令和8年より“退職金の税制”が変わる!? 退職金「2000万円」もらった場合、手取りは減る?
特に、退職金とiDeCo(個人型確定拠出年金)などを一時金で受け取る場合に影響が出やすく、手取り額が減る可能性があります。
本記事では、iDeCo一時金500万円と退職金2000万円を受け取った場合のシミュレーションを交えながら、新しい税制のポイントと対策を解説します。
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退職金の税制がどう変わる? ポイントは「10年ルール」
退職金やiDeCoなどを一時金で受け取る際には、「退職所得控除」が適用されます。これは勤続年数に応じて大きな控除額が設定されており、退職金の多くは非課税、あるいは税負担を大幅に抑えられる仕組みです。
ただし、従来では「5年ルール」と呼ばれる調整規定がありました。iDeCoなどの一時金を受け取ってから5年以内に退職金を受け取ると、重複期間分の退職所得控除が使えず、課税対象額が増えてしまうというものです。
この「5年ルール」が、2025年の改正で見直され、2026年(令和8年)以降は「10年ルール」となり、10年以上間隔を空けないと控除を満額利用できなくなります。
なお、退職金を先に受け取り、あとからiDeCoなどの一時金を受け取る場合は「20年ルール」があり、こちらは変更ありません。
iDeCo500万円+退職金2000万円を受け取った場合のシミュレーション
では、iDeCoで15年積み立てて一時金500万円を受け取り、さらに勤続40年で退職金2000万円を受け取ったケースを見てみましょう。
10年未満で両方を受け取った場合
iDeCo一時金500万円は、加入15年分の控除(40万円×15年=600万円)があるので全額非課税です。
一方で退職金2000万円は、本来の控除(800万円+70万円×20年=2200万円)からiDeCo分600万円を差し引かれ、控除額は1600万円になります。
その結果、退職金2000万円から控除額1600万円を差し引いた400万円の2分の1である200万円が課税退職所得となり、200万円に税金がかかります。
所得税と住民税を合わせた負担は約30万円。
つまり、合計2500万円を受け取っても手取りはおよそ2470万円になります。
10年以上間隔を空けて受け取った場合
iDeCo一時金500万円は、同様に全額非課税です。
その後、10年以上経過してから退職金2000万円を受け取ると、本来の控除2200万円が適用され、こちらも全額非課税となります。
つまり、合計2500万円がそのまま受け取れることになります。
退職金の手取りを守るためのポイント
今回のシミュレーションから分かるように、iDeCoなどの一時金を受け取ってから退職金を10年以内に受け取ると、従来は非課税で済んだ部分に課税され、手取りが減ってしまいます。
対策としては、以下の工夫が有効です。
・受け取りのタイミングを10年以上ずらす
・一時金ではなく年金形式で受け取る(公的年金等控除を利用できるケースがある)
・退職時期を調整し、控除額を増やす
数千万円規模のお金だからこそ、わずかな違いが老後資金に大きな影響を与えます。
まとめ
2025年の改正により、2026年からは退職金とiDeCoなどの一時金を近い時期に受け取ると控除の使い方が変わり、手取りが減るケースが出てきます。特に、iDeCoなどを先に受け取り、その10年以内に退職金を受け取ると控除が重複して使えず、課税が発生します。
一方で、退職金を先に受け取った場合に適用されるiDeCoに対する「20年ルール」は今回の改正では変更されていません。20年以上間隔を空ければ控除を再び利用できるため、こちらも押さえておく必要があります。
つまり、受け取りの「順番」と「間隔」によって、退職金やiDeCoなどの手取りは大きく変わります。老後資金を最大限確保するには、こうした制度の違いを理解し、iDeCoなどを年金形式で受け取る方法や退職時期の調整などを含め、早めに準備しておくことが大切です。
一度受け取り方法を決めてしまうと、あとから変更できない場合も多いため、退職前に必ずシミュレーションしておくことがおすすめです。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー