「年金暮らしの親」に「仕送り」を頼まれました。一般的にどれくらいの「金額」を送ればよいのでしょうか?
そこで今回は、仕送り額の目安、判断のポイント、税制との関係などを解説しながら、親子が無理なく支え合うためのヒントをお伝えします。
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年金暮らしの親への仕送り、一般的な目安はいくら?
昨今、年金だけで生活するのが難しい時代になっています。総務省統計局の「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯の平均支出は月約16万1933円です。一方で、令和5年度の年金受給額の平均は以下の表1の通りです。
表1
| 国民年金 | 月5万7700円 |
| 厚生年金 | 月14万7360円 |
※厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
上記を踏まえると、国民年金しか受給していない人や、厚生年金でも受給額が少ない人には、毎月の生活が赤字になることも珍しくないといえるでしょう。とくに家賃を払っている場合や、医療費がかさむ場合は赤字が大きくなる可能性があります。
こうした背景から、仕送りの相場としてよく挙げられるのは「月3万~5万円程度」で、FP(ファイナンシャルプランナー)や家計相談の現場でも、無理なく親を支援できる金額としてこの範囲が多く見られます。とはいえ、これはあくまで一つの目安であり、家庭ごとに適正額は異なります。
仕送り額を決めるときに見るべきポイント
仕送り額を決める際にまず確認したいのは、親の「支出構造」です。例えば、以下のような点を確認しましょう。
●家賃の有無(持ち家か賃貸か)
●医療費・介護費(通院頻度や介護サービスの利用状況)
●食費・光熱費などの固定支出
●交際費や趣味・習い事などの支出傾向
仮に親が持ち家で、生活にかかる支出が月13万円、年金が月11万円であれば、月2万円の不足分を埋めるだけでも暮らしやすくなるでしょう。このように不足額を明確にすることで、仕送りの必要性と額が見えてきます。
一方、送る側の生活も同様に見直す必要があります。子どもの教育費、住宅ローン、老後資金の準備など、自身の人生設計を犠牲にするような金額設定は避けるべきです。一時的にまとめて支援する、固定額ではなく必要時のみ支援するなど、工夫次第で双方にとって無理のない方法が見つかる可能性があります。
贈与税や扶養の影響、税制上の注意点
親への仕送りで気になるのが「贈与税」と「扶養控除」の扱いです。
まず贈与税について見ていきましょう。国税庁によると、年間110万円までであれば贈与税は非課税です。そのため仕送りが毎月10万円を超えるような場合は、贈与税の課税対象となる可能性がありますが、「生活費または教育費」として認められる場合は、非課税とされています。
この「生活費」としての仕送りには以下のような条件があります。
●相手が日常生活に必要な費用として使用している
●常識的な金額範囲内である
●必要な都度支払っている(前もってまとまった額を渡すと課税される可能性あり)
また、「扶養控除」を受けるためには、親の年間所得が48万円以下で、かつ生計を一にしている(生活費を負担している)などの条件を満たす必要があります。仕送り額によっては所得税や住民税の軽減につながる可能性がありますが、親が年金以外の収入を持っている場合などは注意が必要です。
いずれの場合も、判断に迷う場合は税務署や税理士に相談するとよいでしょう。制度が毎年変更される可能性もあるため、最新情報を確認しておくと安心です。
親への仕送りは月3万~5万円程度を目安にするとよい
親に仕送りをする際は、まず親の生活費の不足額を把握し、自分の家計にも無理がない範囲で金額を設定することが大切です。月3万~5万円程度を目安にしながらも、地域差や親の医療状況、自身の家計に応じて柔軟に考えるとよいでしょう。
「いくら送るか」だけではなく、「どう支えるか」という点が重要です。。親とともに、生活のあり方を再確認する時間を持ち、無理のない支援のかたちを考えてみるとよいでしょう。
出典
総務省統計局 家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要
厚生労働省年金局 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.1180 扶養控除
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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