70歳を超えた両親は、いまだに働いています。貯金は「1000万円」ほどあるようなのですが、働かないと生活していけないのでしょうか?
しかし、生活状況や価値観、将来設計によって、この解釈は大きく変わってくるともいえます。
本記事では、1000万円の貯蓄がある70代の夫婦が生活していくうえで、働くことの意義や、安心して老後を過ごすためにはどうしたらいいか、についてまとめました。
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目次
70代で働いている人の割合は?
総務省統計局の「労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、70歳〜74歳で35.1%、75歳以上で12.0%となっています。
また、内閣府の「令和6年度 高齢社会対策総合調査」では、60歳以上を対象に「何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいか」という質問をしています。
結果は「働けるうちはいつまでも」という回答が22.4%、「75歳くらいまで」が13.7%、「80歳くらいまで」が5.3%でした。
これらの数字を見る限り、70歳以上でも多くの人が働き続けており、働く意欲も旺盛な人が多いといえるでしょう。
70代夫婦の生活費はいくらぐらい?
総務省の「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の1ヶ月あたりの平均的な支出は28万6877円でした。
内訳は、食料が7万6352円で最も大きく、交通・通信が2万7768円、教養・娯楽が2万5377円、光熱・水道が2万1919円と続きます。平均額から計算すると、年間の支出は約345万円となる計算です。
これはあくまで平均値であり、個々の状況や地域、健康状態などによって変わることを理解しておいてください。
年金収入と支出のバランス
家計調査のモデルケースでは、65歳以上の無職世帯の収入の多くを占める社会保障給付(年金収入)は、22万5182円です。
また、収入から支出を引いた金額は毎月3万4059円の赤字となり、年間では40万8708円の赤字が発生する見込みです。
今回のケースに当てはめると、赤字分を貯蓄の1000万円で賄う場合、およそ24年間は対応できる計算となりました。
年金による収入が平均よりも多ければ、貯蓄を取り崩すことなく生活できるでしょう。しかし、年金収入が支出を下回っている場合、差額を貯蓄から補填しなければなりません。この収支の差が、働き続けるかどうかの判断基準になるといえます。
高齢者が働き続ける理由
高齢者が働き続ける理由は「貯蓄が足りないから」だけとは限らず、それ以外の理由もあるでしょう。
例えば、医療費や介護費用など、将来的に発生しうる大きな出費に対する備えとして、少しでも多く貯蓄を増やしておきたいという考えがあるのかもしれません。
また、年金制度への不信感や、将来の社会保障制度の行方に対する不安から、自力で収入を得ることに重きを置いているケースもあるでしょう。
「高齢社会対策総合調査」によると、仕事をしている理由として「収入のため」のほか「働くことは体によいから、老化を防ぐから」「自分の知識、能力を生かせる」といった回答が見られました。
仕事で得られる社会とのつながり、人から必要とされているという実感は、高齢者の精神的な健康を保つうえで大きな意味を持つでしょう。
長年培ってきたスキルや知識を生かしたい、社会に貢献したいという自己実現の欲求から、働き続ける人もいるかもしれません。
年金と合わせて生活はできるが、やりがいや社会とのつながりを得るために働いている可能性もある
貯蓄が1000万円ほどあれば、年金と合わせておよそ24年間生活できます。しかし、高齢化社会といわれる現在、多くの人が70代になっても意欲的に働き続けています。働き続けるのは、金銭的な理由だけではなく、老後を安心して過ごすため、生きがいや社会とのつながり、自己実現といった多様な要因があると考えられるでしょう。
高齢の両親が働き続けることは、子どもとしては心配になるかもしれませんが、両親の気持ちに寄り添い、尊重しながら見守り、必要なときはサポートするといいでしょう。
出典
総務省統計局 労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果の概要(6ページ)
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要(18ページ)
内閣府 令和6年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)の結果 第2章(56、68ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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