「年金」が2人合わせて「約23万円」の70代両親。仕送りをしようと思ったら「貯金700万あるから心配しないで」と言われました。「賃貸」に住んでいるのですが、この先も本当に援助不要でしょうか?
本記事では、子の援助の必要性や仕送りの目安について解説します。
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目次
高齢夫婦の平均家計とは?
まずは、高齢夫婦の平均的な家計の姿を確認してみましょう。
総務省の2024年「家計調査」によると、「夫婦高齢者無職世帯」の月平均では、手取り収入にあたる可処分所得が22万2462円に対し、消費支出は25万6521円となっています。つまり、月約3万4059円の赤字が生じている計算です。
また、同調査による「住居費」の平均は1万6432円と比較的低めですが、これは持ち家世帯が多いためです。したがって、賃貸に暮らす場合はこの水準を上回ることが多く、その分だけ家計への負担が重くなりやすいといえるでしょう。
賃貸住宅が家計に与える影響:家賃別のシミュレーション
次に、家計調査の可処分所得22万2462円を前提に、賃貸の家賃水準で赤字がどう変わるかを試算します。消費支出は25万6521円、住居費の平均は1万6432円です。
平均的な家賃水準では毎月の赤字は約3万4059円です。家賃がさらに高い場合は、その分赤字が拡大し、貯蓄を取り崩す年数も短くなります。次の試算は、家賃を6万円・8万円・10万円とした場合の目安です。
・家賃が月6万円の場合
毎月の赤字は約7万7627円、年間では約93万1524円。貯金700万円で約7.51年間、赤字を補える目安です。
・家賃が月8万円の場合
毎月の赤字は約9万7627円、年間では約117万1524円。貯金700万円で約5.98年間の目安です。
・家賃が月10万円の場合
毎月の赤字は約11万7627円、年間では約141万1524円。貯金700万円で約4.96年間の目安です。
・家賃が月12万円の場合
毎月の赤字は約13万7627円、年間では約165万1524円。貯金700万円で約4.24年間の目安です。
このように、家賃の水準が貯蓄の持続年数に大きく影響します。
仕送り額の目安は月いくら?
家計の赤字が続くと、子世代の援助が必要になるケースも出てきます。では、実際の仕送り額はどのくらいが一般的なのでしょうか。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」では、親にのみ仕送りしている世帯の平均額は月5万6000円とされています。仕送りを行う世帯全体で見ると平均は月8万円で、2〜4万円が最も多い金額帯です。これらの平均額や分布を参考にしつつ、実際の家計の赤字額に合わせて金額を設定するのが一つの方法です。
家賃6万円のとき、毎月の赤字は約7万7627円です。平均の5万6000円を仕送りすると、不足は約2万1627円に縮みます。家賃8万円で赤字が約9万7627円の場合、同じ仕送りでは約4万1627円が不足します。
将来の介護や一時出費も見越しながら、赤字の何割を補うかで金額を決めるとよいでしょう。
長生き・介護・一時出費にどう備えるか
家計を長期的に考える上では、長寿化や介護、一時的な支出も考慮に入れる必要があります。厚生労働省の「令和5年簡易生命表」によると、70歳の平均余命は男性で約15.65年、女性で約19.96年です。夫婦世帯の場合、どちらかが90歳前後まで生存する可能性があり、資金は長期にわたって必要となります。
また、介護が必要になった際には、公的介護保険の「高額介護サービス費制度」によって自己負担額に上限が設けられています(世帯所得に応じて月額2万4600円、4万4400円など)。ただし、介護施設の居住費や食費などはこの制度の対象外となるため注意が必要です。
さらに、賃貸住宅では契約更新料などの一時的な支出も発生するため、貯蓄の一部はこうした「介護・医療・住まい関連の予備費」として確保しておくことが推奨されます。
援助の必要性は月次収支と予備資金で判断を
年金が月22万2462、貯蓄700万円という前提であれば、短期的には生活を維持できる可能性が高いです。ただし、家賃が高いほど赤字は増え、物価上昇や医療・介護の長期化、年金額の改定などで先行きは変わるでしょう。
赤字が小さいうちは援助の必要性は低く、赤字が続く場合は住居費の見直しや予備資金の確保を優先し、不足分のみを定額で補う形が現実的です。無理のない支援方法を検討するとよいでしょう。
出典
総務省統計局 「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」
日本年金機構 「令和7年度の年金額」
e-Stat 国民生活基礎調査 令和4年 世帯 第57表「仕送りをしている世帯数-1世帯当たり平均仕送り額,仕送り額階級・仕送り先別」
厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況
厚生労働省 介護保険ポータル「サービスにかかる利用料」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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