夫が今年の秋に「定年退職」です。「住民税」は「来年ドンと来る」と聞いたのですが、それ以外に「お金を確保」しておく項目はありますか?
今回は、定年退職後にかかる主な税・保険料と、今からできる備えについて整理します。
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目次
退職して収入が減るのに翌年の住民税は高いままの理由
定年退職後に戸惑いやすいのが、翌年に届く住民税の納付書です。「すでに仕事を辞めたのに、なぜこんなに高いのか」と感じる方も多いのではないでしょうか。
その理由は、住民税が「前年の所得」に基づいて計算されるという仕組みにあります。具体的には、1月から12月までの年間所得をもとに税額が決まり、翌年6月から支払いが始まります。
会社員時代は、住民税が給与から天引き(特別徴収)されていたため、意識する機会は少なかったかもしれません。しかし、退職後は天引きがなくなり、自分で支払う「普通徴収」へ切り替わります。
例えば2025年に退職した場合、その年に受け取った給与や賞与に対する住民税は、2026年に支払うことになります。収入が年金中心になる中で、現役時代と同水準の住民税を納める必要が生じるため、金額によっては負担を感じることもあるでしょう。
なお、退職金にかかる住民税については、通常は所得税と同様に退職時に源泉徴収される仕組みとなっています。そのため、翌年に届く住民税の納付書には、退職金ではなく、給与や賞与など退職前の収入分が反映されることになります。
住民税だけじゃない!定年後に自分で納める社会保険料とは
定年後に自分で支払う必要があるのは、住民税だけではありません。社会保険料も大きく変わり、負担の中身や支払い方法に注意が必要です。主に「国民健康保険料」と「国民年金保険料」の2つを確認しておきましょう。
まず、会社を退職すると、一般的には会社の健康保険を脱退することになります。そのため、多くの方は市区町村が運営する「国民健康保険(国保)」に加入します。
この保険料も住民税と同様に、前年の所得に基づいて計算される仕組みです。その結果、退職翌年の国保料は高額になるケースが見られます。収入が減った後に高い保険料を支払う必要があるため、注意が必要です。
一方、退職後も会社の健康保険を最長2年間継続できる「任意継続被保険者制度」も選択肢の1つです。在職中は保険料の半額を会社が負担していましたが、任意継続後は全額自己負担になります。
ただし、扶養家族がいる場合や保険料の算定基準によっては、国保よりも割安になることもあるため、両方を比較検討することが重要です。具体的な金額は、会社の健康保険組合と市区町村窓口の双方で確認しましょう。
配偶者が60歳未満なら国民年金の支払いが必要な場合も
さらに注意したいのが、国民年金保険料です。60歳以上であれば原則支払いの義務はありませんが、扶養している配偶者が60歳未満の場合は注意が必要です。
これまで「第3号被保険者」として保険料が免除されていた配偶者も、退職に伴って「第1号被保険者」へ切り替わり、保険料の納付が必要になります。このように、家族構成によっても支出が増えるケースがあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
退職後に慌てないために!今からできる3つの資金準備
ここまで、定年後に発生する税金や保険料について整理してきました。「予想以上に負担が大きそう」と感じた方もいるかもしれませんが、事前に備えておけば安心です。ここでは、今からできる3つの対策を紹介します。
1つ目は、「納税・保険料のための資金を確保しておくこと」です。
退職金や最後の給与、賞与などから、翌年の住民税や社会保険料に充てる分を別口座などで管理しておくと、支払いのタイミングで慌てずに済みます。目安としては1年分の支出を想定しておくと安心です。
2つ目は、「負担額の目安をあらかじめ把握すること」です。
住民税は源泉徴収票の年間所得をもとに、おおよその金額が予測できます。国民健康保険料は、市区町村のホームページにシミュレーション機能がある場合も多いため、そちらを活用して試算してみましょう。具体的な金額を把握しておくことで、計画的に備えることができます。
3つ目は、「定年後の収入に合わせた家計に見直すこと」です。
公的年金の見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。その金額に応じて生活費を見直し、固定費の削減や支出の優先順位を整理しておくと、退職後の暮らしがよりスムーズになります。夫婦で家計について話し合っておくのも有効な手段です。
定年前に備えておけば、安心して新しい生活を始められる
今回は定年後すぐに発生する「住民税」や「社会保険料」など、家計に大きく影響する支出について解説しました。
一方で、退職金にかかる税金や、持ち家がある場合の固定資産税などは、個人の状況によって異なるため、必要に応じて別途確認しておくと安心です。
退職後は、自由な時間が増える一方で、これまで会社が代行していた支払いを自分で管理していく必要があります。今回ご紹介したポイントを参考に、余裕を持って準備を進めておくことで、安心してセカンドライフをスタートできるでしょう。
出典
東京都 主税局 個人住民税
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー