70代の母が骨折して在宅で“介護”が必要に…。ベッドや手すりなども用意する必要がありそうなのですが、介護にかかる「初期費用」はどのくらいですか?
特に、介護ベッドや手すりといった福祉用具、住宅の改修など、在宅介護を始めるにあたって必要な備えには、どれくらい費用がかかるのでしょうか。本記事では、介護の初期費用の目安や費用を抑えるための制度や選択肢について、解説していきます。
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目次
介護ベッド・手すりなど必要な備品にかかる費用とは?
まず、多くの家庭で必要となるのが「介護ベッド」です。骨折後はベッドでの安静が長くなることもあり、寝返りがしやすい電動タイプのベッドが選ばれる傾向にあります。ベッドの高さを調整できる機能があると、立ち上がりや介助もスムーズに行えるため、安全性と介護の負担軽減の両面で重要な役割を果たします。
レンタルを利用する場合、介護保険を利用すれば自己負担は月額1000円前後が多く、全額自費の場合は月額1万円前後となります。
設置や搬入費用は、サービスに含まれる場合が多いですが、5000〜1万円程度かかる場合があるので事前の確認が必要です。購入する場合は、機能やメーカーによって10万円未満~70万円以上するものまで幅広く、費用は大きく異なります。
そしてもう一つ、見落とせないのが「手すり」の設置です。手すりはベッドの周辺やトイレ、浴室、玄関の段差などに設置することで、本人の転倒リスクを大きく減らし、自立した動作を支える重要な備品です。
取り付けタイプの手すりは比較的安価で、数千~1万円程度から用意できますが、壁に固定するタイプや住宅改修を伴う場合は数万円規模の費用がかかることもあります。
これらの備品は、本人の状態や生活環境に応じて適切な種類を選ぶ必要があるため、福祉用具専門相談員に相談することで、無駄な出費を避けることができます。
介護保険が適用できる場合とできない場合の費用比較
このように、在宅介護の準備にはある程度の出費が必要ですが、介護保険制度を利用できる場合は、自己負担額が大きく抑えられます。
例えば、介護ベッドは介護保険の「福祉用具貸与」の対象になっており、要介護2以上の認定を受けていれば、利用料の1〜3割の負担でレンタルできます。月額1万円のレンタル料でも自己負担は1000〜3000円程度に抑えられます。要支援1・2や要介護1の方は原則として対象外ですが、例外的に給付できる場合もあります。
また、「住宅改修費の支給」という制度もあり、最大20万円の工事費に対し、自己負担1〜3割が支給されます。これを活用すると、手すりの設置や段差解消なども、実質的な自己負担は数千~数万円に抑えられるケースが多いです。
ただし注意したいのは、要介護認定を受けていない場合や、要支援1・2、要介護1といった軽度の認定では、車いすや介護ベッドなどの一部用具のレンタルは原則対象外となることです。対象外の場合はレンタルや住宅改修が自費負担となるため、10万円を超える費用が必要となるケースもあります。
レンタルと購入、どちらが得か?
介護ベッドや福祉用具には、レンタルと購入の2つの選択肢があります。どちらがよいかは、介護の期間や介護保険の利用状況によって変わります。
短期間(数ヶ月〜1年以内)の介護が見込まれる場合は、レンタルのほうが断然お得です。特に、介護保険適用の場合のレンタル料は月1000〜3000円程度なので、購入するよりもレンタルのほうが割安となるケースが多いです。レンタルを利用することで費用が抑えられ、必要がなくなれば返却できるため無駄がありません。
一方で、3年以上の長期介護が想定される場合には、累積のレンタル費用が購入費を上回ることもあります。例えば、月1万円のレンタル費を3年間支払えば、36万円になります。購入費用と変わらなくなる可能性もあるため、長期利用を前提とするなら、購入を検討する価値もあります。
また、介護保険を利用できるかどうかも重要なポイントです。介護保険が適用されていない状況では、レンタルの自己負担が高くなるため、購入のほうが経済的というケースもあります。逆に、介護保険適用であればレンタルのほうが圧倒的に割安です。
初期費用の目安を知って負担を抑えるための工夫をしよう
在宅介護の初期費用は、介護ベッドや手すりなどの備品費用、住宅の簡易改修、さらに必要に応じておむつや介助用具などの日用品も含めると、軽微な準備であれば10~30万円程度が目安となります。
しかし、実際には50〜70万円程度かかるケースも多く、状況によってはさらに費用がかかるケースもあります。ただし、介護保険制度を活用できれば、これらの自己負担額は大きく軽減され、数万円以内に抑えられるケースも多くあります。
費用の負担を抑えるためには、まず介護認定を早めに申請し、介護保険サービスを最大限に活用することが重要です。
そのうえで、福祉用具は購入ではなくレンタルを基本とし、必要性が高く、長期的に使うものについては購入を検討するという考え方が有効です。また、福祉用具の業者によって料金が異なるため、複数社に見積もりを取って比較するのもおすすめです。
さらに、自治体ごとに実施されている住宅改修費や日用品支援の助成制度を活用すれば、家計への負担をさらに抑えることができます。家族にとっても大きな変化となる在宅介護ですが、制度やサービスを上手に取り入れれば、安心して支え合える環境づくりは十分に可能でしょう。
出典
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 どんなサービスがあるの? -福祉用具貸与
江東区 介護保険住宅改修費の支給
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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