「60歳以降」も働く場合、給料が下がると最大「10%」が補てんされる「高年齢雇用継続給付」はどんな制度?
このような社会情勢を背景に設けられた制度が、「高年齢雇用継続給付」です。今回は、高年齢雇用継続給付制度の概要や、活用のメリットなどについてまとめました。
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目次
高年齢雇用継続給付とは?
高年齢雇用継続給付は、高齢者の所得を支援するための制度です。その目的は、60歳になったときと比較して賃金が下がった場合、減少分を一部補てんし、高齢者の継続的な就労を促進することです。
近年では「高年齢者雇用安定法」の改正などの影響もあり、60歳の定年後も継続雇用制度により働ける企業が多くなっていますが、その際に給料がそれ以前よりも下がるケースも考えられます。この制度は、賃金低下による生活への影響を緩和するために設けられました。
制度は雇用保険法に基づいており、受給者の賃金と以前の賃金の差額に応じて、最大で賃金の10%(令和7年3月31日までに資格を満たした場合、最大15%)が支給されます。
高齢者の就労意欲を維持し、経済的な安定を図ることで、労働力の確保と高齢者の生活安定を両立させる重要な制度といえるでしょう。
高年齢雇用継続給付を受給するための条件
高年齢雇用継続給付を受給するためには、表1の要件を満たす必要があります。
表1
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 年齢要件 | 60歳以上65歳未満 |
| 賃金要件 | 60歳時点の賃金月額と比較して、75%未満に低下した 支給対象月の賃金が支給限度額未満(※1)である |
| 雇用要件 | 雇用保険の被保険者期間が5年以上 |
※厚生労働省 都道府県労働局 公共職業安定所(ハローワーク)「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」を基に筆者作成
高年齢雇用継続給付の手続きは、原則として事業主が行います。
(※1)厚生労働省「毎月勤労統計」発表の平均額を基に、毎年8月1日に改定
支給対象となる賃金の範囲
支給対象となる賃金月額の計算方法は、次の通りです。
賃金月額=(60歳を迎えるまでの6ヶ月間の総支給額(賞与除く)÷180)×30
支給額は、60歳時点の賃金月額と、60歳以降の各月の賃金で算出します。表2は、令和7年4月1日以降の支給率をまとめたものです。
表2
| 賃金の低下率(各月) | 支給率 |
|---|---|
| 64%以下 | 各月の賃金の10% |
| 64%超~75%未満 | 各月の賃金の10%~0%の間 |
| 75%以上 | 支給されない |
※厚生労働省 労働局・ハローワーク「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」を基に筆者作成
支給額の限度額は 37万6750円、最低限度額は2295円です(令和6年8月現在)。
高年齢雇用継続給付の注意点
高年齢雇用継続給付を受給すると、特別支給の厚生年金(在職老齢年金)との調整が行われ、年金額が一部減額(支給停止)されることがあります。これは高年齢雇用継続給付によって、年金も含めて支給される金額が逆に増えるという、いわゆる「もらい過ぎ」を防ぐための措置です。
また、高年齢雇用継続給付の支給期間は60〜65歳までの最長5年間です。この期間を超えて支給されることはありません。さらに、高年齢再就職給付金と再就職手当(失業手当の受給対象者が、早期に就職することで受け取る手当)の両方を受けることはできないため、どちらかを選ぶ必要があります。
給付金の申請は、最初の支給対象月から4ヶ月以内に行う必要があり、この期限を過ぎると受給資格を失うことになる点にも注意が必要です。
高年齢雇用継続給付は、再雇用で働く場合の賃金低下による生活への影響を小さくするための制度
高年齢雇用継続給付は、再雇用により給与が下がった場合、最大10%(令和7年3月31日までに資格を満たしていれば15%)の給付を受けることができる制度です。
賃金低下による生活への影響を軽減するだけでなく、高齢者の就業意欲を高め、引き続き働くことを促し、それによって労働力を確保する目的があります。
制度の活用にあたっては、支給要件や申請手続き、年金との関係などを十分に理解し、個人の状況に応じた最適な選択を行うことが大切です。また、制度が見直されることもあるため、最新の情報を確認しながら、適切に活用しましょう。
出典
厚生労働省 都道府県労働局 公共職業安定所(ハローワーク)高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について
厚生労働省 労働局・ハローワーク 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
厚生労働省 都道府県労働局・ハローワーク 令和6年8月1日から支給限度額が変更になります。皆さまへの給付額が変わる場合があります。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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