友人が「退職金の1000万円すべてを投資信託に入れる」と言っていました。生活のために少しは残しておいたほうがよいですよね?
近年は投資信託を利用して資産運用に挑戦する人も多いですが、退職金の全額を投資にまわすのは不安も残ります。この記事では、生活資金と投資のバランスについて考えていきます。
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退職金を全額投資すると、どんなリスクがあるのか
退職金を1000万円すべて投資信託にまわすと、相場の値動きに大きく左右されます。投資信託は預金のように元本が保証されるものではなく、株式中心のものなら短期間で数百万円単位の下落が起こる可能性も。老後は収入の柱が年金になるため、運用が思うようにいかないと生活費が不足する心配が出てくるでしょう。
さらに、投資信託は解約してから実際に現金が口座に入るまで数日を要します。大きな出費が急に必要になったとき、手元に現金がないと困ることになるでしょう。だからこそ、退職金の一部は「すぐに使えるお金」として残しておくことが重要です。
老後の生活費にはいくら必要なのか最新データで見る
総務省「家計調査(2024年)」によると、65歳以上のご夫婦のみ・無職世帯では、1ヶ月あたりの可処分所得は約22万2462円、消費支出は約25万6521円で、差し引きで毎月約3万5000円の不足です。これを年単位に直すと約42万円、20年続けば約817万円になります。
もちろん年金額や家計の事情で差は出ますが、このように数百万円規模の不足が見込まれることを理解しておくと資金計画が立てやすくなります。
この不足額をすべて投資で賄おうとすると、相場の状況次第で生活が不安定になりやすくなります。日々の生活費は、現金や定期預金など流動性の高い形で確保しておくことが安心です。
投資と貯蓄はどう分けるべきか
では、退職金を投資と貯蓄でどう分ければよいのでしょうか。金融庁や大手金融機関は「生活費の数年分は現金で確保し、それ以上の余裕資金を投資にまわす」ことを一般的な考え方として紹介しています。
まずは数年分の生活費を現金で確保しておき、それ以上の余裕資金を投資にまわすのが現実的です。例えば夫婦で月25万円を支出するなら、2年分で600万円ほどを現金や定期預金に置いておくと安心です。
そのうえで残りを投資信託に分け、積立のように時間をかけて投資すれば、相場の変動にも対応しやすくなります。金融庁も「長期・積立・分散」を基本とする考え方を示しており、無理なく続けられる方法を選ぶことが大切です。
退職金の使い方で大切なのは「投資と安心のバランス」
退職金の1000万円をすべて投資にまわしてしまうと、相場の変動や急な出費に対応しづらくなります。まずは数年分の生活費を手元に残し、余裕資金を少しずつ投資に振り分けることで安心感を保てます。
退職金は一生に一度の大切な資産です。安心できる資金を持ちながら運用を工夫することが、老後を安定して過ごすための現実的な選択といえるでしょう。
出典
家計調査年報(家計収支編)2024年(令和6年)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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