35年勤めた会社の退職金が「2000万円」らしいです。金額としては妥当でしょうか?
本記事では、モデル退職金額や企業規模による違い、そして退職金の受け取り方について解説します。
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退職金の水準はどれくらい?
厚生労働省 中央労働委員会の「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、事務・技術(総合職)における勤続35年のモデル退職金は以下の通りでした。なお、資本金5億円以上かつ労働者1000人以上の会社が調査の対象となっています。
・大学卒業:2539万5000円
・高校卒業:1853万2000円
また、退職金は企業規模によっても異なります。上記を大企業の退職金とすると、中小企業はどのくらいなのか見ていきましょう。
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、勤続30年と定年退職のときのモデル退職金(学校を卒業してすぐに入社した者が普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準)は表1の通りでした。ここでは、どちらも会社都合の退職とします。
表1
| 勤続30年(会社都合) | 定年 | |
|---|---|---|
| 高校卒 | 657万円 | 974万1000円 |
| 高専・短大卒 | 663万5000円 | 992万円 |
| 大学卒 | 776万2000円 | 1149万5000円 |
出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」を基に筆者作成
勤続35年の場合の退職金の額は、勤続30年と定年の間くらいが目安です。
このことから、企業規模や学歴によりますが35年勤めた企業で退職金が2000万円もらえるのは妥当もしくは多い部類に入るといえます。ただし、これらの金額はあくまでおおよその退職金水準です。企業によって退職金の相場は異なることを理解しておきましょう。
退職金を受け取る方法
退職金を受け取る方法は3つあります。ここでは、それぞれの方法について解説します。
一時金受け取り
退職時に給付金のすべてを一度に受け取れる制度が、一時金受け取りです。住宅関連の支払いや起業資金といった、まとまった資金が必要なライフイベントに活用しやすいでしょう。
税制面では「退職所得」という区分になり、勤続年数に応じた「退職所得控除」という優遇措置が受けられます。このため、同じ金額を給与として受け取る場合と比較して、税金の負担が軽くなります。また、勤務先で所定の手続きをしておけば会社が源泉徴収を行うため、個人での確定申告は基本的に発生しません。
年金受け取り
年金受け取りは、退職給付を数年間にわたって定期的に受け取るスタイルです。公的年金を補う形で、セカンドライフにおける毎月の安定した収入源を確保したい方に向いています。
この形式で受け取るお金は「公的年金等に係る雑所得」として扱われ、税金の計算時には公的年金等控除が適用されます。ただし、厚生年金といったほかの収入と合算して課税されるため、トータルの税額が一括受給より多くなるケースがある点には注意が必要です。
一時金受け取りと年金受け取りの併用
勤務先によっては、一部を一括で、残りを分割で受け取るハイブリッドな選択肢も用意されています。この方法では、当面の大きな支出に一括受給分を充てつつ、将来の安定した収入を年金受給で確保するなど、自由度の高い資金計画を立てられるでしょう。
税制上も、一括分には退職所得控除、年金分には公的年金等控除と、それぞれの優遇措置を活用できる魅力があります。ただし、最適な配分は個々の状況で異なるため、専門家に相談したり、事前にシミュレーションしたりすることが重要です。
35年間勤めた会社の退職金2000万円は妥当と考えられる
35年間勤めたうえで、退職金として2000万円を受け取れるのは、妥当といえるでしょう。ただし、退職金の額は企業規模や業種、学歴などにより大きく異なるため、自分のケースと照らし合わせて考えることが大切です。
また、退職金の受け取り方によって税金や生活資金への影響も変わってきます。自分や家族の将来設計に合わせた方法を選ぶようにしましょう。
出典
厚生労働省中央労働委員会 令和5年賃金事情等総合調査 令和5年退職金、年金及び定年制事情調査 3 退職金額 (2)モデル退職金 表11 モデル退職金額(会社都合)(7ページ)
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版) II.調査結果の概要 8.モデル退職金(34ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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