老後資金「2000万円」を貯めている人は実際にどれくらいいる?50~60代の平均貯蓄額と、40代からでもできる「賢い貯め方」とは
「老後2000万円問題」は、金融庁が発表した報告書を基に話題にされるテーマで、高齢夫婦のみの無職世帯の場合、「老後数十年間で2000万円ほどが不足する可能性がある」と試算したものです。
しかし2000万円は大金であり、老後生活に入る人すべてが、実際にそれだけの老後資金を保有しているわけではありません。
この記事では、50~60代の平均貯蓄額がどれくらいあるかをご紹介します。また40代から始めたい「賢い貯蓄術」も解説します。
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50~60代(二人以上世帯)の平均貯蓄額
金融広報中央委員会の「知るぽると」が公表する「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」によると、50~60代の金融資産保有額状況は表1の通りです。
表1
| 金融資産保有額 | 全体に対する割合 50代 |
全体に対する割合 60代 |
|---|---|---|
| 100万円未満 | 12.5% | 7.4% |
| 100~200万円未満 | 8.9% | 5.7% |
| 200~300万円未満 | 5.2% | 5.5% |
| 300~400万円未満 | 5.4% | 3.8% |
| 400~500万円未満 | 5.2% | 2.4% |
| 500~700万円未満 | 7.7% | 9.2% |
| 700~1000万円未満 | 7.5% | 8.4% |
| 1000~1500万円未満 | 12.2% | 8.7% |
| 1500~2000万円未満 | 5.8% | 6.8% |
| 2000~3000万円未満 | 7.4% | 12.0% |
| 3000万円以上 | 15.5% | 26.0% |
| 平均 | 1611万円 | 2588万円 |
| 中央値 | 745万円 | 1200万円 |
出典:金融広報中央委員会 知るぽると「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」を基に筆者作成
2000万円以上の金融資産を有している世帯は、50代で22.9%、60代で38.0%と、どちらも半数を下回る結果でした。
また中央値は50代で745万円、60代で1200万円であり、老後資金2000万円は多くの世帯にとって貯蓄するのが大変な額であるようです。
ただし50代の世帯については、定年を迎えるまで金融資産がまだ増えていく可能性があります。そのため表1で2000万円未満の世帯でも、いずれ2000万円以上に到達するかもしれません。
40代から始めたい賢い貯め方とは
老後資金に向けての準備は早ければ早いほどよいですが、若いうちはなかなか余裕がないと感じるかもしれません。
しかし遅くとも定年までさほど遠くない40代には、定年後の生活費を見据えた準備をしたいところです。ここからは具体的な準備方法をご紹介しましょう。
将来の収支状況を予測する
生活資金を効率よく増やすには、まず現在の家計収支を把握しましょう。どの費目にいくら支出しているかを見て、収支のプラス、マイナスを明確にします。費目ごとに書き分けると、意外なところで出費がかさんでいることに気づけるかもしれません。
保有している資産も把握しておきます。貯蓄額のほかに、不動産や貴金属などの時価も含めましょう。
これらの情報を表などに整理したら、次に将来の収支状況を予測していきます。老後に向けて減っていく支出や増える支出、増えていく収入などを試算していきましょう。
ポイントは、現在の収支バランスを基に、将来の生活資金が枯渇しないかおおよその予想をしておくことです。例えば、支出に関しては住宅ローンの残債は減り、医療介護費が増えるかもしれません。リフォームや車の買い替えなど、大きな支出があるイベントも含めておきましょう。
また、収入に関しては、給料が年功序列で増えていく企業であれば、月ベースの手取りが何万円か増えている可能性もあります。退職金も考慮できるでしょう。定年後に受給できる年金額を、日本年金機構の「ねんきんネット」などで試算するのも有効です。
なお「老後2000万円問題」はあくまで金融庁の試算のひとつであり、すべての世帯が2000万円必要とは限りません。あくまで、自分の世帯における収支バランスをシミュレーションすることが大切です。
支出を減らし収入をアップする対策を講じる
もし現在の収支がマイナスかマイナスに傾きつつある場合は、改善策を講じます。具体的には、以下のポイントを心がけましょう。
・収入アップを目指す
・支出を減らす
・資産運用も視野に入れる
状況が許すのであれば、資格を取得して手当を受けられるようにしたり、残業手当を増やしたりできます。家族にもパートやアルバイトなどを始めてもらい、世帯収入を増やすことも一計です。
収入は一朝一夕で増えるわけではないため、収入を増やす手段を考えるのと同時に支出を見直すことも大切です。水道光熱費の節約やあまり使っていないサブスクリプションサービスの解約、保険やローンの見直しなど、取り組めることはさまざまあります。
現在の日本は金利が低く、預貯金につく利息はあまり期待できません。そこで「個人型確定拠出年金(iDeCo)」や「NISA」などの税制優遇制度を活用し、投資などを通じて金融資産を徐々に増やしていく方法を検討してもよさそうです。
50~60代で2000万円保有している人の割合は少数
「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、50~60代で2000万円の金融資産を有している世帯は少数派です。多くの世帯はそれほどの額を有していません。
もちろん、世帯によって収支状況は異なるため、老後に必ずしも2000万円を準備する必要はありませんが、病気や事故など不測の事態があるかもしれない点を踏まえると、早いうちから老後に向けた資金をできる限り蓄えることが大切です。
収入の増加、支出の減額、資産運用の3点を軸に、賢く老後の生活資金を増やしていきましょう。
出典
金融広報中央委員会 知るぽると 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降) 各種分類別データ(令和5年) 統計表の番号3 金融資産保有額(金融資産保有世帯)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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