一人暮らしの父は70代で年金が「月6万円」ほど。このままでは生活が成り立たず「生活保護を受けたい」と言っていますが、申請は通るのでしょうか?
この記事では、「年金6万円では生活できない」という状況で、生活保護の申請が通る可能性、判断の基準、受給までの流れ、家族として押さえるべきポイントを解説します。家族の安心のために、最低限の知識をしっかり身につけましょう。
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目次
年金月6万円では生活が成り立たない? 70代一人暮らしの現実
現在の日本では、高齢者の多くが年金収入に頼って生活しています。しかし、年金が月6万円しかない場合、生活が成り立つとは言い難い状況です。たとえば、総務省の家計調査報告(家計収支編)によると、65歳以上の単身無職世帯の平均生活費(消費支出)は月14万9000円ほどです。
つまり、年金6万円では約8万円以上の赤字になる計算です。当然、食費や光熱費、家賃、医療費などの支払いが困難になり、預貯金を切り崩してもすぐに限界が来てしまいます。こうした状況で、生活保護の申請を検討するのは自然な流れです。
年金受給者でも生活保護は受けられる? 申請が通る5つの条件
「年金をもらっているから生活保護は無理」と思っている方も多いですが、それは誤解です。生活保護は「年金などを含んだ世帯全体の収入が最低生活費に届かない場合」に受けられる制度なので、年金と併用できる場合があります。申請が通るための主な条件は以下の通りです。
・収入(年金を含む)が最低生活費を下回っていること
地域や世帯構成によりますが、70代単身であれば約11万〜13万円が最低生活費の目安です。たとえば2025年現在、東京都23区では約12万9000円、地方都市では10万円程度が一般的です。年金6万円なら、大きく下回っています。
・預貯金、資産がほとんどないこと
預金や不動産、車などがあればまずはそれを生活に使うよう求められます。ただし、緊急避難的な資産や生活に不可欠な持ち家は例外となることもあります。
・働いて収入を得られない状態であること
高齢や就労困難であれば、働けないことも受給条件として考慮されます。
・扶養義務者(親族)から援助が受けられないこと
市区町村が親族に「援助できますか?」という扶養照会を行いますが、実際に援助がなければ申請が却下されることはありません。強制力はなく、援助が難しい事情があれば認められます。
・他の制度をすでに利用しているか確認されること
住宅確保給付金や福祉資金貸付など、他の制度で生活が維持できるか先に検討される場合があります。
支給される生活保護費は「最低生活費-年金収入(その他の収入)」分です。たとえば最低生活費が12万9000円で、年金が6万円なら、差額の6万9000円が支給されることになります。
生活保護申請の流れと必要な書類
申請の基本的な流れは次の通りです。
・福祉事務所で相談(事前予約推奨。予約不要の自治体もあります)
・申請書の提出
・収入・資産・生活状況などの調査(家庭訪問や金融機関調査等)
・扶養照会(親族に援助可能か、連絡が届きます)
・支給可否の決定(原則14日以内、最大30日以内)
・支給開始(不足分の生活扶助や医療・住宅扶助など)
必要な書類の例は以下の通りです。
・本人確認書類(健康保険証、マイナンバーカード、年金手帳など)
・収入が分かる書類(給与明細、年金通知書等)
・家賃や光熱費の領収書・明細
・預貯金通帳の写し
・医師の診断書(必要に応じて)
・印鑑
・住民票(自治体による)
注意点として、申請時には本人の意思が原則必要です。家族が代理で申請する場合にも、基本は本人の同意や委任状が必要となります。
また、親族に「援助できるか」の連絡(扶養照会)が届きますが、たとえ親族が援助できないと回答しても、それが理由で生活保護が却下されることはありません。あくまで制度上の確認作業ですので、安心して申請手続きを進めましょう。
年金月6万円でも「生活保護は可能」。家族の協力で安心を支えよう
一人暮らしの父親が年金月6万円で生活できない場合、生活保護の申請は十分現実的な選択肢です。収入や資産が少なく、親族からの支援も難しいのであれば、申請が通る可能性は高いといえます。
手続きに不安を感じる方は多いですが、福祉事務所はまず相談から始められます。必要な書類をそろえ、本人と一緒に現状をしっかり説明できれば、支援の手は差し伸べられます。
高齢者が安心して暮らすために、家族としてできるサポートも欠かせません。困ったときには制度を正しく知り、遠慮なく利用することが、尊厳ある暮らしを守る第一歩となるでしょう。
出典
総務省 家計調査報告(家計収支編)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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