定年退職まであと10年! 物価がかなり上がっているので「老後2000万円」では足りない? 必要額はどのくらいでしょうか?

配信日: 2025.07.26 更新日: 2025.10.21
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定年退職まであと10年! 物価がかなり上がっているので「老後2000万円」では足りない? 必要額はどのくらいでしょうか?
2019年に話題となった「老後資金2000万円問題」は、根拠となった報告書が後に撤回されたものの、国民が肌感覚で感じていたことを具体的な数字として挙げたことから、深く印象に残っている人も多いでしょう。
 
この報告書が出されたころ、日本経済においてはデフレ脱却が取りざたされていましたが、現在は急激なインフレが進んでいます。インフレ下では貨幣価値が低下しますが、老後資金の必要額はどのように変化しているのでしょうか?
菊原浩司

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

http://conserve-investment.livedoor.biz/

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インフレを経て老後資金はどうなったのか?

老後資金2000万円問題の報告書は、2017年の家計調査報告をベースに作成されています。
 
2017年における65歳以上の夫婦のみの無職世帯の収入は20万9198円、支出は26万3717円で、不足額は月5万4519円となります。これが30年続くと合計不足額は1962万6840円になります。これが「老後資金2000万円」の根拠といわれていました。
 
2024年の統計では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の収入は25万2818円、支出は28万6877円に変化しました。不足額は3万4059円で、30年の合計不足額は1226万1240円となっています。
 
インフレが進んだのに、老後資金の不足額が減少したのはなぜでしょうか? その答えは、インフレに対応した家計収支の変化にあります。
 

インフレの影響で家計収支が変わってきている

老後資金の不足額は約2000万円から約1200万円に減少しましたが、これは支出の減少ではなく、収入の増加によるものです。
 
2017年と比べると、公的年金などの社会保障給付は月額19万1880円から月額22万5182円に増額されています。それ以外の収入も2024年は月額2万7636円と、2017年の月額1万7318円から約1万円増加しており、老後も働き続ける方が増えたと推測されます。
 
次に支出の状況を見ると、2017年の支出額は月額23万5477円でしたが、2024年は月額25万6521円に増加しています。支出額の増加の原因は食料品が最も多く、月額6万4444円から月額7万6352円となり、約1万2000円の支出増となっています。
 
一方で教養娯楽費、交通・通信費は横ばいとなっており、国民は支出増加に対応するために遊興費などで節約していることが伺えます。
 

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まとめ ~老後資金は減少傾向だが、個別性が強いので、確度の高い試算が重要~

昨今続く物価上昇は、老後の生活費の総額に大きな影響を及ぼします。現在の統計上の必要額は約1200万円ですが、これは家計が物価高などに対応して収入を増加させ、支出の削減に務めたためといえます。
 
また、家計は個別性が高く、統計上の数字では測れないことがあります。
 
例えば、住居費の統計上の金額は、2024年時点で月額1万6432円です。これは「少ない」と感じる方も「多い」と感じる方もいるのではないでしょうか。
 
住居費の場合、持ち家で住宅ローンが残っていない方なら、老後は修繕費程度で済ますことができます。しかし、賃貸物件や住宅ローンが残っている場合は、現役時と変わらない住居費が必要になるので、支出額は大きく増加します。
 
物価高がこの先も続き、定年退職まで時間がない場合、貯蓄を増やすなどして老後資金の変化に対応するのは難しい場合があります。
 
老後資金に懸念があるのであれば、貯蓄を増やすだけでなく、自身の収入と家計の状況を見返して定年退職後の収入源を探る・支出を削減するなどして、多面的に老後資金の準備を進めていくことが大切です。
 

出典

金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年) 家計の概要 II 世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)
 
執筆者 : 菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表

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