大企業に勤める知人は「退職金2000万円以上」もらえるそうです… 中小企業の自分は「1000万円ほど」なのですが、平均的にもこんなに差があるのでしょうか?
そこで本記事では、公的調査のデータをもとに退職金の実態を整理し、差が生まれる背景や、退職金が少ない場合の備えについて解説します。
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目次
退職金の全国平均はいくら?大企業と中小企業で大きな差
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、令和4年における勤続35年の定年退職者で大卒の平均退職給付額は次の通りです。
従業員数1000人以上:2242万円
従業員数300~999人:1742万円
従業員数100~299人:1543万円
従業員数30~99人:1785万円
この統計は平均値であり、企業の退職金制度の有無や勤続年数、役職、退職理由などによって大きく異なります。とはいえ、企業規模によって退職金に明確な差異があることは間違いありません。
なぜ退職金に差が生まれるのか? 仕組みと背景
退職金の差は「大企業と中小企業の待遇差」という単純な話ではなく、複数の要因が関与しています。
まず、賃金水準の違いが大きな要素です。退職金は多くの企業で「最終給与×勤続年数×支給率」の計算式をもとに算出されているため、給与が高いほど退職金も高くなる傾向にあります。大企業は給与水準が高いため、その差が退職金に反映されるのです。
また、退職金制度の違いも影響しています。大企業では、確定給付年金や確定拠出年金(企業型DC)など「企業年金」を含む場合が多く、これらが「退職一時金」に上乗せされることで金額が大きくなります。
一方、中小企業は退職一時金のみの制度が多く、なかには退職金制度自体が未導入という企業も見られます。中小企業が加入できる「中小企業退職金共済(中退共)」もありますが、掛金額は大企業の制度と比べると小規模であるのが一般的です。
さらに、企業の財務基盤や資金力の違いも無視できません。大企業は利益や資産が豊富であり、長期的に退職金の資金を積み立てやすいのに対し、中小企業は経営環境が厳しく、十分な退職金の準備が難しいことが多いです。
これらの点から、大企業が優遇されているというよりは、給与水準・制度設計・会社の体力といった複合的な要因が重なり、結果的に退職金に大きな差が生じているのです。
退職金が少なくても老後資金を増やす方法
では、退職金が中小企業水準の1000万円前後の場合、老後の生活に不安が残るのでしょうか。しかし、自助努力によって老後資金を増やすことは可能です。
まず、代表的なのが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の節税効果が期待できます。また、運用益は非課税で、年金や一時金で受け取る際にも税制優遇が適用されるため、長期的に資産を効率よく増やせます。
次に、「新NISA(少額投資非課税制度)」もあります。株式や投資信託の運用益が非課税となるため、長期的にコツコツと資産を増やす仕組みとして利用できます。特に若いうちから始めることで、退職金に匹敵するほどの資産を形成できる可能性もあります。
さらに、勤め先が「中小企業退職金共済制度(中退共)」に加入しているかを確認してみるのもよいでしょう。掛金は会社負担で積み立てられ、退職時にまとまった金額を受け取れるため、中小企業でも退職金を確保しやすくなっています。
退職金は「退職所得控除」による税制優遇もあり、勤続30年なら1500万円までが非課税となります。また、受け取り方を工夫することで手取り額を増やすことも可能です。
退職金の差は事実だが、準備次第で将来は変えられる
大企業と中小企業の退職金には、統計的にも大きな差があります。ただし、その差は賃金水準や制度設計の違いに基づくもので、自分の努力で補うことも可能です。
退職金の金額は変えられなくても、iDeCoやNISAといった制度を活用し、早めに資産形成を始めることで老後の不安は大きく和らぎます。大切なのは「もらえる額に一喜一憂すること」ではなく、「これからどう備えるか」です。自分にできる準備を積み重ねることで、安心した老後を迎えることができるでしょう。
出典
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態 第37表 退職事由、学歴、職種、勤続年数階級、企業規模別退職者1人平均退職給付額
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト
金融庁 NISA特設ウェブサイト
独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部(中退共)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー