定年後も働き続けたいのですが、「嘱託社員」と「継続雇用」はどう違うのですか? 「年金」や「手取り」に差は出るのでしょうか?
働き方を選ぶ際には、制度の特徴とお金の影響を理解しておくことが大切です。ここでは、厚生労働省や日本年金機構の情報をもとに、両者の違いや選び方のポイントを解説します。
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嘱託社員と継続雇用の制度上の違い
「継続雇用制度」は、高年齢者雇用安定法に基づき、希望者全員を65歳まで雇用し続けるよう企業に義務付けられた制度です。
方法には、定年後に新しい雇用契約を結ぶ「再雇用制度」と、退職せずに雇用を延長する「勤務延長制度」があります。
「嘱託社員」は、このうち主に「再雇用制度」で使われる契約形態(呼称)の一つです。法律上の定義はなく、企業ごとに契約内容や待遇が異なります。多くは特定の業務や期間を対象とする有期契約です。
なお、かつては労使協定で対象者を限定できる経過措置がありましたが、2025年4月からは全希望者が対象となります。厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」(2024年)によれば、65歳までの雇用確保措置を実施している企業は中小企業で99.9%、大企業で100.0%にのぼります。
契約形態の違いが年金や手取りに与える影響
どちらの形態でも多くの場合、定年前より給与水準が下がります。給与が下がると、社会保険料は減り、在職老齢年金の減額基準にかかりにくくなります。
例えば65歳以上の場合は、賃金と年金の合計が月51万円を超えると一部支給停止されますが、給与が下がることで停止額も減る可能性があります。
また、60歳時点の賃金の75%未満となった場合に支給される「高年齢雇用継続給付金」についても、2025年4月1日以降は支給率の上限が従来の15%から10%に変更されています。
支給対象の賃金低下率によって給付率が変わる仕組みにもなっていますので、個別のケースに応じた把握が必要でしょう。
定年後の働き方を選ぶ際のポイントと注意点
定年後に「嘱託社員」や「継続雇用制度」を選ぶ際、自身の希望や生活設計にあった働き方を見極めることが重要です。各企業で待遇や契約内容が異なるため、再雇用後の仕事内容・勤務日数・給与水準・社会保険の取り扱いなどを十分に確認しましょう。
・年金や各種給付金との兼ね合い、手取り額の試算
・勤務時間や柔軟な働き方の可否
・体調や家族事情に応じた働き方への移行可能性
・契約更新の有無や、70歳以降の雇用継続の目安 など
具体的な労働条件とライフプラン全体を比較して、自分にとって最適な道を選ぶ意識が大切です。
嘱託社員と継続雇用は制度も待遇も異なる
嘱託社員は企業独自の契約で柔軟に条件が設定され、継続雇用は法律に基づき65歳まで雇用を保障する制度です。制度の違いは待遇や勤務条件だけでなく、年金や手取り額にも直結します。
定年後の生活を安定させるには、自社の制度内容を確認し、年金や給付金との兼ね合いを踏まえて働き方を選ぶとよいでしょう。
出典
厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正~「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止~
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
厚生労働省 令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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