「親は他界、兄弟なし」身寄りなし中高年が“アパートの契約”を断られる現実と「賃貸契約の壁」とは
しかし、単身で暮らしている中高年で、「親は他界し、兄弟姉妹もいない」、「頼れる人がいない」といったように、連帯保証人が立てられない場合はどうしたらいいのでしょうか。連帯保証人がいないと、入居の条件を満たすことができず、契約を断られてしまうのでしょうか。
本記事では、身寄りのない人が賃貸契約をする場合の壁と、その対策について解説します。
ファイナンシャルプランナー2級
目次
「身寄りなし」の人は賃貸契約が難しいの?
一般的な賃貸契約では、緊急連絡先や連帯保証人を求められることが多くあります。連帯保証人とは、借主が家賃を滞納したときに、借主の代わりに支払いをする義務を負う人のことです。家賃の滞納は、貸主側からすると経営上の大きなリスクになります。
そこで連帯保証人を立てることで、家賃未回収のリスクを減らすという狙いがあるのです。
また、借主が高齢の単身者の場合は、急な病気や死亡などのリスクがあると考えられることが多く、大家や不動産管理会社が「何かあったときに連絡を取れる身内がいないと困る」と判断されることがあります。
つまり、大家にとっては、万が一に備えて「身寄りのない人」はリスクが高いと見なされ、結果的に入居審査が通らないケースがあるのです。
保証会社を利用することで、身寄りのない人でも契約ができる
賃貸の連帯保証人には、貸主や不動産会社の判断によりますが、安定した収入のある人や、近しい親族がなるのが一般的です。しかし、親が高齢であるかすでに亡くなっており、兄弟のいない中高年にとっては、保証人を用意することが難しいことがあります。
近年では、保証人の代わりに「家賃保証会社」の利用を求める物件が増えています。保証会社を利用することで、万一の家賃滞納に備えることができ、身寄りがない人でも契約しやすくなるのです。
この「家賃保証会社」は、一定の保証料を支払うことで、借主の家賃滞納、原状復帰費用、訴訟費用、残置撤去費用などの費用を借主に代わって立て替えるといった保証をしてくれます。ただし、家賃保証会社を利用するうえでは、審査が必要となっており、高齢者や生活保護受給者、外国人は審査に通りにくいのが現状です。
身寄りのない人が家賃契約をするうえでの対策とは
では、身寄りがない場合、どのようにして賃貸物件を確保すればよいのでしょうか。主な対策として、以下のような方法があります。
民間の身元保証サービスを利用する
高齢者が賃貸の契約に難色を示される理由のひとつに、「緊急連絡先」となる親族がいないという点が挙げられます。このような場合は、民間の「高齢者サポートサービス」を利用することもひとつの方法です。
基本的には、日常生活の支援、入院・施設入居時の保証人や亡くなったあとの身元引受を行ってくれるサービスですが、「家賃保証会社」との契約と合わせて利用すれば、貸主によっては賃貸契約ができる可能性もあるでしょう。
自治体のサポートを活用する
一部の自治体では、高齢の単身者向けに住まいの確保を支援する窓口を設けており、社会福祉協議会や地域包括支援センターなどで相談をすることができます。また、地域のNPOなどでも高齢者の住まい探しを支援しているケースもあるため、まずは自治体の窓口に相談してみましょう。
UR賃貸住宅など、保証人不要の物件を探す
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)の賃貸住宅や一部の公的住宅では、入居時の保証人が不要な物件があります。こうした物件は、年齢や身寄りの有無に関係なく利用できるケースがあるので検討してみるとよいでしょう。
ただし、UR賃貸住宅の場合、保証人が不要である代わりに本人の収入や貯蓄額といった条件をクリアする必要があるので、条件をよく確認しておくことが大切です。
賃貸契約をするには制度をうまく利用しよう
身寄りのない中高年にとって、賃貸契約をするのは、保証人や緊急連絡先の確保の点でハードルが高い場合があります。賃貸契約をしたい人にとっては、厳しい条件に感じられますが、貸主である大家や不動産会社からすれば、リスクを回避するという意味で仕方ないのかもしれません。
しかし、さまざまな制度やサポートサービスを利用したり、保証人不要の物件を探したりすることで、賃貸の契約をすることができるはずです。自分に合った制度やサポートを上手に活用して、快適な住まいを見つけましょう。
出典
国土交通省 家賃債務保証の利用状況
消費者庁 「身元保障」や「お亡くなりになられた後」を支援するサービスの契約をお考えのみなさまへ
内閣府 NPO法人ポータルサイト 特定非営利活動法人高齢者住まい支援センター
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級