一人暮らしを心配され、来月から息子夫婦と同居する予定です。年金は「月8万円」ほどなのですが、生活費はいくらくらい渡すのが正解なのでしょうか?
ここでは統計データをもとに、無理のない生活費の目安とルール作りのポイントを解説するので参考にしてください。
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目次
高齢者の一人暮らしと同居世帯の現状
高齢化が進む日本では、一人暮らしの高齢者が増えています。「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果」によると、全国の一般世帯のうち1人世帯は約2115万世帯に達し、全体の38.0%を占めました。特に65歳以上の高齢者世帯では、配偶者や子どもと同居せず、一人で生活する人の割合が年々高まっています。
一方で、安心感や介護の必要性、家計効率を理由に「親世帯と子世帯が同居する」ケースも約25%と高くなっています。同居は生活の安定につながる反面、「生活費をいくら負担すべきか」という点で悩む人は少なくないようです。
生活費はいくらかかる? 世帯規模別の支出データ
同居時の生活費を考える際に参考になるのが、家計調査です。総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によれば、一人暮らし高齢者の消費支出は平均で約14万9000円、2人世帯では約25万6000円です。人数が一人増えると、食費や光熱費を中心に月3~4万円程度の支出増加が見られます。
食費の例を見ると、単身高齢者世帯の平均は4万2000円前後ですが、2人世帯では7万6000円程度に増えています。
光熱・水道費も、単身で1万4000円ほど、2人世帯では2万1000円と大きくなっていますが倍になるほどの増加ではないようです。つまり「同居により生活コストは増えるが、一人当たりの負担は割安になる」という特徴があります。
このデータを踏まえると、高齢の親が同居する場合、追加でかかる生活費は月に4万1000円程度を目安と考えるのが現実的でしょう。
年金月8万円でできる生活費の分担目安
次に、親世帯の年金収入をもとに生活費負担を検討します。厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金(老齢基礎年金)の受給額は月額平均約5万7000円にとどまり、厚生年金を含めた高齢者世帯でも平均は月14万円前後とされています。
今回のケースは月8万円の年金収入があるため、前述した追加でかかる生活費(1ヶ月あたり約4万1000円)を考慮すると、最低限の生活費は自分で賄える水準といえるでしょう。
同居時に家計にいくら入れるかは家族の話し合い次第ですが、「年金収入の半分程度」、つまり3~4万円を家計に渡すのが無理のないラインと考えられます。食費・光熱費の実際の増加分に充てられる金額であり、自分自身の医療費や交際費を残す余裕も確保できるでしょう。
反対に「全額を家計に入れる」と、自分の急な医療費や趣味・交際費に対応できず、生活の自由度が下がってしまうリスクがあります。特に高齢期は予想外の医療費がかかることも多く、月3万円程度は手元に残しておくことが大切といえるでしょう。
生活費分担ルールの決め方と注意点
同居生活を円滑に進めるには、事前に「家計のルール」を定めておくことが大切です。また、生活に必要なお金を家族に渡すことは贈与にはあたらず、贈与税の対象にはならないので安心してください。
一般的な考え方として、以下のようにするのがいいでしょう。このような分担方法がよく採用されています。
・食費・光熱費は人数に応じて折半
・住宅費や固定資産税は子世帯(世帯主)が負担
・医療費や個人の交際費は各自負担
また、お金だけでなく「家事や介護の分担」も、実質的には生活費に相当する価値があるでしょう。例えば、親が買い物や掃除を手伝えば、その分の外部サービス費用は不要です。こうした「見えない負担」も含めて、お互いに納得できる形にすることが大切です。
さらに、生活費については口約束で済ませず、金額や支払い方法を紙に書いて共有することをおすすめします。後々の誤解やトラブルを防ぐだけでなく、双方に安心感を与えるでしょう。
無理のない範囲で「感謝」を形にする
同居する際の生活費は「親が受給している年金の半分程度」、つまり今回の場合は、月3~4万円が目安となります。
大切なのは、金額の多寡だけではありません。「お金を入れているから安心」するのではなく、同居に伴う安心感や家族の支え合いも大切な価値観です。お互いが感謝の気持ちを持ち、無理のない範囲でルールを決めて分担することが、長く続く同居生活を円滑にするコツといえるでしょう。
出典
厚生労働省 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
総務省 令和2年国勢調査
総務省 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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