再雇用制度」と、定年後も変わらずに働き続けられる「勤務延長制度」があります。各制度についてそれぞれ解説します。
「再雇用制度」とは
再雇用制度は、定年退職前とは異なる雇用形態で再び働く仕組みのことです。一般的に、定年まで正規雇用されていた人は契約社員や嘱託社員、パートタイマー、アルバイトなどの雇用形態で再雇用となります。
原則、定年退職日の翌日から雇用し、雇用期間の空白を作らないこととされているため、定年退職後から数ヶ月相当期間が経過した後の再雇用は認められない可能性がある点に注意が必要です。
再雇用制度は、本人の希望や企業の状況に合わせて、勤務時間や勤務日数などの労働条件を柔軟に変えられます。しかし、再雇用の内容が定年前の役職や役割から変更されやすく、賃金が下がる傾向があることが一般的です。
そのため、定年退職者本人の希望と会社の提示条件が合わない場合、不満が生じてモチベーションが低下する可能性があります。
「勤務延長制度」とは
勤務延長制度は、定年退職日以降も同じ雇用形態で働き続けられる仕組みのことです。雇用形態、役職、賃金、仕事内容などもほぼ変わらず、勤務期間が延長されるイメージで、本人がモチベーションを維持しやすいメリットがあります。
そのため、勤務延長した社員と再雇用した社員に不公平感が生じる可能性があります。会社にとっても全社員を勤務延長制度の対象にすると、人件費が増大したり、世代交代が進まない問題が発生したりするおそれもあるでしょう。
定年後に導入される制度は「勤務延長制度」よりも「再雇用制度」の方が一般的
勤務延長制度を導入している企業は10.5パーセントに対し、再雇用制度を導入している企業が63.9パーセントにのぼることから、再雇用制度の方が一般的なようです。
定年後の「再雇用制度」は、本人の希望や企業の状況に合わせて、勤務時間や勤務日数などの労働条件を柔軟に変えやすい傾向があります。しかし、定年前の役職や役割から変更になり、定年退職予定者のモチベーションが低下するおそれもあります。
一方「勤務延長制度」は、定年退職日以降も同じ雇用形態で働き続けられる仕組みです。雇用形態や役職、賃金、仕事内容もほぼ変わらないため、シニア社員の不満が生じにくいメリットがあります。
各企業で定年引き上げや定年制の廃止措置を講じる努力が求められていることから、70歳までの継続雇用制度を有効に活用していきましょう。
出典
厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー