「年金月25万円」でも赤字!? 老後夫婦が直面する貯金が減り続ける理由とは
総務省の2024年家計調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では月額約3万4058円の赤字、単身者無職世帯では月額約2万7817円の赤字が生じています。この状況が続けば、貯蓄を取り崩し、最終的には「老後破産」のリスクも高まります。では、老後の赤字家計に直面したとき、私たちはどう対応すべきなのでしょうか。
今回は、老後の赤字家計を乗り切る方法を解説します。
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー
立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。
現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。
老後の家計はなぜ赤字になるのか
65歳以上の夫婦のみで無職世帯の平均的な家計を見ると、月々の収入は約25万2818円(うち年金等の社会保障給付は約22万5182円)に対し、支出は約28万6877円となっています。この差額である約3万4058円が毎月の赤字となり、年間では約40万8696円の赤字が生じることになります。
この赤字の背景には、収入の減少と生活費の高止まりがあります。定年退職後は大幅に収入が減りますが、急に生活水準を下げることは難しく、また、物価の上昇や医療費の増加などで支出は増える傾向にあります。これらの要因により、老後の家計は赤字に陥りやすいといえるでしょう。
老後の赤字家計を乗り切るための対策
1. 生活費の見直しと節約
老後の赤字を減らすためには、まず支出を減らす工夫が必要です。特に効果的なのは固定費の削減です。通信費は格安SIMへの乗り換えや光回線の見直しで大幅に節約できます。保険も必要な保障だけに絞ることで、毎月の支出を抑えられます。
また、買い物の回数を減らしたり、ネットスーパーを活用したりすることで、衝動買いを防ぎ食費を節約できます。外食を控え自炊を基本にすることも効果的です。省エネ家電への切り替えや新聞購読の見直しなど、小さな節約の積み重ねが大きな効果を生みます。
2. 住まいの見直し
住居費は大きな固定費です。老後のライフスタイルに合わせた住まいの見直しも検討しましょう。より家賃の安い地域やコンパクトな物件への引っ越しを検討する価値があります。持ち家の場合、広すぎる家なら売却して小さな家に住み替えたり、一部を賃貸に出したりする方法もあります。
3. 収入を増やす工夫
支出を減らすだけでなく、収入を増やす方法も考えましょう。健康状態が許せば、65歳以降も働き続けることで年金に上乗せする収入を得ることができます。フルタイムが難しくても、パートタイムや短時間の仕事、趣味を生かした副業など、年金収入を補完する収入源を確保することが重要です。
4. 公的支援の活用
収入が一定水準以下の場合、生活保護や各種減免制度など公的支援を受けられる可能性があります。市区町村の福祉課や地域包括支援センターに相談し、利用できる制度を確認しましょう。医療費の自己負担額の軽減や介護保険料の減免、住民税の非課税措置など、さまざまな支援制度があります。
老後破産を避けるための心構え
老後の赤字家計を乗り切るには、現役時代からの準備と心構えが重要です。家計管理を習慣化し、目標を設定して使途不明金をなくすことから始めましょう。収入に見合った生活スタイルに調整する「生活のダウンサイジング」も必要です。また、医療費の増加を防ぐため健康維持に努めることも大切です。
老後の赤字家計は決して珍しいことではありませんが、事前の準備と工夫次第で乗り切ることができます。早めの対策を講じ、柔軟に生活スタイルを調整することが、安心な老後生活への鍵となります。
年金だけでは足りない現実を直視し、今からできる対策を着実に進めていくことが重要です。老後の生活は長期にわたるため、短期的な節約だけでなく、持続可能な生活設計を心がけましょう。そして何より、お金だけでなく健康や人間関係も大切にすることで、豊かな老後を送ることができるはずです。
まとめ
老後の年金生活では毎月赤字になるケースが多く、65歳以上の夫婦無職世帯では平均月3万4058円の赤字が生じています。この状況を乗り切るには、固定費の見直し、住まいの再考、収入源の確保、公的支援の活用が重要です。早めの対策と柔軟な生活スタイルの調整が、安心できる老後への鍵となります。
出典
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
執筆者 : 廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー