退職金で「貯金2000万円まで増えた」という60歳の父。60代の“平均”と比べて多いですか?「持ち家・年金20万円」なら、老後は働かなくて大丈夫でしょうか?

配信日: 2025.08.21 更新日: 2025.10.21
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退職金で「貯金2000万円まで増えた」という60歳の父。60代の“平均”と比べて多いですか?「持ち家・年金20万円」なら、老後は働かなくて大丈夫でしょうか?
普段は質素に暮らし、投資にも興味のない60歳の父親から「退職金で貯金が2000万円になったから、もう働かない」と聞くと、少しうらやましく感じる人もいるかもしれません。
 
同時に両親の老後生活は大丈夫なのか心配になり、親の年代ならどれくらい資産を持っているのが普通なのか、気になることもあるでしょう。
 
本記事では、60歳代の平均的な金融資産保有額などを紹介し、2000万円の貯蓄は多いのか少ないのか解説します。また、持ち家があり、年金を世帯で月20万円受給できる場合、老後の生活収支がどうなるのかシミュレーションしますので、参考にしてください。
松尾知真

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60歳代の金融資産保有額はどれくらいなのか

まず、60歳代の夫婦世帯は、貯蓄などの金融資産をどれくらい保有しているのでしょうか? 金融経済教育推進機構が公表している「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」の二人以上世帯のデータによれば、60歳代の金融資産保有額は平均で2033万円です。
 
つまり、60歳で2000万円の貯蓄を有していれば、平均とほぼ同じということになります。
 
50歳代の平均1168万円から、60歳代は保有額が倍近くに増えており、今回の例と同様、退職金の受給が貯蓄増につながっているのではないでしょうか。
 
また、平均は2033万円ですが、中央値は650万円しかなく、世帯分布で考えた場合、貯蓄2000万円であれば、保有額はかなり多いと捉えることも可能です。
 

2000万円の貯蓄で老後の生活は万全か

60歳時点で2000万円の貯蓄があれば、金融資産保有額として、決して少ないほうではありません。それでは、貯蓄が2000万円に達した場合、60歳以降は働かなくても老後の生活は安泰なのでしょうか。
 
結論から言えば、持ち家で年金が月20万円あったとしても、年金の受給開始までの5年間に必要な生活費を考えると、少し心もとないかもしれません。
 
まず、60歳から65歳まで5年間の生活費を考えてみましょう。無職世帯であるため、多少年齢の差はありますが、図表1の総務省の2024年家計調査報告の「65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計支出」を参考に試算します。
 
この調査によれば、夫婦の月平均消費支出は25万6521円で、税金等の非消費支出3万356円を加えると、合計で28万6877円です。ぜいたくはせずに暮らすことを前提に節約を心掛けて、支出を月25万円で抑えられたとしても、年間の必要生活費は25万円×12ヶ月=300万円におよびます。
 
図表1


総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
 
つまり、5年間で少なくとも300万円×5年=1500万円ほど貯蓄が目減りし、65歳時点では2000万円の貯蓄額が500万円ぐらいまで縮小してしまうでしょう。その結果、60歳代の金融資産保有額の中央値650万円も下回ることになります。
 
さらに、月20万円の年金では、65歳以降も月々5万円、年間60万円ほど生活費が不足し、500万円の貯蓄は10年持たずに枯渇してしまうでしょう。もちろん、金融資産以外に持ち家があるため、いざとなれば売却して賃貸に住み替えれば、しばらくは生活費の不足を補えるかもしれません。
 
ただ、持ち家がどれくらいの価格で売れるのかは分かりませんし、その後には家賃分の支出が増えることになります。何かあったときの備えや、お互いの介護費用なども考えると、どうしても不安材料は残ります。
 

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これから取り得る対策は?

このような状況下で、経済的不安を小さくする方法はあるでしょうか。最も現実的な対策は、60歳で完全にリタイアするのではなく、可能な範囲で少しでも長く働くことです。
 
短時間勤務などで、65歳まで月10万円でも収入が得られれば、それだけで月10万円×12ヶ月×5年=600万円も貯蓄に差が生じます。
 
貯蓄額は1000万円以上残るため、2~3年ほど年金を繰下げ受給して、長生きリスクに備えることも可能です。
 

まとめ

持ち家で貯蓄が2000万円ぐらいあっても、60歳で完全リタイアすると、夫婦の老後生活には経済的な不安が残る可能性があります。
 
その後の生活において、どのようなライフスタイルを望むのかによって、生活の収支も大きく変化します。もし、親の老後生活が心配であれば、どのような暮らしを考えているのか、聞いてみることから始めてはいかがでしょうか。
 

出典

金融経済教育推進機構 家計の金融行動に関する世論調査2024年
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
 
執筆者 : 松尾知真
FP2級

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