一人暮らしに不安を感じ始めた70代の母が、「サービス付き高齢者住宅」への入居を検討しています。「貯金」はどの程度あれば、審査に通りますか?
この記事では、サ高住への入居に必要な費用の目安や、入居審査で重視されるポイントについて分かりやすく解説します。
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まずは知っておきたい、「サ高住」の費用の全体像
サ高住で生活するために必要となる費用は、大きく分けて「入居時に支払う費用」と「毎月支払う費用」の2種類があります。まず、入居時に支払う費用は「敷金」や「保証金」などと呼ばれるもので、家賃の滞納などに備えるためのお金です。敷金を設定しているサ高住が大半ですが、その金額は家賃の2ヶ月から3ヶ月分が一般的です。
例えば家賃が7万円であれば、14万円から21万円程度が目安となるでしょう。この敷金は、退去時に居室の修繕費などを差し引いて返還されるケースが多いようです。また、最近では、入居時の負担を軽減するために敷金が0円の施設も増えています。
次に、毎月支払う費用です。これには主に「家賃」「共益費」「基本サービス費」「食費などの生活費」が含まれます。家賃は当然ながら、立地や居室の広さによって変動します。共益費は、共用部分の水道光熱費や維持管理費となります。
そして、サ高住の特徴ともいえる「基本サービス費」は、スタッフによる安否確認や生活相談サービスなどが含まれており、安心して生活するための重要な費用といえます。これらの月額費用の合計は、施設や地域によって幅がありますが、おおむね10万円から30万円程度が相場となっています。
入居審査で見られる「支払い能力」とは?
「いくら貯金があれば審査に通るのか」という点が最も気になるところですが、実は多くのサ高住の入居審査で重視されるのは、貯金の額そのものよりも「月々の費用を継続的に支払い続けられる能力」だといわれています。
施設側から見れば、入居者には長く安定して生活してもらいたいと考えています。そのため、一時的に多額の貯金があることよりも、年金などの毎月の安定した収入を重視する施設もあります。
審査の際には、年金の受給額が分かる書類(年金証書や振込通知書など)や、預貯金額が分かる通帳のコピーなどの提出を求められることが一般的です。
もし年金収入だけでは月額費用に満たない場合、その不足分を貯金で補っていくことができるかどうかも審査のポイントになります。例えば、毎月の不足額が5万円で、貯金が300万円あれば、単純計算で5年間は費用を支払い続けられるという証明になります。
また、本人だけでなく、子どもなどの親族を「連帯保証人」や「身元引受人」として立てることを求められるケースも多くあります。
これは、万が一支払いが滞った場合に、代わりに支払いを保証してもらうためのものです。保証人がいることで、本人の支払い能力を補強でき、審査に通りやすくなることがあります。
費用をシミュレーションしてみる
では、実際にどのくらいの費用感になるのか、具体的なモデルで考えてみましょう。ここでは、厚生労働省が発表した「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータを参考にします。
この資料によると、「老齢厚生年金」を受給している方の平均年金月額は、約14万7千円です 。この方が、月額費用の合計が18万円のサ高住に入居した場合を考えてみます。
・毎月の不足額:18万円(支出) – 14万7千円(収入) = 3万3千円
・年間の不足額:3万3千円 × 12ヶ月 = 39万6千円
この場合、年金だけでは毎月3万3千円、年間で約40万円が不足するため、この分を貯蓄から取り崩していくことになります。仮に貯金が500万円あるとすれば、単純計算で12年以上は不足分を補うことが可能です。
このように、ご自身の年金収入と、検討している施設の月額費用を当てはめて計算することで、必要な貯金額の目安が見えてきます。
もし貯金額に不安がある場合は、月額費用がより手頃な施設を探したり、生活費を見直したりすることで、収支のバランスを改善できる可能性があります。また、親族からの資金援助(贈与)なども選択肢の一つですが、その場合は贈与税についても確認しておくとよいでしょう。
貯金額だけで判断せず、継続的な収支計画で入居を目指しましょう
サ高住の入居審査に通るために「貯金がいくら以上必要」という明確な基準はありません。施設側が見ているのは、一時的な貯金の額面ではなく、年金などの収入と貯蓄を合わせて、将来にわたって費用を支払い続けられるかという継続性です。
大切なのは、まず気になるサ高住の資料をいくつか取り寄せて、費用の内訳を正確に把握することです。その上で、年金収入や貯蓄額と照らし合わせ、長期的な視点で無理のない収支計画を立ててみましょう。
もし自分一人で計画を立てるのが不安な場合は、地域の高齢者総合相談センター(地域包括支援センター)やケアマネジャー、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーなどに相談するのも一つの手です。専門家の視点から、ご自身の状況に合ったアドバイスをもらえるでしょう。
ライフプランに合った資金計画を立てることが、安心して暮らせる住まいを見つけるための最も確実な方法といえるでしょう。
出典
令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー