「55歳・年収500万円」の会社員。早期退職で“退職金1000万円上乗せ”と言われましたが、本当に「60歳で退職」するより得なのでしょうか?
本記事では、早期退職による上乗せ額1000万円という条件をもとに、早期退職のメリット・デメリットを数字で比較し、判断のポイントを解説します。
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早期退職制度とは?
早期退職制度とは、企業が定年より前に退職する従業員を対象に、通常より多い退職金や再就職支援などを提供する制度です。
企業の経営の効率化や人員構成の見直しなどを目的に実施されますが、対象者にとっては「まとまった上乗せ退職金をもらえる」ことが最大のメリットです。
55歳退職と60歳退職の比較
本記事のケースでのポイントは、「年収500万円の55歳が今退職すれば、退職金が通常より1000万円多く支給される」という条件です。これだけを聞くと非常にお得に感じますが、冷静に総収入を比べると結論は変わるかもしれません。
年収500万円の人が、55歳で早期退職する場合と、60歳まで働いた場合でもらえる金額を比較してみましょう。
1.退職金(通常分)
2.上乗せ退職金1000万円
※55歳以後の給与収入はゼロ(再就職しない場合)
1.退職金(通常分)
2.年収500万円×5年=2500万円(56~60歳の5年間)
この場合、再就職しない前提では、60歳まで勤務したほうが上乗せ退職金をもらって早期退職するより、 2500万円-1000万円で1500万円も多く収入を得られる計算になります。つまり、上乗せ退職金1000万円だけでは、5年間の給与を補うことはできません。
再就職すれば得になる可能性も
一方、55歳で退職後に再就職すれば状況は変わってきます。例えば、55歳で早期退職した上で、年収400万円で5年間働いた場合は、給与2000万円+上乗せ退職金1000万円で合計3000万円となり、60歳まで勤務した場合(給与2500万円)を上回ります。
ただし、55歳以降の再就職の場合、年収ダウンや採用されないリスクも少なくありません。
そのため、「再就職できるか」と「再就職してどれくらいの年収で働けるか」の見通しを立てないまま早期退職を決めるのは危険です。
55歳以降の再就職時の注意点
55歳で退職した後の再就職活動では、これまでの職歴やスキルを生かせる求人が限られ、条件面で妥協が必要になることもあります。特に管理職経験者は、「部下なしのプレイヤー職」に就いて慣れない業務を担当したり、これまでの会社とは異なる評価制度や社風に戸惑ったりすることも少なくありません。
また、自身の健康状態や家族の介護など、今後の生活環境が変わる可能性がある要素も無視できません。早期退職後に収入減と支出増が同時に起こることも考えられ、生活設計の甘さが老後資金不足につながることもあります。
早期退職を選ぶべきかの判断基準
ここまでの内容を踏まえ、早期退職を選ぶかどうかの判断基準を見ていきましょう。
第一に、退職後も生活費や老後資金に十分な余裕があるかどうかを確認することが欠かせません。また、再就職や副業などで安定的な収入を得られる可能性が高いかどうかも重要です。
現職が精神的・肉体的に大きな負担となっており、このまま続けることが困難な場合は、上乗せ退職金を利用して環境を変えるという選択肢も現実的です。加えて、自分や家族の健康状態、介護の必要性といった家庭事情も考慮しなければなりません。
こうした経済的・精神的・家庭的な側面を総合的に判断することが、後悔のない決断につながります。
まとめ
55歳で早期退職すれば上乗せ退職金1000万円という金額は確かに魅力的ですが、「得か損か」は、退職せず現職で55~60歳まで働く5年間の給与をどのように考えるか、再就職をするか否かによって大きく変わります。
再就職できなければ、60歳まで働くほうが金銭的には有利です。一方、再就職先が確保でき、年収もある程度見込める場合は、早期退職を活用することで経済的にもプラスになる可能性があります。
最終的には、経済的計算だけでなく、現職の状況や今後の人生設計も含めて判断することが大切だといえるでしょう。
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー